(写真1 私家版『photo essay 撮り歩き』
市井の観察
なかなかいい思いつきなのではないか。傘寿を控えてカメラを持って市井を観察して歩く。面白いもの、ふと気になることを見つけては写真に撮りエッセイにする。それをこつこつ貯めていっては100本となったところで1冊の本にしたのが本書である。老化防止にも役だったに違いない。
読んで感じたことは、フットワークが軽く、目の付けどころもいいということ。身の回りに題材を求めて100本はなかなか容易なことではない。しかも、新聞記者だったから、観察力が優れているし、批評的精神もあってうなずかされることたびたびだった。
著者は仙台市在住。当然のことながら仙台のことが多く取り上げられており、仙台の今昔もわかって興味深い。
かつて住んでいた場所を訪ねては、変貌著しく、町名もすっかり変わってしまったと嘆息しつつも、その一角にかつての地名のままの町内会の掲示板を見つけては懐旧の情を深くしている。
新聞記者らしいと言えば、駅構内の通行について、左側通行、右側通行とあるのは、左側通行とするのがそもそもは正しいらしい。現在の道路交通法の前身、昭和22年施行の道路交通取締法では、歩行者、車ともに左だったといい、それが2年後の法改正で歩行者は右、自動車は左の対面交通になったのだが、その時の例外規定で「鉄道駅構内の歩行者は左側を通行する」となったものらしい。
私は鉄道ファンだから随分とあちこちの鉄道駅を利用しているが、たしかに左側通行とするところが多いが、これは施設管理者が勝手に決めているものだとばかり理解していて、法に規定があることまでは知らなかった。
本書はB5判。見開き2ページに1本のエッセイがレイアウトされており、写真はカラーだし、文章は新聞記者の書くものだからコンパクトになっていてとても読みやすい。
また、本書は自分でレイアウトをしプリントまでもしたようで、製本だけは製本屋に依頼したとのことだが、デジカメにパソコンとプリンターを駆使したいかにもデジタル時代の私家出版と言えるようだ。
なお、著者は私の実兄である。
(写真2 見開き2ページにカラー写真のレイアウト)