ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

03-01 読書ノート

『使える!用字用語辞典』

マスコミ用語担当者がつくった 国語辞典ほどの頻度はないが、用字用語辞典も座右に置いて日常的に使っている。もちろん言葉の意味を調べるためではなく、送り仮名や常用漢字などの、もっぱら確認のためである。 私が書く文章は、小説や詩などの創作ではなく…

高山羽根子『首里の馬』

(写真1 受賞作所収の「文藝春秋」9月号) 芥川賞受賞作 面白い。ただし、エピソードは奇抜。あまり考えすぎると難解になってしまう。しかし、話題はさらりと出てくるが、よくよく考えると意味は深長だ。読みやすいからどんどんと進むと陥穽にはまる。 未…

今野敏『棲月 隠蔽捜査7」

竜崎伸也 大森署署長最後の事件 本作は、竜崎伸也を主人公とする警察小説のシリーズ長編7作目。大森署署長としては最後の事件となった。実は、私自身は、竜崎が大森署を去って神奈川県警刑事部長に着任した『清明 隠蔽捜査8』はすでに読んでいたから、シリ…

絵本『がんばれ!あかい しゃしょうしゃ』

アメリカの絵本 遊びに来ていた孫を連れて行った本屋で、車掌車を描いた絵本を見つけた。海外の絵本を揃えたコーナーだったのだが、〝しゃしょうしゃ〟の文字が目に入った。手には取ったものの、買うかどうかについては多少の躊躇がなかったわけでもなかった…

K.スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

アメリカの辞書編纂者の回顧 ウェブスター辞書は、アメリカの英語辞典。200年を超す歴史を有する国民的辞書で、発行部数は聖書に次ぐといわれるほど。徹底したアメリカ英語で知られる。 著者のコーリー・スタンパーは、版元のメリアム・ウェブスター社で約…

『岩波新書解説総目録』刊行

創刊80年約3400点 岩波新書の1938年の創刊から2019年までの80年分のラインナップ約3400点が総覧できる。判型はもちろん岩波新書と同じサイズながら約700ページもあって、歴史の重みをずしりと感じる。 初めての解説総目録なそうで、…

今野敏『清明 隠蔽捜査8」

竜崎伸也 神奈川県警刑事部長に着任 竜崎伸也を主人公とする警察小説のシリーズ長編8作目。 竜崎は、そもそも東大法卒、警察庁のキャリア官僚だったのだが、警察庁長官官房総務課長だったときに、組織の不正を正そうとしたものの、警察庁の方針に逆らったと…

沢木耕太郎『旅のつばくろ』

心温まる旅のエッセイ JR東日本の車内誌「トランヴェール」に連載されているエッセイ41編が収録されている。 新幹線に乗った折に手にすることが多く、巻頭エッセイだし、文章が平易で、分量も1編あたり5分程度で読めるようなところから座席に落ち着く…

『感情類語辞典』

豊かな表現の手引き 感情表現のバリエーションを広げるための手引き。見出し語として130の感情語が用意されている。 それぞれについて、外的なシグナル、内的な感覚、精神的な反応、一般的に強くまたは長期的に表れる反応、隠れた感情を表すサインなどカ…

アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』

エーレンデュルシリーズ アイスランドの警察小説である。『湿地』『緑衣の女』『声』と続く傑作揃いのエーレンデュルシリーズの4作目。 主人公は、首都レイキャビック警察の犯罪捜査官エーレンデュル。その年下の同僚であるエリンボルクとシグルデュル=オー…

井上マサキ+西村まさゆき『たのしい路線図』

路線図に魅せられた男たち ただただ路線図を愛でては〝いいねぇ〟とつぶやきながら鉄道路線図の世界を紹介している。 路線図と一口に言っても鉄道会社や駅によっても描き方に随分と違いがあるが、ここでは200もの路線図や運賃表が取り上げられている。 私…

横山秀夫『ノースライト』

6年ぶりの長編ミステリー そもそもは建築家冥利に尽きるとはいえ奇妙な依頼だった。 岡嶋建築事務所の一級建築士青瀬稔は、吉野陶太・香里江夫妻から住宅建築の依頼を受けた。青瀬が上尾に建てた二階家に一目惚れしたと言い、「すべてお任せします。青瀬さん…

『世界ことわざ比較辞典』

世界初の編纂 日本のことわざと世界のことわざを集めて比較した辞典。日本ことわざ文化学会編で、世界的にも前例のない辞典らしい。 日常的に使われている日本のことわざ300を見出しとし、これに世界25の地域と言語から似たようなことわざを取り上げた…

原田マハ『デトロイト美術館の奇跡』

(写真1 表紙の絵はセザンヌの「マダム・セザンヌ」) 市民が守った美術館 デトロイト市の財政破綻から危機にさらされたデトロイト美術館(DIA)が愛情深く描かれている。 デトロイト市はミシガン州にある全米第9位の大都会。もとよりGEやフォードなど…

長崎次郎書店

(写真1 電車通りに面した長崎次郎書店) 熊本のレトロな書店と喫茶室 長崎次郎書店は、熊本にある老舗書店。創業明治7年(1874年)とあり、熊本で最も古い本屋らしい。いくつか変遷はあったらしいが、140年を経て今に至るも続けられているというの…

時刻表完全復刻版

(写真1 時刻表完全復刻版。左が1964年10月号で右が9月号=カバーは復刻版のためのもの) 1964年9月号/10月号 東海道新幹線開業当時の時刻表が刊行された。いわゆる「交通公社の時刻表」が復刻されたもので、開業時の東海道新幹線の時刻表が載…

ダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム5』

復讐の炎を吐く女 世界的なベストセラーとなったスティーグ・ラーソン作『ミレニアム』シリーズは、第3部まで進んだところで著者ラーソンの死によって終了していた。衣鉢を継いだのが同じスウェーデン人の作家ダヴィッド・ラーゲルクランツで、主人公や主な登…

大沢在昌『新宿鮫Ⅺ 暗約領域』

8年ぶりの新宿鮫 新宿鮫とは、警視庁新宿警察署生活安全課刑事鮫島警部の異名。本来キャリア組だったのだが、警察内部の抗争により所轄に飛ばされてきてそのまま塩漬けにされている。何事にも妥協せず暴力団とも渡り合い、一度食らいついたらはなさいところ…

ピエール・ルメートル『わが母なるロージー』

カミーユ警部再び 『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』『傷だらけのカミーユ』と続いたフランスのミステリ作家ピエール・ルメートルのカミーユ警部三部作。日本では三部作いずれも年間ミステリー投票の上位に入る人気シリーズだった。シリーズは201…

ブレディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

現代英国社会を活写 著者は、福岡県出身で英国在住。アイルランド人の配偶者と息子と三人で英国南端のブライトンという地方都市に住んでいる。 息子は、小学校は、カトリックの名門校に通った。裕福な家庭の子が多く通っている学校だったが、中学校は、大半…

髙村薫『我らが少女A』

ダイヤグラム上で誰が交差するのか 池袋で風俗の若い女が同棲相手の男に殴打され殺された。この事件そのものは男が自首しており何の謎めいたところもないのだが、男は取り調べで、女がいつだったか使い古しの絵の具のチューブを男に見せて、何年か前に武蔵野…

ウィリアム・トーブマン『ゴルバチョフ』

その人生と時代(上・下) ソ連の最高指導者だったミハイル・ゴルバチョフの評伝である。ただし、ソ連という政体においては最後の書記長であり大統領であった。1922年生まれ、現在も生存中と伝えられている。私としてはペレストロイカを推進した人物として…

池澤夏樹『科学する心』

文学的科学エッセイ 大学で理系に身を置いたこともある著者によるこれは科学を話題に据えたエッセイ集。とにかく著者の該博な知識には驚嘆するばかりだが、そこは一流の文学者によるものだから、一つひとつのテーマはとても難しいものばかりなものの、理系に…

『刑事の矜持』

ミステリーのアンソロジー 日本推理作家協会賞受賞作家たちによる傑作短編集第7弾。 大沢在昌、黒川博行、佐野洋、島田一男、土屋隆夫、角田喜久雄の6人が名を連ねている。ただ、佐野、島田、土屋、角田の4人はすでに物故者。初出時も、60年70年前の…

ホーカン・ネッセル『悪意』

スウェーデンミステリー このところ元気なスウェーデンミステリー。次々と新しい作品が紹介されて楽しませてくれている。特に現地在住の翻訳家の活躍が光る。英語版からの重訳ではなく原書からの訳出だから細かな味わいが出ているように思う。マイ・シューバ…

荻原浩『海の見える理髪店』

直木賞受賞作の短編集 直木賞受賞作である。短編6編が収められている。 どれも珠玉の作品ばかりで印象深いが、表題作の「海の見える理髪店」は、海辺の小さな町の床屋が舞台。時代遅れの洋風造り、人が住まなくなった民家を改装したような店構え。 「店の中…

今村夏子『むらさきのスカートの女』

芥川賞受賞作 面白い。近年の芥川賞受賞作では出色ではないか。滑らかだし読みやすい。だから一気に読める。 しかし、だまされてはいけない。読み進んでふと気がつくと内実恐い物語である。特に後半はミステリーじみてくる。 むらさきのスカートの女は、仕事…

髙村薫×南直哉『生死の覚悟』

作家と禅僧の対話 魅力的な組み合わせである。 ディテールをないがしろにせず理詰めの作風で人気の作家髙村薫。近年は『晴子情話』三部作や『空海』などを著し、仏教への切り込みに新境地を見せている。対する南直哉(じきさい)は永平寺で修行を積んだ曹洞…

図書館と書店が融合した多賀城市立図書館

(写真1 2階から見た蔦屋書店店舗(左部分)と、びっしりと本で埋め尽くされた壁面の書棚から右が図書館) TSUTAYA図書館 図書館と書店が融合した施設が評判になっているというのでわざわざ見学に出掛けてみた。 仙台駅から仙石線で約20分多賀城駅…

中村文則『あなたが消えた夜に』

二回読んでも難解 4年前に単行本が刊行された折にすでに読んでいて、このたび文庫化されて再び手に取った。つまり再読と言うことだが、まったく色褪せていなかった。それほど面白いと言うことだが、まずはそのことに自身率直に驚いた。小説は文庫化されて再…