ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

函館の「箱庭カフェ」

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(写真1 店舗玄関の様子)

まるで〝ふるカフェ〟の世界

 函館市電に乗っていたら十字街電停付近で古い商店のたたずまいにカフェの文字がチラッと見えた。それで、気になって帰途電車を降りて確認したところ、これはもうまるで〝ふるフェ〟の世界ではないか。
 「箱庭カフェ」と案内があり、店内に入ると、はこだて工芸社の店舗で、ガラスや繊維などの工芸品が一杯に展示されており、奥の一角が箱庭に面してカフェになっている。函館市末広町所在。
 建物は、昭和10年(1935年)の建築で、酒問屋として繁盛した梅津商店だったもの。茨城県常陸太田市出身の梅津福次郎が創業したもので、梅津は艱難辛苦の上財を成し、函館では高校の土地を寄付したり、出身地では役場の建物を寄贈したりしたという。

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(写真2 はこだて工芸社店内。往年の繁栄を偲ばせまるでふるカフェの世界)

 建物は、ほぼ往時のままで残されており、大金庫がでんと構えられていて繁盛ぶりが偲ばれるし、古き良き時代の函館が今に伝えられている。たびたび火災に遭っており現在残っている建物は四代目だという。函館は火災の多いところだったのだ。だから、函館の街路樹は火に強いナナカマドになっているとどこかで聞いたことがある。

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(写真3 箱庭カフェのコーナー)

 箱庭に面したカフェはガラス張りになっていてとても明るい。二人掛け用のテーブルと倚子が6卓ほど。小さなスペースだがとても落ち着く。人気のカフェのようで、地元客がちょくちょくと顔を出している。
 コーヒーを頼んだがこれがびっくり。陶器のカップが二段になっている。上段がドリッパーになっていて、蓋を取ってお湯を注ぐと下段のカップに抽出されるという具合。蓋は上段の受け皿になる。よく工夫してある。
 そして何よりも肝心のコーヒーの味が素晴らしい。淹れたての香りがあるし、濃いのに苦味は強くなく私の好みの味と香りだった。また、何ごとによらず熱いもの好きとしては熱いのもうれしかった。このカップが欲しいと思ったら、まだ商品にしていないとのことだった。
 旅に出て、ふらっと入ったカフェでうまいコーヒーをいただく。いい喫茶店のある街はいい街だというのが持論であり、至福の時が過ごせる。
 なお、蛇足かもしれないが、ふるカフェとは、NHKテレビで放送されていた番組のこと。

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(写真4 箱庭カフェの二段になったコーヒーカップ)