ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『3つの鍵』

(写真1 映画館で配布されていたチラシから引用)

それぞれの道

 ローマにある同じ高級アパートに3つの家族が住んでいる。
 3階に住む夫婦で裁判官という家族の息子が酔っ払い運転で女性をひき殺してしまう。父親は息子がこどもの頃から厳格で、このたびの事故でも情状酌量の余地はないとして突っぱねる。息子は5年の刑に服した。
 2階に住むのは夫が長期出張のため一人で出産する羽目に。夫の兄が留守中遊びに来て泊まっていった。
 1階に住む夫婦は留守するため女の子を向かいの部屋に住む老人に預ける。老人は痴呆症だったようで、老人と娘は森に出かけて行方不明になってしまう。
 ちょっとした齟齬が、それぞれの瑕疵となって広がっていく。正しい選択の余地はなかったのか。どの時点にあったのか。
 3つの家族の物語がまったく別個に進みながらどこかで絡み合う。それぞれの道を探す鍵はどこにあったのか。
 映画はたわいものない物語なら終始緊迫して進んでいる。
 刑期を終えた息子が田舎に住んで養蜂家となって身を立てている。結婚してこどももできている。母親が探して訪ねていくが、息子は相手にしないし、赤ちゃんを抱かしてもくれない。
 ラストシーンに救われた。息子はいつしか父親の真意を知り、やがて確執も溶けて、次に母親が訪ねていくと、温かく迎えてくれた。
 巨匠ナンニ・モレッティ監督・脚本作品。