ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

03 読書ときどき映画あるいは美術

K.スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

アメリカの辞書編纂者の回顧 ウェブスター辞書は、アメリカの英語辞典。200年を超す歴史を有する国民的辞書で、発行部数は聖書に次ぐといわれるほど。徹底したアメリカ英語で知られる。 著者のコーリー・スタンパーは、版元のメリアム・ウェブスター社で約…

『岩波新書解説総目録』刊行

創刊80年約3400点 岩波新書の1938年の創刊から2019年までの80年分のラインナップ約3400点が総覧できる。判型はもちろん岩波新書と同じサイズながら約700ページもあって、歴史の重みをずしりと感じる。 初めての解説総目録なそうで、…

今野敏『清明 隠蔽捜査8」

竜崎伸也 神奈川県警刑事部長に着任 竜崎伸也を主人公とする警察小説のシリーズ長編8作目。 竜崎は、そもそも東大法卒、警察庁のキャリア官僚だったのだが、警察庁長官官房総務課長だったときに、組織の不正を正そうとしたものの、警察庁の方針に逆らったと…

賑やかにグループSUN展

(写真1 多彩な作品が並んだ会場の様子) 多彩な才能のアーティスト一家 グループSUN展。今年は銀座のギャラリー向日葵を会場に行われた。 展覧会でグループ展はよくあるかたち。さまざまな組み合わせがあるが、グループSUNの面白いところは一家とい…

沢木耕太郎『旅のつばくろ』

心温まる旅のエッセイ JR東日本の車内誌「トランヴェール」に連載されているエッセイ41編が収録されている。 新幹線に乗った折に手にすることが多く、巻頭エッセイだし、文章が平易で、分量も1編あたり5分程度で読めるようなところから座席に落ち着く…

『感情類語辞典』

豊かな表現の手引き 感情表現のバリエーションを広げるための手引き。見出し語として130の感情語が用意されている。 それぞれについて、外的なシグナル、内的な感覚、精神的な反応、一般的に強くまたは長期的に表れる反応、隠れた感情を表すサインなどカ…

アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』

エーレンデュルシリーズ アイスランドの警察小説である。『湿地』『緑衣の女』『声』と続く傑作揃いのエーレンデュルシリーズの4作目。 主人公は、首都レイキャビック警察の犯罪捜査官エーレンデュル。その年下の同僚であるエリンボルクとシグルデュル=オー…

コロナ籠城陣中見舞い

(写真1 送られてきた本) 外出自粛貫徹 緊急事態宣言が発出され外出自粛で、〝コロナ籠城中の陣中見舞い〟にと友人から本がどっさりと送られてきた。 私の読書傾向を知っているから、すぐにでも手に取りたい本ばかりでこれはありがたい。 文庫本が23冊。…

井上マサキ+西村まさゆき『たのしい路線図』

路線図に魅せられた男たち ただただ路線図を愛でては〝いいねぇ〟とつぶやきながら鉄道路線図の世界を紹介している。 路線図と一口に言っても鉄道会社や駅によっても描き方に随分と違いがあるが、ここでは200もの路線図や運賃表が取り上げられている。 私…

緊急事態宣言下の旅

(写真1 必須アイテム3冊=左から理科年表、時刻表、地図帳) カントの趣 緊急事態宣言が出され、外出にも強い自粛要請。旅行はおろか、映画館も、図書館も、本屋までもが休みとあって実際出かける先もないから家でゴロゴロしているが、これではいかにもつ…

横山秀夫『ノースライト』

6年ぶりの長編ミステリー そもそもは建築家冥利に尽きるとはいえ奇妙な依頼だった。 岡嶋建築事務所の一級建築士青瀬稔は、吉野陶太・香里江夫妻から住宅建築の依頼を受けた。青瀬が上尾に建てた二階家に一目惚れしたと言い、「すべてお任せします。青瀬さん…

映画『三島由紀夫VS東大全共闘50年目の真実』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 討論会のドキュメンタリー映画 過激な学生運動が吹き荒れていた1969年5月13日、東大駒場キャンパスの900番教室で行われた、作家三島由紀夫と東大全共闘との討論の模様を収録した実写映像を骨格…

『世界ことわざ比較辞典』

世界初の編纂 日本のことわざと世界のことわざを集めて比較した辞典。日本ことわざ文化学会編で、世界的にも前例のない辞典らしい。 日常的に使われている日本のことわざ300を見出しとし、これに世界25の地域と言語から似たようなことわざを取り上げた…

原田マハ『デトロイト美術館の奇跡』

(写真1 表紙の絵はセザンヌの「マダム・セザンヌ」) 市民が守った美術館 デトロイト市の財政破綻から危機にさらされたデトロイト美術館(DIA)が愛情深く描かれている。 デトロイト市はミシガン州にある全米第9位の大都会。もとよりGEやフォードなど…

栗原小巻の「愛の讃歌―ピアフ」

(写真1 開催案内のパンフレットから引用) ピアフの半生を一人芝居 舞台はとても簡素である。右にベッド、中央にティーテーブルと2脚の椅子。左にマイクスタンド。そしてその左に隠れるようにピアノとドラム。 芝居は、ベッドに座って自らの人生を回想す…

時刻表完全復刻版

(写真1 時刻表完全復刻版。左が1964年10月号で右が9月号=カバーは復刻版のためのもの) 1964年9月号/10月号 東海道新幹線開業当時の時刻表が刊行された。いわゆる「交通公社の時刻表」が復刻されたもので、開業時の東海道新幹線の時刻表が載…

映画『パラサイト 半地下の家族』

(写真1 映画館に掲示してあったポスターから引用) 臭いが狂気を生む 半地下の部屋に住む4人家族が主人公。部屋の窓からは通りの地面が目の高さに見えていて、時々、窓のすぐそばで酔っ払って立ち小便をする者がいる。部屋の中はゴキブリが走り回っており…

小さな音楽会「はく・あ・ぽこ」

(写真1 音楽会 の様子) ソプラノ大津佐知子&ピアノ森知英 大津佐知子さんのソプラノと森知英さんのピアノによるコンサート。昨年に続いての開催で今年はこのたび恵比寿のサウンドゾーン・イーフラットで開催された。 お二人は高校時代の同期で、しかも1…

ダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム5』

復讐の炎を吐く女 世界的なベストセラーとなったスティーグ・ラーソン作『ミレニアム』シリーズは、第3部まで進んだところで著者ラーソンの死によって終了していた。衣鉢を継いだのが同じスウェーデン人の作家ダヴィッド・ラーゲルクランツで、主人公や主な登…

大沢在昌『新宿鮫Ⅺ 暗約領域』

8年ぶりの新宿鮫 新宿鮫とは、警視庁新宿警察署生活安全課刑事鮫島警部の異名。本来キャリア組だったのだが、警察内部の抗争により所轄に飛ばされてきてそのまま塩漬けにされている。何事にも妥協せず暴力団とも渡り合い、一度食らいついたらはなさいところ…

ピエール・ルメートル『わが母なるロージー』

カミーユ警部再び 『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』『傷だらけのカミーユ』と続いたフランスのミステリ作家ピエール・ルメートルのカミーユ警部三部作。日本では三部作いずれも年間ミステリー投票の上位に入る人気シリーズだった。シリーズは201…

映画『マザーレス・ブルックリン』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) ああニューヨーク 1950年代のニューヨークが舞台。ある種フィルムノワールのような色彩があってとても印象深い。 チック症の青年ライオネルが主人公。私立探偵事務所で働いている。孤児院で育ってい…

アーティゾン美術館オープン

(写真1 展示室の様子) ブリヂストン美術館がリニューアル 近代西洋絵画のコレクションで知られる京橋のブリヂストン美術館が、全面的に建て替えられて館名も新たにアーティゾン美術館としてこのたびリニューアルオープンした。 建築地は以前の通りで、東…

展覧会「ハマスホイとデンマーク絵画」

(写真1 ヴィルヘルム・ハマスホイ「背を向けた若い女性のいる室内」=会場で販売されていた絵はがきから引用) 静謐な世界 上野公園の東京都美術館で21日から開かれている。その開幕初日に出かけたが、夕方にもかかわらずまずまずの人気ぶりだった。東京の…

三浦千波展

(写真1 個展会場の様子) 力強く大胆な画風 三浦千波の個展が銀座の兜屋画廊で開催されている。 会場に入ると明るい色彩の絵がいっぱいに目に飛び込んでくる。風景画が多いのだが、力強い画風が特徴で、あるいは画家のことを知らなかったら男性が描いたの…

44年ぶりの「築地明石町」

(写真1 鏑木清方「築地明石町」=会場で販売されていた絵はがきから引用) 近美の鏑木清方コレクション 東京国立近代美術館で開かれている所蔵作品展の一環として特別公開されていた。 美しい。日頃日本画を見る機会は少なくて、そもそも私の絵画鑑賞は美し…

及川昭伍作『マグカップ』

(写真1 及川昭伍作『マグカップ』) 端正で上品な作品 及川昭伍作の染付である。鳥獣戯画が絵付けされている。 及川さんは、経済企画庁総合計画局長から国民生活センター理事長などを歴任された。早くから陶芸にいそしんでいたようで、日本陶芸倶楽部正会…

12回目の白堊芸術祭

(写真1 会場の様子) 多彩な出品分野とイベント 12回目を迎えた白堊芸術祭(主催在京白堊会)が2日から7日まで6日間にわたり神田神保町の文房堂ギャラリーで開催された。 主催の在京白堊会は、高校時代の同窓会の在京組織。毎年師走のこの時期に開催…

金子三勇士ピアノコンサート

(写真1 開演前の会場の様子) 新しい時代をつくるクラシック 12月2日新宿文化センター大ホールで開催された。 金子三勇士(かねこみゆじ)は、人気の若手ピアニスト。群馬県高崎市生まれ30歳。父日本人、母ハンガリー人。バルトーク国際ピアノコンクー…

ブレディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

現代英国社会を活写 著者は、福岡県出身で英国在住。アイルランド人の配偶者と息子と三人で英国南端のブライトンという地方都市に住んでいる。 息子は、小学校は、カトリックの名門校に通った。裕福な家庭の子が多く通っている学校だったが、中学校は、大半…