シリーズ 駅 情景
(写真1 日高本線の終点様似駅)
さようなら様似駅
災害に見舞われて不通になっていた路線が復旧されずにそのまま廃線になるほど腹立たしくも悲しいことはない。
高千穂鉄道がそうだったし、岩泉線も結局そうなった。災害から7年を経て復旧した名松線は希有な例だろう。
日高本線は、室蘭本線の苫小牧から様似を結ぶ路線。全長146.5キロ。ところが、2015年の高波被害で鵡川-様似間が運休となっていた。この間はバス輸送に代替されていたのだが、そもそもこの区間はJR北海道にとって「単独で維持困難な線区」にあげられており、これまで満足な復旧工事も行われてこなかった。結局、本年2021年4月1日付で廃止されることとなってしまった。廃線区間は116.0キロに上り、全区間の約8割にも達する。
日高本線にはこれまでに1988年10月1日と2010年2月11日の二度乗ったことがある。
2010年に乗車した際には次のような記録がある。
苫小牧10時17分発様似行に乗車。ディーゼルの1両ワンマン列車。
休日の下り列車にも関わらずすべてのボックスが埋まっている。観光客や鉄道ファンらしき姿は見えない。
(写真2 太平洋に注ぐ川は結氷している)
右窓に太平洋を見ながら日高地方をひたすら走る。鵡川、沙流川、厚別川などと日高山脈から流れてきた川が太平洋にそそいでいるが、いずれも川面は氷結している。
うす雲を通す日差しは弱々しく、窓外はもちろん雪景色だがさしたる積雪量でもなく、枯れた地表が浮き出ていてそれだけに茫漠たる風景がいやます。
(写真3 冬でも屋外に放たれている馬)
新冠のあたりから沿線に牧場が目立って増えてきた。静内、浦河などと競走馬の名だたる産地が続く。馬は冬でも屋外に放たれているらしく、雪の中に静かにたたずんでいる。
(写真4 様似に到着した列車)
様似13時35分着。日高本線の終点で、苫小牧から146.5キロ、2時間18分。札幌からなら普通列車で約5時間の乗車だった。片側1線のホームがある。
初めて降り立った1988年の折には、駅舎はスーパーも兼ねていた。
(写真5 かつてはスーパーも入っていた様似駅の駅舎)
結局、様似で降りた乗客はたった4人だけで、それも苫小牧から通しで乗ってきたのは2人のみだった。駅前は、休日のせいばかりではないだろう、実に閑散としていた。
様似駅に降り立ったのは二度だが、いずれも襟裳岬を訪ねるため。駅前から広尾行き日勝線のJRバスが出ており、途中、中間地点で襟裳岬に停車する。
(写真6 襟裳岬灯台)