ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

2021-01-01から1年間の記事一覧

映画『ノマドランド』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 自由を求めて流浪 ノマドとは、放浪者の意。アメリカでは、リーマンショックによる経済危機から生活破綻し住宅を失って車上生活を余儀なくされる高齢者が増えていた。彼らは自動車で寝起きし働き口を求め…

あやしい絵展

(写真1 会場の様子) 女は怖い 竹橋の東京国立近代美術館で開かれている。 おどろおどろして不気味な絵、異界や魔界を描いた絵、中には女の裸体に虫が這っている絵があって気持ち悪くてじんま疹が出てきそうな絵もあって正視しかねるような絵もあった。 圧…

野岩鉄道会津鬼怒川線

(写真1 新藤原駅ホーム。右1番線は東武鉄道の折り返し列車で、左は東武線から野岩線、会津線、JR線と直通する会津若松行き特急リバティ会津111号) 首都圏と会津を結ぶ 野岩(やがん)鉄道は、東武鬼怒川線の新藤原と会津鉄道の会津高原尾瀬口を結ん…

SL大樹と車掌車

(写真1 下今市駅4番線に到着したSL大樹2号) 東武鉄道のC11325とヨ8709 SL大樹とは、東武鉄道が鬼怒川線で運転している蒸気機関車の牽引による観光列車。大樹には必ず車掌車が連結されおり、この車掌車にはATSなど運行安全システムが搭…

ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』

現代アメリカ文学の傑作 ブルックリンが舞台。そのブルックリンが豊穣な物語を編んでくれた。 マンハッタンの保険会社で働いていたネイサン・グラスは、停年を前に生まれ故郷のブルックリンに終の棲家とすべく戻ってきた。3歳のときに一家がブルックリンを離…

ピアノソナタ

(写真1 ピアノ曲が収録されているCD集) 音楽の好みにも変化 このごろは家にいる時間が長いから、音楽もよく聴いている。 ただ、私は不器用で、音楽を聴きながら本を読んだり、音楽を聴きながら原稿を書いたりするということができない。BGMのつもり…

映画『ミナリ』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用) 韓国系アメリカ映画 韓国人の移民家族が、カリフォルニアから新天地を求めて南部のアーカンソー州に越してくる。家族は、夫のジェイコブ、妻のモ二カ、娘アン、息子デビッドの4人。時代は、テレビニュー…

宮古から田老そして島越へ

(写真1 防潮堤の上から見た田老の街) 大震災から10年目の被災地へ③ 宮古では1泊し、翌日さらに三陸鉄道(三鉄)を北上し、田老から島越へと向かった。前日の雨はやまず、かえって風雨は強まっている。しかも寒い。 (参考1 被災した工場には〝全員無…

陸前高田から大船渡そして宮古へ

(写真1 大船渡線BRTと三陸鉄道が接続する盛駅) 大震災から10年目の被災地へ② 陸前高田からは再び大船渡線BRTで大船渡へ向かった。雨は強まるこそすれ弱まる気配はまったくない。車窓から写真を撮ろうにも曇ってうまくいかない。 (写真2 風光明…

大震災から10年目の被災地へ①

(写真1 復興で生まれ変わった陸前高田の新市街) 岩手県沿岸部を北上 2011年3月11日に発生した東日本大震災からちょうど10年目。昨年こそコロナの影響で来られなかったが、震災直後から私は毎年欠かさず被災地を訪れてきた。今年もコロナは収まっ…

映画『私は確信する』

(写真1 映画館に掲示されてあったポスターから引用) サスペンスな裁判劇 主婦スザンヌ・ヴィキエが忽然と失踪した。夫と三人の子どもは残したままだった。遺体は発見されなかったし、決め手となる証拠も発見されなかったのだが、周囲の証言だけを元に夫ジ…

津軽線三厩駅

シリーズ 行き止まりの終着駅 (写真1 津軽半島最北端津軽線三厩駅=2017年9月4日) 色濃く漂う最果ての旅情 太宰治も『津軽』で「この先に道はない。だぼんと海に落ちるだけだ」と書いていたように、龍飛への道は一本道で、龍飛へ行こうとすると鉄道…

越美北線九頭竜湖駅

シリーズ 行き止まりの終着駅 (写真1 越美北線の終点九頭竜湖駅=1993年6月27日) 越美国境越えられず 鉄道の路線名は、鉄道の成り立ちを背景に決められる場合が多い。釜石線や長崎本線などのように終点の駅名を取ることも多いし、起点終点の旧国名…

男鹿線男鹿駅

シリーズ 行き止まりの終着駅 (写真1 初めて降り立った1995年の男鹿駅) 入道埼への最寄り駅 私はそもそも岬が好きで、全国の岬・灯台をこつこつと訪ね歩いてきた。 そんな折、宮脇俊三さんの名著『時刻表2万キロ』を読んで、全国の鉄道を踏破するなど…

アンソニー・ホロヴィッツ『その裁きは死』

本格ミステリーの傑作 『メインテーマは殺人』に続いて探偵ホーソーンシリーズの第2弾である。本作も事件は難解で、第一級の傑作ミステリーである。 主人公は元刑事のダニエル・ホーソーン。ロンドン警視庁の顧問として難事件の捜査に当たっている。ホーソー…

静岡県立美術館

(写真1 ロダン<カレーの市民>の展示) 素晴らしいロダンのコレクション 美術が好きで、美術館にはしばしば足を運ぶ。旅行などで地方へ出かけたときには、その地の美術館を見学する。時間が許す限り駆け足でめぐることもあれば、あらかじめ美術館を旅程に組…

三保の松原の清水灯台

(写真1 地元では三保灯台と呼ばれている清水灯台の美しい姿) 八角形の美しい灯台 通称三保灯台と呼ばれる清水灯台は、三保半島の東端に位置する。一帯は、世界遺産三保の松原で知られる景勝地であり、灯台は松林の中にたたずんでいる。 清水灯台へは、東…

笠間日動美術館

(写真1 笠間日動美術館外観) 充実したコレクション 銀座の日動画廊の創業者である長谷川仁・林子夫妻が縁の笠間市に建てた私設の美術館。日本を代表する画商だけにさすがに素晴らしいコレクションで知られる。 笠間城跡の山麓にあり、市街中心の笠間稲荷神…

笠間にて

(写真1 日本三大稲荷の笠間稲荷神社) 笠間稲荷の門前町 冬の日差しを選んで茨城県の笠間を訪れた。笠間は、茨城県の中部、水戸の西に位置し、栃木県境に近い。笠間稲荷の門前町として栄え、笠間焼で知られる陶器の町でもある。古くは笠間藩の城下町でもあ…

日高本線と様似駅

シリーズ 駅 情景 (写真1 日高本線の終点様似駅) さようなら様似駅 災害に見舞われて不通になっていた路線が復旧されずにそのまま廃線になるほど腹立たしくも悲しいことはない。 高千穂鉄道がそうだったし、岩泉線も結局そうなった。災害から7年を経て復…

春を見つけた

(写真1 濃い紅色をした寒梅) 梅と椿咲く まことに寒い日が続いている。今年はことのほか寒いのではないか。もっとも、毎年同じように感じてはいるが。 そうした中で、散歩の途中で春を見つけた。一つは梅の花。ちょっといくら何でも早すぎると思ったが、…

若桜鉄道と若桜駅

特集 私の好きな鉄道車窓風景10選 (写真1 若桜鉄道の終点若桜駅) 深い叙情に惹かれる 日本の鉄道には約800もの路線があるが、途中の車窓風景が楽しみというほかに終着駅が魅力という路線もある。 その一つが若桜鉄道と若桜駅。もっとも、有名な観光…

不動まゆう『愛しの灯台100』

ほとばしる灯台への愛情 不動さんは、フリーペーパー『灯台どうだい?』の編集長。自費発行で無料配布している。テレビやラジオへの出演や新聞、雑誌への執筆でも知られ、灯台フォーラムの運営にも携わっており、その多くは灯台ファンを増やそうというもので…

寺井力三郎展

(写真1 寺井力三郎<廻送列車>=会場で販売されていた絵はがきから引用) 暮らしに息づく絵画 埼玉県加須市のサトヱ記念21世紀美術館で開催されている。 寺井は埼玉県羽生市在住。1930年生まれで、卒寿記念とある。代表作がそろっており画業の全体像を…

サトヱ記念21世紀美術館

(写真1 彫刻が立ち並ぶ美術館の外観) 彫刻と絵画と庭園と 埼玉県加須市所在。東武伊勢崎線花崎駅から徒歩約20分。平成国際大学と道を隔てて向かい合っている。同大はスポーツで鳴らす埼玉栄高校や花咲徳栄高校などを擁する佐藤栄学園の運営で、美術館は…

ジェフリー・アーチャー『レンブラントをとり返せ』

新しい警察小説のシリーズ アーチャーの新作である。それも警察小説である。アーチャーに警察小説は初めてではないか。もっとも、アーチャー自身は「これは警察の物語ではない、これは警察官の物語である」と巻頭に一筆入れているが。 主人公は、ウィリアム・…

春遠からじ

(写真1 うっすらと赤く染まりだした冬のあけぼの) 冬来たりなば 冬来たりなば春遠からじ。 イギリスのロマン派詩人シェリーの詩の一節で、辛いことがあっても耐えていればいずれは幸せがやってくるというのが本来の意味らしいが、寒く厳しいとはいっても…

東海・近畿・中国・四国・九州

『旅する日曜美術館』 NHK日曜美術館制作班編による全2巻の下巻。 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、新たに美術館を訪ねた美術館紀行を加えて構成しており、本巻では東海・近畿・中国・四国・九州の36館が紹介されている。 この番組は好きで毎週欠…

NHK日曜美術館制作班編『旅する日曜美術館』

北海道・東北・関東・甲信越・北陸 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、改めて美術館を訪ねた美術館紀行で構成されている。 全2巻で構成されていて、上巻下巻とも第1巻第2巻とも特に断りはないが、本書は上巻にあたるようで、北海道・東北・関東・甲信越・…

映画『燃ゆる女の肖像』

(写真1 映画館に掲示されてあったポスター) 素晴らしい映画言語と映画美 美しい映像。それが独特の映画言語を表現している。会話は少ない。音楽も少ない。登場人物も少ない。ほとんど女性ばかり。しかしそれでも豊穣な物語を紡いでいる。カメラが少ない会…