ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

03 読書ときどき映画あるいは美術

ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』

現代アメリカ文学の傑作 ブルックリンが舞台。そのブルックリンが豊穣な物語を編んでくれた。 マンハッタンの保険会社で働いていたネイサン・グラスは、停年を前に生まれ故郷のブルックリンに終の棲家とすべく戻ってきた。3歳のときに一家がブルックリンを離…

ピアノソナタ

(写真1 ピアノ曲が収録されているCD集) 音楽の好みにも変化 このごろは家にいる時間が長いから、音楽もよく聴いている。 ただ、私は不器用で、音楽を聴きながら本を読んだり、音楽を聴きながら原稿を書いたりするということができない。BGMのつもり…

『日本語を学ぶ人の辞典』

にほんごの会編集 日本語を学ぼうとしている人や日本語を教えている人のための辞典。英語と中国語の対訳がついている。見出し語は1万1千語。総ふりがな、アクセント付き。 とにかく、非常に丁寧で親切な編集である。日本語を母語とする人には必要がないよ…

映画『ミナリ』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 韓国系アメリカ映画 韓国人の移民家族が、カリフォルニアから新天地を求めて南部のアーカンソー州に越してくる。家族は、夫のジェイコブ、妻のモ二カ、娘アン、息子デビッドの4人。時代は、テレビニュー…

南薫造展

(写真1 展覧会のチラシから引用) 没後70年大回顧展 東京ステーションギャラリーで開かれている。 南薫造(1883-1950)は、明治末から昭和にかけて活躍した洋画家。ただ、印象派の画家として評されてきたものの、これまで大規模な回顧展が開かれ…

森知英ピアノリサイタル

(写真1 演奏を終えた森知英さん) 久しぶりのコンサート コロナの影響は様々なところに及んでいるが、演奏会もその一つ。とにかく人の集まることは避けなければならないから大変だ。 ピアノのコンサートも同様で、私は森知英さんのファンだから、毎年三つ…

映画『私は確信する』

(写真1 映画館に掲示されてあったポスターから引用) サスペンスな裁判劇 主婦スザンヌ・ヴィキエが忽然と失踪した。夫と三人の子どもは残したままだった。遺体は発見されなかったし、決め手となる証拠も発見されなかったのだが、周囲の証言だけを元に夫ジ…

宇佐美りん『推し、燃ゆ』

(写真1 受賞作所収の「文藝春秋」3月号) 芥川賞受賞作 書き出しが「推しが燃えた。」だし、書名からして『推し、燃ゆ』とあって、いきなり躓いた。推しの意味がわからない。一押し二押しの推しか。 私は、小説を読むときに、初めの20ページ、少なくと…

キラキラっとアートコンクール展

(写真1 丸ビル1階の会場の様子) 障がいのある子どもたちの絵画コンクール 東京駅の正面、丸ビル1階の特設会場で開かれていた。何気なく寄ったのだが、あまりの作品の素晴らしさに感嘆した。会期の最終日だった。 三菱地所グループの主催で、今年が19…

アンソニー・ホロヴィッツ『その裁きは死』

本格ミステリーの傑作 『メインテーマは殺人』に続いて探偵ホーソーンシリーズの第2弾である。本作も事件は難解で、第一級の傑作ミステリーである。 主人公は元刑事のダニエル・ホーソーン。ロンドン警視庁の顧問として難事件の捜査に当たっている。ホーソー…

静岡県立美術館

(写真1 ロダン<カレーの市民>の展示) 素晴らしいロダンのコレクション 美術が好きで、美術館にはしばしば足を運ぶ。旅行などで地方へ出かけたときには、その地の美術館を見学する。時間が許す限り駆け足でめぐることもあれば、あらかじめ美術館を旅程に組…

笠間日動美術館

(写真1 笠間日動美術館外観) 充実したコレクション 銀座の日動画廊の創業者である長谷川仁・林子夫妻が縁の笠間市に建てた私設の美術館。日本を代表する画商だけにさすがに素晴らしいコレクションで知られる。 笠間城跡の山麓にあり、市街中心の笠間稲荷神…

不動まゆう『愛しの灯台100』

ほとばしる灯台への愛情 不動さんは、フリーペーパー『灯台どうだい?』の編集長。自費発行で無料配布している。テレビやラジオへの出演や新聞、雑誌への執筆でも知られ、灯台フォーラムの運営にも携わっており、その多くは灯台ファンを増やそうというもので…

寺井力三郎展

(写真1 寺井力三郎<廻送列車>=会場で販売されていた絵はがきから引用) 暮らしに息づく絵画 埼玉県加須市のサトヱ記念21世紀美術館で開催されている。 寺井は埼玉県羽生市在住。1930年生まれで、卒寿記念とある。代表作がそろっており画業の全体像を…

サトヱ記念21世紀美術館

(写真1 彫刻が立ち並ぶ美術館の外観) 彫刻と絵画と庭園と 埼玉県加須市所在。東武伊勢崎線花崎駅から徒歩約20分。平成国際大学と道を隔てて向かい合っている。同大はスポーツで鳴らす埼玉栄高校や花咲徳栄高校などを擁する佐藤栄学園の運営で、美術館は…

ジェフリー・アーチャー『レンブラントをとり返せ』

新しい警察小説のシリーズ アーチャーの新作である。それも警察小説である。アーチャーに警察小説は初めてではないか。もっとも、アーチャー自身は「これは警察の物語ではない、これは警察官の物語である」と巻頭に一筆入れているが。 主人公は、ウィリアム・…

東海・近畿・中国・四国・九州

『旅する日曜美術館』 NHK日曜美術館制作班編による全2巻の下巻。 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、新たに美術館を訪ねた美術館紀行を加えて構成しており、本巻では東海・近畿・中国・四国・九州の36館が紹介されている。 この番組は好きで毎週欠…

NHK日曜美術館制作班編『旅する日曜美術館』

北海道・東北・関東・甲信越・北陸 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、改めて美術館を訪ねた美術館紀行で構成されている。 全2巻で構成されていて、上巻下巻とも第1巻第2巻とも特に断りはないが、本書は上巻にあたるようで、北海道・東北・関東・甲信越・…

映画『燃ゆる女の肖像』

(写真1 映画館に掲示されてあったポスター) 素晴らしい映画言語と映画美 美しい映像。それが独特の映画言語を表現している。会話は少ない。音楽も少ない。登場人物も少ない。ほとんど女性ばかり。しかしそれでも豊穣な物語を紡いでいる。カメラが少ない会…

梯久美子『サガレン』

樺太/サハリン境界を旅する サガレンとは、宮澤賢治が旅した時代の樺太の呼称の一つ。 この島は、実効支配した国によって樺太、サハリンなどと呼び名が変わってきていて、そのつど〝国境〟も動いてきた歴史があり、当然、敷設されていた鉄道においてもその版…

展覧会『根津美術館の国宝・重要文化財』

(写真1 ロビーの様子。正面奥の左端に見えるひときわ背の高い白い仏像が「如来立像」) 国宝7件重文88件 港区南青山の根津美術館で開かれている。 根津美術館は、東武鉄道の社長などを歴任した実業家初代根津嘉一郎が蒐集した日本や東洋の古美術品を保…

展覧会『山下清展』

(写真1 会場で配布されていた開催案内のチラシから引用。上段の絵が「長岡の花火」部分) ゆかりの我孫子市で 千葉県我孫子市で開かれている。山下清(1922-1971)は、市内の弁当屋で働いていたなど我孫子市にゆかりが深い。 貼絵を中心にペン画や…

白堊芸術祭今年も

(写真1 会場の様子) コロナにも負けず 白堊芸術祭が今年も開催された。コロナ下のこと、開催が危ぶまれていたが、熱心な会員の後押しがあって開催にこぎ着けたもののようだ。会員の中にはこの展覧会に向けて1年をかけて作品作りに励んでいる人も少なくな…

映画『相撲道』

(写真1 映画館に掲示されていた開催案内のポスター) サムライを継ぐ者たち 大相撲の醍醐味を描いたドキュメンタリー映画。約半年間、相撲部屋に密着して取材した。テレビでもたびたび稽古場の風景などが報道されて大相撲の様子をうかがい知ってきたが、映…

コンサート『三木香代&森知英ピアノデュオの夕べ』

(写真1 開催案内のチラシ。写真左:三木香代、右:森知英) 連弾と2台ピアノの演奏 カワイ表参道のコンサートサロンで開かれた。お二人はいずれも脂ののりきった実力派。 演奏は、すべて連弾と2台ピアノばかりで、まさしくピアノデュオだった。 初めに、ベ…

映画『スパイの妻』

(写真1 映画館で配布されていたチラシから引用) 秀逸な映画美 戦争への足音が近づいてきた1940年の神戸。貿易商の福原優作(高橋一生)と妻聡子(蒼井優)は、瀟洒な洋館に住み夫婦仲のよい生活を送っていた。 満州出張から帰国した優作に聡子は何や…

パブリックアート

(写真1 シカゴのデイリー・シビック・センタービルの前庭にあるピカソの「アンタイトル」。コールテン鋼という材料が使われている) 世界各地に拾う 街角や街路にたたずむアート。ストリートアートとも違って景観に溶け込んでいるのが素晴らしい。旅行などで…

街路の彫刻

(写真1 美しい紅葉と彫刻。作品は岩田健「二人と猫」) 芸術の秋演出 紅葉が美しい季節になってきた。落ち葉を踏みしめながら歩くのも気持ちがいい。とてものんびりした気持ちになれる。 いつも散策で訪れる近所の公園の外周道路には、数百メートルにわた…

アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』

イギリス伝統のミステリー 第一級の傑作ミステリーである。 二つの意味で設定が秀逸だ。一つにはホームズ張りだということ。つまり、ホームズがいてワトソンがいるということ。探偵ホームズ役には、元刑事のダニエル・ホーソーン。ロンドン警視庁の顧問として…

映画『博士と狂人』

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用。写真上段が博士マレーを演じるメル・ギブソンと下段は狂人マイナー役のショーン・ペン) オックスフォー英語辞典誕生秘話 オックスフォード大学図書館。吹き抜けの壁いっぱいの巨大な書架と膨大な図書。…