ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

デイビッド・T・ジョンソンほか『検察審査会』

日本の刑事司法を変えるか

 検察審査会とは、検察官が下した不起訴処分を検証し、事件の再捜査や起訴すべきかを決定する仕組み。11人の市民で構成される組織である。裁判員制度と並んで日本の刑事司法制度のもう一つの市民参加の形態。日本のこの検察審査会は世界でも類を見ない独特な機関だという。
 そもそも、日本の検察官は、強大な権力と裁量を持っており、同じように強大な権力を持っているといわれるアメリカの検察官と比べても日本の検察官の権力は強大だと指摘している。
 日本の検察官は起訴の権限をほぼ完全に独占しており、起訴を猶予する権限も有している。
 日本の検察官は起訴を慎重に行う傾向にあるが、これは有罪判決が得られる高度の見込みがあるときにのみ起訴しているからで、この結果、日本の刑事裁判の有罪率は100%近く、無罪率は0%に近いというところに表れているという。
 検察審査会は、全国165カ所にあり、地裁やその支部内に設置されている。検察審査委員は公職選挙法の定める選挙人名簿から無作為に選ばれた11人で構成され、任期は6カ月。
 検察審査会による事件の処理状況を見ると、2019年の場合、既決総数が2,068あり、このうち起訴相当が9、不起訴不当134、不起訴相当1,640、その他285となっており、2,000件を超す審査件数があり、大多数が不起訴相当なものの、全体の7%近くが起訴相当や不起訴不当となっており、検察の検察官に対し検察審査会が異議を唱える結果となっている。
 本書は、この検察審査会について、検察官との関わり、検察審査会の運用、強制起訴事件の内容などについて述べており、専門書ならともかく、一般人を相手にした解説としては広範囲に詳述しているのではないか。とにかく、一般人にも検察審査会について理解を深めようと問題点を整理している内容はわかりやすかった。
 著者は、デイビッド・T・ジョンソン、平田真理、福来寛。
(岩波新書)