ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

桐山智子『タカラヅカ百年の芸名』

タカラジェンヌ4426人

 宝塚歌劇団団員タカラジェンヌの芸名の研究である。
 タカラヅカでは、1期生から100期生までの生徒が4426人。この総数について詳細な探求が行われていて、本書は、A5判332ページに上り、タカラヅカに限ったこととはいえ、これほどの芸名研究は珍しいのではないか。まさしく研究書だが、著者あとがきによると、日本女子大学文学部に提出した著者による卒業論文がもとになっているとのこと。
 だからだろうが、タカラヅカという華やかな歌劇団の芸名研究にしては、まさしく研究書であって、芸能的視点はまったくなく、浮ついた面白さには欠けた。
 だから、本書の本文中から引用しようにもなかなか難しくて容易ではない。わずかに、
 男役と娘役の主な違いは、
 ⅰ 男役は娘役に比べて漢語が多い。
 ⅱ 男役は娘役に比べて一字名が多い。
 ⅲ 娘役は男役に比べて三字名が多い。
などと拾える程度である。
 それで、タカラジェンヌの芸名を私なりに読み込んでいくと、そこにはタカラヅカらしい華やかな名前が並んでいて興味深い。
 50音順のリストを読んでいくと、名字に天のつく名が多いことに気がつく。天彩、天翔、天希などと20人を超す。
 同様に、美のつくのは当然だろうし、千がつくのも千曲、千咲、千里などとやはり20人を超す。
 また、一般人の姓名は、姓+名の組み合わせで、姓は姓に用いられる漢字が当てられるのが一般的だが、タカラジェンヌの芸名で、一般人で本来名前に用いられる漢字が、姓にも用いられ、まるで名+名のような組み合わせになっているものが非常に多い。小百合えみ、奈々あさみ、一希星などがそうだ。
 また、姓にひらがなを用いるのもタカラヅカ流のようで、あうら真輝、あゆら華央などがそうだ。
 姓にしろ名にしろ好まれる漢字ということでは、愛、朝、彩、紫、月、夏、春、若などが挙げられる。大を用いるのは断然男役に多い。
 芸名リストを読んでいったら、著名な姓名がいくつも見つかった。タカラヅカ退団後、芸能界に進出したものが多かったということだろう。 朝丘雪路、天海祐希、有馬稲子、淡島千景、扇千景、鳳蘭、乙羽信子、黒木瞳、越路吹雪、檀れい、浜木綿子、遙くらら、真矢ミキ、大地真央などは私でも知っている。ただ、私は芸能情報には疎いから見落としが多いに違いない。
(武蔵野書院刊)