ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

03-01 読書ノート

ジェフリー・アーチャー『レンブラントをとり返せ』

新しい警察小説のシリーズ アーチャーの新作である。それも警察小説である。アーチャーに警察小説は初めてではないか。もっとも、アーチャー自身は「これは警察の物語ではない、これは警察官の物語である」と巻頭に一筆入れているが。 主人公は、ウィリアム・…

東海・近畿・中国・四国・九州

『旅する日曜美術館』 NHK日曜美術館制作班編による全2巻の下巻。 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、新たに美術館を訪ねた美術館紀行を加えて構成しており、本巻では東海・近畿・中国・四国・九州の36館が紹介されている。 この番組は好きで毎週欠…

NHK日曜美術館制作班編『旅する日曜美術館』

北海道・東北・関東・甲信越・北陸 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、改めて美術館を訪ねた美術館紀行で構成されている。 全2巻で構成されていて、上巻下巻とも第1巻第2巻とも特に断りはないが、本書は上巻にあたるようで、北海道・東北・関東・甲信越・…

梯久美子『サガレン』

樺太/サハリン境界を旅する サガレンとは、宮澤賢治が旅した時代の樺太の呼称の一つ。 この島は、実効支配した国によって樺太、サハリンなどと呼び名が変わってきていて、そのつど〝国境〟も動いてきた歴史があり、当然、敷設されていた鉄道においてもその版…

アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』

イギリス伝統のミステリー 第一級の傑作ミステリーである。 二つの意味で設定が秀逸だ。一つにはホームズ張りだということ。つまり、ホームズがいてワトソンがいるということ。探偵ホームズ役には、元刑事のダニエル・ホーソーン。ロンドン警視庁の顧問として…

『論語義疏』最古の写本公開

(写真1 会場に展示されていた『論語義疏』の写本) 慶應義塾図書館貴重書展示会 「古代中世日本人の読書」をテーマに丸善丸の内本店ギャラリーで開催されていて、慶應義塾図書館が所蔵する漢籍100点が出品されている。 注目されたのは初公開となった『…

宮本輝『灯台からの響き』

何を求めて灯台巡り 旧中山道板橋宿の仲宿商店街で中華そば屋を営んでいた牧野康平は、二人三脚で切り盛りしてきた妻の蘭子が2年前に亡くなると、一人では「まきの」の味は作れないといって休業してしまった。俺のはラーメンではなくてあくまでも中華そばだ…

『使える!用字用語辞典』

マスコミ用語担当者がつくった 国語辞典ほどの頻度はないが、用字用語辞典も座右に置いて日常的に使っている。もちろん言葉の意味を調べるためではなく、送り仮名や常用漢字などの、もっぱら確認のためである。 私が書く文章は、小説や詩などの創作ではなく…

高山羽根子『首里の馬』

(写真1 受賞作所収の「文藝春秋」9月号) 芥川賞受賞作 面白い。ただし、エピソードは奇抜。あまり考えすぎると難解になってしまう。しかし、話題はさらりと出てくるが、よくよく考えると意味は深長だ。読みやすいからどんどんと進むと陥穽にはまる。 未…

今野敏『棲月 隠蔽捜査7」

竜崎伸也 大森署署長最後の事件 本作は、竜崎伸也を主人公とする警察小説のシリーズ長編7作目。大森署署長としては最後の事件となった。実は、私自身は、竜崎が大森署を去って神奈川県警刑事部長に着任した『清明 隠蔽捜査8』はすでに読んでいたから、シリ…

絵本『がんばれ!あかい しゃしょうしゃ』

アメリカの絵本 遊びに来ていた孫を連れて行った本屋で、車掌車を描いた絵本を見つけた。海外の絵本を揃えたコーナーだったのだが、〝しゃしょうしゃ〟の文字が目に入った。手には取ったものの、買うかどうかについては多少の躊躇がなかったわけでもなかった…

K.スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

アメリカの辞書編纂者の回顧 ウェブスター辞書は、アメリカの英語辞典。200年を超す歴史を有する国民的辞書で、発行部数は聖書に次ぐといわれるほど。徹底したアメリカ英語で知られる。 著者のコーリー・スタンパーは、版元のメリアム・ウェブスター社で約…

『岩波新書解説総目録』刊行

創刊80年約3400点 岩波新書の1938年の創刊から2019年までの80年分のラインナップ約3400点が総覧できる。判型はもちろん岩波新書と同じサイズながら約700ページもあって、歴史の重みをずしりと感じる。 初めての解説総目録なそうで、…

今野敏『清明 隠蔽捜査8」

竜崎伸也 神奈川県警刑事部長に着任 竜崎伸也を主人公とする警察小説のシリーズ長編8作目。 竜崎は、そもそも東大法卒、警察庁のキャリア官僚だったのだが、警察庁長官官房総務課長だったときに、組織の不正を正そうとしたものの、警察庁の方針に逆らったと…

沢木耕太郎『旅のつばくろ』

心温まる旅のエッセイ JR東日本の車内誌「トランヴェール」に連載されているエッセイ41編が収録されている。 新幹線に乗った折に手にすることが多く、巻頭エッセイだし、文章が平易で、分量も1編あたり5分程度で読めるようなところから座席に落ち着く…

『感情類語辞典』

豊かな表現の手引き 感情表現のバリエーションを広げるための手引き。見出し語として130の感情語が用意されている。 それぞれについて、外的なシグナル、内的な感覚、精神的な反応、一般的に強くまたは長期的に表れる反応、隠れた感情を表すサインなどカ…

アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』

エーレンデュルシリーズ アイスランドの警察小説である。『湿地』『緑衣の女』『声』と続く傑作揃いのエーレンデュルシリーズの4作目。 主人公は、首都レイキャビック警察の犯罪捜査官エーレンデュル。その年下の同僚であるエリンボルクとシグルデュル=オー…

井上マサキ+西村まさゆき『たのしい路線図』

路線図に魅せられた男たち ただただ路線図を愛でては〝いいねぇ〟とつぶやきながら鉄道路線図の世界を紹介している。 路線図と一口に言っても鉄道会社や駅によっても描き方に随分と違いがあるが、ここでは200もの路線図や運賃表が取り上げられている。 私…

横山秀夫『ノースライト』

6年ぶりの長編ミステリー そもそもは建築家冥利に尽きるとはいえ奇妙な依頼だった。 岡嶋建築事務所の一級建築士青瀬稔は、吉野陶太・香里江夫妻から住宅建築の依頼を受けた。青瀬が上尾に建てた二階家に一目惚れしたと言い、「すべてお任せします。青瀬さん…

『世界ことわざ比較辞典』

世界初の編纂 日本のことわざと世界のことわざを集めて比較した辞典。日本ことわざ文化学会編で、世界的にも前例のない辞典らしい。 日常的に使われている日本のことわざ300を見出しとし、これに世界25の地域と言語から似たようなことわざを取り上げた…

原田マハ『デトロイト美術館の奇跡』

(写真1 表紙の絵はセザンヌの「マダム・セザンヌ」) 市民が守った美術館 デトロイト市の財政破綻から危機にさらされたデトロイト美術館(DIA)が愛情深く描かれている。 デトロイト市はミシガン州にある全米第9位の大都会。もとよりGEやフォードなど…

長崎次郎書店

(写真1 電車通りに面した長崎次郎書店) 熊本のレトロな書店と喫茶室 長崎次郎書店は、熊本にある老舗書店。創業明治7年(1874年)とあり、熊本で最も古い本屋らしい。いくつか変遷はあったらしいが、140年を経て今に至るも続けられているというの…

時刻表完全復刻版

(写真1 時刻表完全復刻版。左が1964年10月号で右が9月号=カバーは復刻版のためのもの) 1964年9月号/10月号 東海道新幹線開業当時の時刻表が刊行された。いわゆる「交通公社の時刻表」が復刻されたもので、開業時の東海道新幹線の時刻表が載…

ダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム5』

復讐の炎を吐く女 世界的なベストセラーとなったスティーグ・ラーソン作『ミレニアム』シリーズは、第3部まで進んだところで著者ラーソンの死によって終了していた。衣鉢を継いだのが同じスウェーデン人の作家ダヴィッド・ラーゲルクランツで、主人公や主な登…

大沢在昌『新宿鮫Ⅺ 暗約領域』

8年ぶりの新宿鮫 新宿鮫とは、警視庁新宿警察署生活安全課刑事鮫島警部の異名。本来キャリア組だったのだが、警察内部の抗争により所轄に飛ばされてきてそのまま塩漬けにされている。何事にも妥協せず暴力団とも渡り合い、一度食らいついたらはなさいところ…

ピエール・ルメートル『わが母なるロージー』

カミーユ警部再び 『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』『傷だらけのカミーユ』と続いたフランスのミステリ作家ピエール・ルメートルのカミーユ警部三部作。日本では三部作いずれも年間ミステリー投票の上位に入る人気シリーズだった。シリーズは201…

ブレディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

現代英国社会を活写 著者は、福岡県出身で英国在住。アイルランド人の配偶者と息子と三人で英国南端のブライトンという地方都市に住んでいる。 息子は、小学校は、カトリックの名門校に通った。裕福な家庭の子が多く通っている学校だったが、中学校は、大半…

髙村薫『我らが少女A』

ダイヤグラム上で誰が交差するのか 池袋で風俗の若い女が同棲相手の男に殴打され殺された。この事件そのものは男が自首しており何の謎めいたところもないのだが、男は取り調べで、女がいつだったか使い古しの絵の具のチューブを男に見せて、何年か前に武蔵野…

ウィリアム・トーブマン『ゴルバチョフ』

その人生と時代(上・下) ソ連の最高指導者だったミハイル・ゴルバチョフの評伝である。ただし、ソ連という政体においては最後の書記長であり大統領であった。1922年生まれ、現在も生存中と伝えられている。私としてはペレストロイカを推進した人物として…

池澤夏樹『科学する心』

文学的科学エッセイ 大学で理系に身を置いたこともある著者によるこれは科学を話題に据えたエッセイ集。とにかく著者の該博な知識には驚嘆するばかりだが、そこは一流の文学者によるものだから、一つひとつのテーマはとても難しいものばかりなものの、理系に…