ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

若桜鉄道と若桜駅

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特集 私の好きな鉄道車窓風景10選

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(写真1 若桜鉄道の終点若桜駅)

深い叙情に惹かれる

 日本の鉄道には約800もの路線があるが、途中の車窓風景が楽しみというほかに終着駅が魅力という路線もある。
 その一つが若桜鉄道と若桜駅。もっとも、有名な観光地があるとかそういうことでも決してない。ただ、静かな佇まいが魅力的なのである。
 若桜鉄道は、因美線の郡家(こおげ)から若桜を結ぶ第三セクター鉄道。旧国鉄の若桜線で、全長20キロに満たなく、駅数もわずかに9を数えるだけ。

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(写真2 郡家駅で発車を待つ若桜行き列車。1両のディーゼル)

 おおかたの列車は鳥取始発で、因美線を経由して郡家から若桜線に入る。このあたりから鳥取平野を離れ、中国山地へと分け入っていく。
 旧国名なら因幡の国で、途中に因幡船岡という駅があって旧国名を教えてくれる。変化の少ない車窓が続くが、八東(はっとう)駅では構内に緩急車が留置されているのを見ることができる。一般の旅行客なら気にもとめないだろうが、鉄道ファンそれも車掌車好きには貴重なシャッターチャンスである。私はここに緩急車があることはあらかじめ知っていてカメラを構えていた。

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(写真3 八東駅に留置されている緩急車ワフ35597)

 ちなみに緩急車とは、荷物を積むスペースのある車掌車のことで、車掌車とは別に区分されており、形式略号も車掌車のヨとは別にワフがふられている。八東駅の緩急車はワフ35000型で、車番はワフ35597。なお、ここ八東駅は路線中唯一の交換可能駅である。
 沿線は林業が盛んなことが見て取れ、丹比(たんぴ)では駅前が木材の集荷場になっていた。この鉄道も、開業からしばらくは林業の利用が盛んだったらしい。
 そうこうして終点若桜到着。郡家から30分、鳥取からでも1時間弱のところ。鳥取の通勤圏に十分入っているのであろう。

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(写真4 若桜の街路案内)

 木造の駅舎があり、まっすぐに通りが延びている。角に街路案内があり、かわいらしい赤鬼が抱きついている。ここは古くは若桜鬼ヶ城の城下町だったのである。また、江戸時代には鳥取と姫路を結ぶ若狭街道と伊勢街道の宿場町として栄えてきたのである。
 街路案内にはカリヤ通りの案内もあったが、カリヤ(仮屋)とは若桜独特の街路のことで、通りと並行して小川が流れている。豪雪対策などのための用水で、今日では宿場町の風情を色濃くしている。

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(写真5 旅情が深くなるような街路)

 落ち着いたたたずまいの通りがあって、裏通りなど旅情の深くなる様子で、時間が許せばいつまでもそぞろ歩いていたくなるような街だ。通りには駄菓子屋などもあって思わず手を出したくなるようだった。

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(写真6 駄菓子屋の店先)

 実は、私は、この若桜駅には1999年4月24日と2018年10月4日の二回降り立ったことがあるのだが、20年を経て街の様子にまったく変わりのないことに驚くと同時にうれしくもなっていつまでも取っておきたいような街だと考えたものだった。

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(写真7 蒸気機関車が留置され、転車台もある若桜駅構内)

 若桜駅は、いかにも終着駅らしく小さな鉄道ながら大きな構内を持っている。蒸気機関車C12 167号車も留置されている。企画運転のものであろう。転車台もある。
 また、奥の車庫には車掌車も格納されていた。ヨ8000型のヨ8627で、ピカピカに磨かれておりいつでも動くように動態保存されていた。イベントの時などにはSLに連結して運転されるのだろうと思われた。

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(写真8 若桜駅に動態保存されている車掌車ヨ8627)

<路線概要>
起点/郡家駅
終点/若桜駅
駅数/9駅
路線距離/19.2キロ
開業/1930年1月20日
運営/若桜鉄道(1987年10月14日第三セクターに転換)