ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

03-01 読書ノート

中谷一郎『JAXAの先生!宇宙のきほんを教えてください!』

あなたの常識は宇宙の非常識 民間人ですら宇宙旅行を楽しむ時代になってきたが、宇宙はまだまだ深淵。謎だらけと言えるほどで、宇宙への疑問は増すばかり。 本書ではその宇宙とは何か解きほどいてくれている。ただ、タイトルだけ見ると、こども向けのやさし…

『教科書名短編科学随筆集』

科学者の名エッセイ 中学校の国語教科書に載った科学者のエッセイを集めた。 エッセイは、寺田寅彦、中谷宇吉郎、湯川秀樹、岡潔、矢野健太郎、福井謙一、日髙敏隆の6人。科学者として一流であるばかりか、いずれも名文家としても知られる錚々たるメンバー…

岩田徹『一万円選書』

北国の本屋が起こした奇跡の物語 著者は、北海道砂川市のいわた書店の店主。町の小さな本屋が経営に四苦八苦する状況下、いわた書店も例外ではなく、危機的状況の中でいわた書店が編み出したのは〝一万円選書〟という仕組み。 一万円選書とは、客一人ひとり…

逢坂冬馬『同士少女よ敵を撃て』

独ソ戦下赤軍女性狙撃手たち 独ソ戦下、ソ連赤軍に編成された女性狙撃手たちが描かれている。 すさまじいまでの戦闘描写、狙撃のリアリティ、ディテールの深さが見事で第一級の物語であり、とにかく面白くて傑作である。 ドイツ軍によって村を焼かれ、親を殺…

池澤夏樹『また会う日まで』

(写真1 テーブルいっぱいに広げた連載531回分の切り抜き) 朝日新聞朝刊連載小説完結 2020年8月1日から朝日新聞朝刊に連載されてきた池澤夏樹作『また会う日まで』が1月31日付で完結した。1年半に及ぶ連載で、連載回数は531回だった。この…

『探訪 貨車駅舎』

古い貨車を駅舎にした駅巡り 鉄道写真で知られるレイルウエイズグラフィックの編著。だからだろうが、貴重な写真が多く、丁寧な編集が素晴らしい。B5判の大きな誌面に写真とイラストが豊富で、見ていて楽しい。 貨車駅舎とは、鉄道貨物で使用されていた古…

清水浩史『深夜航路』

午前0時からはじまる船旅 深夜航路とは、著者の定義によれば、深夜帯(午前0時から3時まで)に出航する定期航路のこと。このため、極端なところでは、苫小牧23時59分発八戸行のような22時台や23時台に出航する航路は含めていない。到着や寄港が深…

藪本晶子『絶滅危惧動作図鑑』

見かけなくなった動作集 うっかりすると〝絶滅危惧動物図鑑〟と早とちりしてしまうが、こちらは今は見られなくなった動作を集めたもの。 井戸水をくむ、薪を割る、火をおこす、洗濯板で洗う、カツオ節を削る、チャンネルを回す、お風呂をかき混ぜる、切符を…

中田ぷう『素晴らしきお菓子缶の世界』

菓子缶に魅入られたコレクション 世の中には様々な趣味があるものだ。これは菓子缶に魅入られた世界。 しかし、本書を読むと理解できる。とにかく様々な形があるものだし、美しいものが多いのである。 菓子缶とは、本来、しけては困るものや形が崩れてはいけ…

福井県立図書館編著『100万回死んだねこ』

覚え違いタイトル集 図書館の司書が、カウンターで利用者から問いかけられた問答集である。利用者はうろ覚えの記憶で本を探そうとするからこれが抱腹絶倒の面白さになっている。 そもそもは、館員同士の情報共有のために行っているものをウエブサイトで公開…

ショーン・バイセル『ブックセラーズ・ダイアリー』

スコットランドの古書店主の日記 スコットランドの古書店主の日記である。 毎日のネット注文数やら売上高、顧客数が記録され、従業員のこと来店した顧客のことなどが書かれているだけで、元々は備忘録として書かれたものなのだが、これが実に面白い。スコッ…

池澤夏樹『うつくしい列島』

自然科学紀行エッセイ もとより池澤は小説家だが、書評と自然科学に基づいた紀行エッセイは池澤の最も池澤らしい得意の分野ではないか。 2部から構成されていて、第1部「うつくしい列島」はナショナルジオグラフィック日本版に連載されたものが初出で、第…

芹沢央『神の悪手』

将棋を題材にした短編小説集 表題作など短編5編が収められている。 どれも面白かったが、印象深かったのは収録5編目の「恩返し」。すべてが将棋にまつわる物語なのだが、これは棋士ではなく駒師が主人公。異色の将棋世界が描かれている。 駒師とは、もとよ…

ローレンス・ブロック『殺し屋』

アメリカらしい小説 ケラーを主人公とする10話からなる連作短編集。 ケラーは、殺しを稼業とするニューヨーカー。マンハッタンの一番街に面し、イーストリヴァーやクイーンズボロ・ブリッジが見えるアパートメントに住んでいる。戦前から建っているアール・…

堀江敏幸+角田光代『私的読食録』

食と読書の案内 食にまつわるエピソードを小説やエッセイなどから拾って紹介している散文集。 月刊誌に堀江と角田が交互に書いた連載100回分が収録されている。1回分が文庫3ページと短く、どこで栞を挟んでもいいようで読みやすい。拾い読みしてもいい…

ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』

現代アメリカ文学の傑作 ブルックリンが舞台。そのブルックリンが豊穣な物語を編んでくれた。 マンハッタンの保険会社で働いていたネイサン・グラスは、停年を前に生まれ故郷のブルックリンに終の棲家とすべく戻ってきた。3歳のときに一家がブルックリンを離…

アンソニー・ホロヴィッツ『その裁きは死』

本格ミステリーの傑作 『メインテーマは殺人』に続いて探偵ホーソーンシリーズの第2弾である。本作も事件は難解で、第一級の傑作ミステリーである。 主人公は元刑事のダニエル・ホーソーン。ロンドン警視庁の顧問として難事件の捜査に当たっている。ホーソー…

不動まゆう『愛しの灯台100』

ほとばしる灯台への愛情 不動さんは、フリーペーパー『灯台どうだい?』の編集長。自費発行で無料配布している。テレビやラジオへの出演や新聞、雑誌への執筆でも知られ、灯台フォーラムの運営にも携わっており、その多くは灯台ファンを増やそうというもので…

ジェフリー・アーチャー『レンブラントをとり返せ』

新しい警察小説のシリーズ アーチャーの新作である。それも警察小説である。アーチャーに警察小説は初めてではないか。もっとも、アーチャー自身は「これは警察の物語ではない、これは警察官の物語である」と巻頭に一筆入れているが。 主人公は、ウィリアム・…

東海・近畿・中国・四国・九州

『旅する日曜美術館』 NHK日曜美術館制作班編による全2巻の下巻。 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、新たに美術館を訪ねた美術館紀行を加えて構成しており、本巻では東海・近畿・中国・四国・九州の36館が紹介されている。 この番組は好きで毎週欠…

NHK日曜美術館制作班編『旅する日曜美術館』

北海道・東北・関東・甲信越・北陸 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、改めて美術館を訪ねた美術館紀行で構成されている。 全2巻で構成されていて、上巻下巻とも第1巻第2巻とも特に断りはないが、本書は上巻にあたるようで、北海道・東北・関東・甲信越・…

梯久美子『サガレン』

樺太/サハリン境界を旅する サガレンとは、宮澤賢治が旅した時代の樺太の呼称の一つ。 この島は、実効支配した国によって樺太、サハリンなどと呼び名が変わってきていて、そのつど〝国境〟も動いてきた歴史があり、当然、敷設されていた鉄道においてもその版…

アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』

イギリス伝統のミステリー 第一級の傑作ミステリーである。 二つの意味で設定が秀逸だ。一つにはホームズ張りだということ。つまり、ホームズがいてワトソンがいるということ。探偵ホームズ役には、元刑事のダニエル・ホーソーン。ロンドン警視庁の顧問として…

『論語義疏』最古の写本公開

(写真1 会場に展示されていた『論語義疏』の写本) 慶應義塾図書館貴重書展示会 「古代中世日本人の読書」をテーマに丸善丸の内本店ギャラリーで開催されていて、慶應義塾図書館が所蔵する漢籍100点が出品されている。 注目されたのは初公開となった『…

宮本輝『灯台からの響き』

何を求めて灯台巡り 旧中山道板橋宿の仲宿商店街で中華そば屋を営んでいた牧野康平は、二人三脚で切り盛りしてきた妻の蘭子が2年前に亡くなると、一人では「まきの」の味は作れないといって休業してしまった。俺のはラーメンではなくてあくまでも中華そばだ…

『使える!用字用語辞典』

マスコミ用語担当者がつくった 国語辞典ほどの頻度はないが、用字用語辞典も座右に置いて日常的に使っている。もちろん言葉の意味を調べるためではなく、送り仮名や常用漢字などの、もっぱら確認のためである。 私が書く文章は、小説や詩などの創作ではなく…

高山羽根子『首里の馬』

(写真1 受賞作所収の「文藝春秋」9月号) 芥川賞受賞作 面白い。ただし、エピソードは奇抜。あまり考えすぎると難解になってしまう。しかし、話題はさらりと出てくるが、よくよく考えると意味は深長だ。読みやすいからどんどんと進むと陥穽にはまる。 未…

今野敏『棲月 隠蔽捜査7」

竜崎伸也 大森署署長最後の事件 本作は、竜崎伸也を主人公とする警察小説のシリーズ長編7作目。大森署署長としては最後の事件となった。実は、私自身は、竜崎が大森署を去って神奈川県警刑事部長に着任した『清明 隠蔽捜査8』はすでに読んでいたから、シリ…

絵本『がんばれ!あかい しゃしょうしゃ』

アメリカの絵本 遊びに来ていた孫を連れて行った本屋で、車掌車を描いた絵本を見つけた。海外の絵本を揃えたコーナーだったのだが、〝しゃしょうしゃ〟の文字が目に入った。手には取ったものの、買うかどうかについては多少の躊躇がなかったわけでもなかった…

K.スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』

アメリカの辞書編纂者の回顧 ウェブスター辞書は、アメリカの英語辞典。200年を超す歴史を有する国民的辞書で、発行部数は聖書に次ぐといわれるほど。徹底したアメリカ英語で知られる。 著者のコーリー・スタンパーは、版元のメリアム・ウェブスター社で約…