ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

03 読書ときどき映画あるいは美術

しずくいし夏の音楽祭東京公演2019

(写真1 演奏終了直後の様子) 林智之メモリアルコンサート 7月17日、代々木上原のムジカーザで開かれた。 しずくいし夏の音楽祭とは、岩手県雫石町で毎年8月に開催されている室内楽を中心とした音楽祭で、主宰者自身「おそらく日本で一番小さな音楽祭…

グループSUN展

(写真1 会場の様子) 祖母から娘へ孫へ 東京・銀座の兜屋画廊で開かれている。10日の初日に駆けつけたが大変にぎわっていた。 グループSUNとは、三浦千波さんとその家族に同郷同窓の仲間3人が加わったにぎやかな構成。 特にびっくりしたのが三浦さん…

中村文則『あなたが消えた夜に』

二回読んでも難解 4年前に単行本が刊行された折にすでに読んでいて、このたび文庫化されて再び手に取った。つまり再読と言うことだが、まったく色褪せていなかった。それほど面白いと言うことだが、まずはそのことに自身率直に驚いた。小説は文庫化されて再…

馬場道『photo esseay 続「撮り歩き」』

豊かな着眼と鋭い視点 昨年2月に上梓した『撮り歩き』の続編。第一集では100本200ページのphoto essayが収録されていたが、その後も精力的にカメラを片手に歩きまわっていたようでわずか1年2ヶ月で第二集をまとめた。 撮り歩きとは、散策にもカメラ…

映画『ニューヨーク公共図書館』

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用) 巨大な知の殿堂 ニューヨーク公共図書館(NYPL)の全貌を描いたドキュメンタリー映画。監督はドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン。 冒頭、喧噪なニューヨークの五番街に面した列柱が…

柚月裕子『慈雨』

慟哭のミステリー 警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子を伴って四国巡礼の旅に出た。神場は群馬県警捜査一課の元刑事で、夫婦ふたりの旅は新婚旅行以来だった。八十八か所すべての寺を歩いて回る計画で、一番札所の霊山寺から順に約二ヶ月をかけて遍…

二宮敦人『最後の秘境 東京藝大』

天才たちのカオスな日常 知り合いには芸大出身の画家や演奏家が幾人かいるし、美術展や音楽会にも時折出掛けていて芸大出の経歴を目にすることもままあって、芸大には普段から関心が高い。 しかし、芸大生たちは超難関の狭き門をくぐってきた天才たちの集ま…

第85回旺玄展

(写真1 出品作品を前に戸田泰生さん) 伝統の公募展 上野公園の東京都美術館で開かれていた。年1回開催され85回目という大変伝統のある公募展。規模も大変大きくて、今回は出品者数が405人、出品数が468点に達した。 会場に入ると、展示室が28…

映画『女王陛下のお気に入り』

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用) 俗悪な娯楽性 18世紀初頭のイギリスの宮廷が舞台。アン女王の治世下にあり、ルイ14世統治下のフランスと戦争中という時代。 主要な登場人物は、アン女王(オリヴィア・コールマン)その人と、その…

アンドリュー・ワイエス展

(写真1 会場の美術愛住館外観) 美術愛住館で 美術愛住館は、地下鉄丸ノ内線四谷三丁目駅から徒歩数分。堺屋記念財団の創設で、2018年の開館。堺屋太一とその妻で洋画家の池口史子の業績を伝えつつ展覧会を開催している。館長は多摩美大教授の本江邦夫…

展覧会「へそまがり日本美術」

(写真1 展覧会の看板) 禅画からヘタウマまで 東京都下府中市美術館で開催されている。 企画の妙であり、ユーモアたっぷりな絵があり、不気味な顔があり、稚拙だが味わいがある絵などとユニークな作品が集められている。 禅画からヘタウマまで-との副題が…

大江健三郎『政治少年死す』

『セヴンティーン』第二部 『セヴンティーン』は1961年「文学界」1月号に発表され、続いて2月号に『政治少年死す』(セヴンティーン第二部)が発表された。大江健三郎26歳の頃で、大江はすでに23歳で芥川賞を受賞し、旺盛な執筆活動を行っていて最…

金沢文庫

(写真1 阿字ヶ池を中心に浄土式庭園が広がる称名寺の境内。奥は金堂) 称名寺境内の歴史博物館 シーサイドラインでは、途中、海の公園南口駅で下車し、金沢文庫に寄った。 金沢文庫は、鎌倉時代に北条実時が創設した文庫。武家文庫としては日本最古と言わ…

青山文平『半席』

上質の時代物ミステリー 直木賞作家が描く連作短編集である。時代物のミステリーが6編収められている。それがいずれも面白くて思わずページをくくる手が停まらない。ぬる燗にするめでもかじりながら読み進むとなおさら物語世界に漬かりながら興趣が盛り上が…

映画『バイス』

(写真1 映画館に掲示されていたパンフレットから引用) チェイニー副大統領とは何者か アメリカ映画。 題名のバイス(VICE)が意味深長である。接頭語として用いれば、vice presidentのように副~という意味になるが、単独では、悪という意味で使われる。…

映画『記者たち』

(写真1 映画館に掲示されていたパンフレットから引用) 衝撃と畏怖の真実 イラク戦争を仕掛けたブッシュ大統領の嘘を暴いた記者たちの行動を描いている。 9.11テロを契機にイラク政策をエスカレートしていくブッシュ大統領に対し、ニュー・ヨークタイム…

特別展『国宝 東寺』

(写真1 守護神らしくりりしさの感じられる帝釈天騎象像) 立体曼荼羅を東京で再現 東京国立博物館で開催されている。 東寺は、そもそも空海が真言密教の根本道場としたものだが、展覧会では空海にまつわる名宝と東寺に伝わる文化財の全貌が紹介されていた…

花まつりコンサート2019

(写真1 コンサート会場開演前の様子) 華麗なるハープとの共演 花まつりコンサートが今年も釈迦の誕生日に当たる4月8日横浜市の曹洞宗大本山総持寺境内鶴見大学記念館で開催された。今年が10回目。音楽ファン対象というよりは、ファミリーコンサートだ…

川本三郎『あの映画に、この鉄道』

日本映画鉄道紀行 映画に登場した鉄道が丹念に取り上げられている。 ざっと数えてみたところ、取り上げられた映画は合計241本。登場した路線や駅は実に404。著者は評論家。映画や鉄道に造詣の深いことはよく知られているところだが、それにしてもよく…

映画『マイ・ブックショップ』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 本好きにとって至福の空間 印象的な結末だった。衝撃の後に救いが現れた。本はいつまでも途絶えない、永遠に伝わっていくということが示されて大変心強いものだった。 1950年代のイギリスが舞台。フ…

映画『斬、』

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用) これも一つの幕末描く 塚本晋也の監督・脚本・撮影・編集・製作作品。出演は池松壮亮、蒼井優そして塚本晋也自身も。 江戸末期、250年も続いた太平の世が揺らぎ始めた時代。疲弊する農村、困窮し浪人…

奇想の系譜展

(写真1 会場で配布されていたパンフレトから引用) 江戸絵画ミラクルワールド 若冲から蕭白、芦雪ら8人の奇才の作品が一堂に並んでいてまことに圧巻。 その8人がすごい。伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、狩野山雪、岩佐又兵衛、鈴木其一、白隠慧鶴、歌川…

アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件(上・下)」

稀にみる傑作ミステリ これは稀にみるミステリの傑作だ。文庫本で上下2冊。謎解きの面白さが詰まっていて、じっくり読み進むとミステリ好きにとっては至福の時を過ごすことができる。 イギリスミステリらしく構成がよくよく凝っている。文庫上下2冊という…

町屋良平『1R1分34秒』

芥川賞受賞作 二十一歳のC級プロボクサーが主人公。最下級のプロライセンスで、いわゆる四回戦ボーイと呼ばれるクラスか。デビュー戦を初回KOで華々しく飾ったものの、その後二敗一分けと負けが込んできている。 ディテールがすごい。パチンコ店員として…

神奈川県立近代美術館 葉山

(写真1 神奈川県立近代美術館葉山正面外観) ミュージアムカフェを訪ねて 神奈川県立美術館葉山は、JR横須賀線逗子駅あるいは京浜急行新逗子駅からバスで約20分。 相模湾に面し、一色海岸を眼下に望む高台にありはなはだ風光明媚。葉山御用邸にも近い…

日本交通公社「旅の図書館」

(写真1 「旅の図書館」外観) 揃う時刻表のバックナンバー 公益財団法人日本交通公社が運営する専門図書館。東京都港区南青山二丁目所在。地下鉄青山一丁目駅から徒歩3分。かつては東京駅八重洲口のビル内に開設されていた「観光文化資料館」が2年前に移…

なないろ作『ちくちくとふわふわ』

バイリンガル絵本 ふわふわFLUFFY(フラッフィー)と、ちくちくSPIKY(スパイキー)が登場する。 FLUFFYは、ふわふわ言葉で誰かをハッピーにしてはなまるをもらったときのような気持ちにしてくれるし、SPIKYは誰かをアンラッキーにして何かをぐちゃぐちゃにして…

映画『バーニング』劇場版

(写真1 映画館で配布されていたパンフレットから引用) 村上春樹原作の韓国映画 2018年製作。監督イ・チャンドン。原作は村上春樹の『納屋を焼く』。 ソウル最大の繁華街南大門とおぼしき街頭でイ・ジョンスは、幼なじみのヘミから声をかけられる。 ジョ…

入場料1500円の書店「文喫」

(写真1 店内の書棚の様子。通路が狭い) 従来のコンセプトが合致しない書店 入場料が1500円もする書店ができたというのでのこのこ出掛けてみた。場所は地下鉄六本木駅のすぐそば。昔、青山ブックセンターだったところ。 店内に入ると、左に雑誌の棚。…

展覧会『顔真卿』

(写真1 「祭姪文稿」の書き出しの部分=会場で販売されていたカタログから引用) 王羲之を超えた名筆 東京国立博物館で開催されている話題の展覧会。書に関する展覧会としては破格の規模と内容ではなかったか。入場者数も驚異的で、入場に40分、注目の「…