ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

03 読書ときどき映画あるいは美術

髙村薫『我らが少女A』

ダイヤグラム上で誰が交差するのか 池袋で風俗の若い女が同棲相手の男に殴打され殺された。この事件そのものは男が自首しており何の謎めいたところもないのだが、男は取り調べで、女がいつだったか使い古しの絵の具のチューブを男に見せて、何年か前に武蔵野…

三浦望愛画「灯台」

グループ展で発掘 グループSUNという展覧会で見つけた。 このグループ展は、かねて昵懇にさせていただいている画家の三浦千波さんを中心に、妹で書家の三浦千江美さんや、千波さん千江美さんの高校時代の同窓だという伊東明子、池上敦子、武田夏実お三方…

映画『パリに見出されたピアニスト 』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) ご自由に演奏を! パリ北駅。多くの利用者が行き交う雑踏に置かれた駅ピアノ。ご自由に演奏を!と表示されており、一人の青年が力強い演奏を行っている。ほとんど毎日のように弾いているようで、その様子…

映画『レディ・マエストロ』

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用) 女性指揮者のパイオニア描く 女性指揮者のパイオニアとされるアントニア・ブリコの半生を描いている。 ここのところ、女性指揮者西本智実さんが指揮する演奏会に出掛けたり、ブザンソン国際指揮者コン…

ウィリアム・トーブマン『ゴルバチョフ』

その人生と時代(上・下) ソ連の最高指導者だったミハイル・ゴルバチョフの評伝である。ただし、ソ連という政体においては最後の書記長であり大統領であった。1922年生まれ、現在も生存中と伝えられている。私としてはペレストロイカを推進した人物として…

映画『第三夫人と髪飾り』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) ベトナム映画 ベトナム映画とはどういうものか関心があって観た。 19世紀のベトナムが舞台。深い谷間の川を2艘の船が滑るようにやってくる。船には花飾りが施されている。乗っているのは少女。豪農の…

池澤夏樹『科学する心』

文学的科学エッセイ 大学で理系に身を置いたこともある著者によるこれは科学を話題に据えたエッセイ集。とにかく著者の該博な知識には驚嘆するばかりだが、そこは一流の文学者によるものだから、一つひとつのテーマはとても難しいものばかりなものの、理系に…

『刑事の矜持』

ミステリーのアンソロジー 日本推理作家協会賞受賞作家たちによる傑作短編集第7弾。 大沢在昌、黒川博行、佐野洋、島田一男、土屋隆夫、角田喜久雄の6人が名を連ねている。ただ、佐野、島田、土屋、角田の4人はすでに物故者。初出時も、60年70年前の…

ミロスラフ・クルティシェフピアノリサイタル

(写真1 演奏会場の様子) ロシア気鋭のピアニスト 8日築地の浜離宮朝日ホールで開催された。 ミロスラフ・クルティシェフは、ロシア気鋭のピアニスト。レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれ34歳。第13回国際チャイコフスキーコンクール(4…

西本智実+イルミナートフィル演奏会

(写真1 演奏開始前の会場の様子) ゲストに岩崎宏美 10月5日蒲田の片柳アリーナで開催された。日本工科大学を運営する片柳学園の主催で、創立記念感謝の調べと題し行われた。会場は4千人収容という巨大な多目的施設で、これが驚くことに満員の盛況ぶり…

展覧会『ゼロ・ヒガシダ展』

(写真1 「最後の晩餐」と名付けられた巨大なレリーフ) 大作「最後の晩餐」 北上野のいりや画廊で開かれていた。 ゼロ・ヒガシダは彫刻家。1958年広島生まれ、1984年日大芸術学部、1986年芸大大学院卒業。ニューヨークでの活動が長い。 鉄を溶…

展覧会『コートールド美術館展』

(写真1 マネ「フォリー=ベルジェールのバー」=会場で販売されていた絵はがきから引用) ロンドンから魅惑の印象派 上野公園の東京都美術館で開催されている。 コートールド美術館とは、ロンドンのウエストミンスターにあるギャラリー。サマセット・ハウス…

展覧会「松下コレクション展」

(写真1 松方コレクション展が開催されている国立西洋美術館正面) 世界遺産国立西洋美術館 松方コレクションとは、川崎造船所を率いた実業家松方幸次郎が、第一次世界大戦前後の1910年代から20年代を中心にヨーロッパで収集した美術品のコレクション…

ホーカン・ネッセル『悪意』

スウェーデンミステリー このところ元気なスウェーデンミステリー。次々と新しい作品が紹介されて楽しませてくれている。特に現地在住の翻訳家の活躍が光る。英語版からの重訳ではなく原書からの訳出だから細かな味わいが出ているように思う。マイ・シューバ…

荻原浩『海の見える理髪店』

直木賞受賞作の短編集 直木賞受賞作である。短編6編が収められている。 どれも珠玉の作品ばかりで印象深いが、表題作の「海の見える理髪店」は、海辺の小さな町の床屋が舞台。時代遅れの洋風造り、人が住まなくなった民家を改装したような店構え。 「店の中…

今村夏子『むらさきのスカートの女』

芥川賞受賞作 面白い。近年の芥川賞受賞作では出色ではないか。滑らかだし読みやすい。だから一気に読める。 しかし、だまされてはいけない。読み進んでふと気がつくと内実恐い物語である。特に後半はミステリーじみてくる。 むらさきのスカートの女は、仕事…

戸田泰生画『再生』

(写真1 自身の作品とともに戸田泰生さん) 第49回純展出品 戸田泰生画『再生』は、上野公園の東京都美術館で開催されていた公募展純展に出品されていた。 純展は毎年秋に開催されていて、関東地方からの出品が大半で、今回は238人290点に上る作品…

映画『新聞記者』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 黒いサングラスをかけた羊の意味 ある日、東都新聞社会部に大学新設に関わる政権がらみの告発情報がFAXで届く。真偽を確認するよう若手の女性記者吉岡が命じられる。FAXは匿名によるもので、表紙に…

髙村薫×南直哉『生死の覚悟』

作家と禅僧の対話 魅力的な組み合わせである。 ディテールをないがしろにせず理詰めの作風で人気の作家髙村薫。近年は『晴子情話』三部作や『空海』などを著し、仏教への切り込みに新境地を見せている。対する南直哉(じきさい)は永平寺で修行を積んだ曹洞…

図書館と書店が融合した多賀城市立図書館

(写真1 2階から見た蔦屋書店店舗(左部分)と、びっしりと本で埋め尽くされた壁面の書棚から右が図書館) TSUTAYA図書館 図書館と書店が融合した施設が評判になっているというのでわざわざ見学に出掛けてみた。 仙台駅から仙石線で約20分多賀城駅…

N響 夏 2019

(写真1 演奏開始直前の客席の様子) ロシアとフィンランド 北国の叙情 NHK交響楽団の演奏会が7月19日、NHKホールで行われた。毎年夏恒例の一般向けの演奏会で、スポンサー岩谷産業。指揮はモスクワ生まれのディマ・スロボデニューク。 今年の演目…

しずくいし夏の音楽祭東京公演2019

(写真1 演奏終了直後の様子) 林智之メモリアルコンサート 7月17日、代々木上原のムジカーザで開かれた。 しずくいし夏の音楽祭とは、岩手県雫石町で毎年8月に開催されている室内楽を中心とした音楽祭で、主宰者自身「おそらく日本で一番小さな音楽祭…

グループSUN展

(写真1 会場の様子) 祖母から娘へ孫へ 東京・銀座の兜屋画廊で開かれている。10日の初日に駆けつけたが大変にぎわっていた。 グループSUNとは、三浦千波さんとその家族に同郷同窓の仲間3人が加わったにぎやかな構成。 特にびっくりしたのが三浦さん…

中村文則『あなたが消えた夜に』

二回読んでも難解 4年前に単行本が刊行された折にすでに読んでいて、このたび文庫化されて再び手に取った。つまり再読と言うことだが、まったく色褪せていなかった。それほど面白いと言うことだが、まずはそのことに自身率直に驚いた。小説は文庫化されて再…

馬場道『photo esseay 続「撮り歩き」』

豊かな着眼と鋭い視点 昨年2月に上梓した『撮り歩き』の続編。第一集では100本200ページのphoto essayが収録されていたが、その後も精力的にカメラを片手に歩きまわっていたようでわずか1年2ヶ月で第二集をまとめた。 撮り歩きとは、散策にもカメラ…

映画『ニューヨーク公共図書館』

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用) 巨大な知の殿堂 ニューヨーク公共図書館(NYPL)の全貌を描いたドキュメンタリー映画。監督はドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン。 冒頭、喧噪なニューヨークの五番街に面した列柱が…

柚月裕子『慈雨』

慟哭のミステリー 警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子を伴って四国巡礼の旅に出た。神場は群馬県警捜査一課の元刑事で、夫婦ふたりの旅は新婚旅行以来だった。八十八か所すべての寺を歩いて回る計画で、一番札所の霊山寺から順に約二ヶ月をかけて遍…

二宮敦人『最後の秘境 東京藝大』

天才たちのカオスな日常 知り合いには芸大出身の画家や演奏家が幾人かいるし、美術展や音楽会にも時折出掛けていて芸大出の経歴を目にすることもままあって、芸大には普段から関心が高い。 しかし、芸大生たちは超難関の狭き門をくぐってきた天才たちの集ま…

第85回旺玄展

(写真1 出品作品を前に戸田泰生さん) 伝統の公募展 上野公園の東京都美術館で開かれていた。年1回開催され85回目という大変伝統のある公募展。規模も大変大きくて、今回は出品者数が405人、出品数が468点に達した。 会場に入ると、展示室が28…

映画『女王陛下のお気に入り』

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用) 俗悪な娯楽性 18世紀初頭のイギリスの宮廷が舞台。アン女王の治世下にあり、ルイ14世統治下のフランスと戦争中という時代。 主要な登場人物は、アン女王(オリヴィア・コールマン)その人と、その…