ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

池澤夏樹『また会う日まで』

(写真1 写真上が単行本、下が新聞切り抜きの束)

朝日新聞朝刊連載小説が単行本化

 朝日新聞朝刊に2020年8月1日から2022年1月31日まで連載されてきた同名小説が書籍化された。連載回数は531回に及んでいたが、単行本も727ページとまことに長編。
 連載時、毎日読んでいたばかりか、切り抜きも行っていた。連載1回は単行本1ページ半ほど。連載1回分ずつではなかなか滑らかさには欠けていて、連載が終わって切り抜きを初めから読み返していた。
 主人公は、秋吉利雄という実在した人物。先祖から敬虔なキリスト教徒であり、それでいて海軍兵学校を出た職業軍人。最終的には少将にまで昇った。ただ、海軍では海図制作に携わる水路部に属し、海軍大学校から東京帝国大学理学部で天文学を学んだ科学者でもあった。また、秋吉利雄は著者池澤夏樹の父方の祖母の兄にあたるとのこと。明治22年生まれで、海兵42期卒。
 物語は、秋吉利雄の生涯をなぞるように進められており、特に海兵42期は、大正3年(1914年)の卒業だから、第一次世界大戦から第二次世界大戦に至る激動期を挟んでおり、ちょうど日本の近代史が映し出されることとなっていた。
 もとより物語なのだが、まるでノンフィクションの様相だった。
 (朝日新聞出版刊)