ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

大震災から10年目の被災地へ①

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(写真1 復興で生まれ変わった陸前高田の新市街)

岩手県沿岸部を北上

 2011年3月11日に発生した東日本大震災からちょうど10年目。昨年こそコロナの影響で来られなかったが、震災直後から私は毎年欠かさず被災地を訪れてきた。今年もコロナは収まってはいないが、10年目のことだし、復興はどのように進んでいるのか気になって、3月13日から15日まで無理をして出かけてきた。
 現地へは鉄道で入った。例年はレンタカーでつぶさに巡っていたが、今年はすべて鉄道を利用した。車窓から眺めただけのこと、何ほどのこともないのだが、できるだけ途中下車を繰り返して不足を補った。
 東北新幹線を一関で大船渡線に乗り換え。北上山地の南端を横断する路線で、初め、一関-気仙沼間62.0キロは山間部を走るので震災の影響は少なかったが、気仙沼から先、盛間43.7キロは沿岸部のため甚大な被害となった。
 気仙沼駅そのものは高台にあるため津波被害は免れた。このため、一関-気仙沼間は一般の鉄道が走っているが、気仙沼-盛間はBRT(バス高速輸送システム)による運行である。

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(写真2 気仙沼駅で発車を待つ盛行きBRTバス)

 気仙沼駅の構造は合理的で、列車からバスへ平面で乗り換えができる。気仙沼で降りてしまった客が多かったようで、2両のディーゼルカーで来たのにバスに乗り継いだ客は半分にも満たなかった。なお、この日は翌日も含めてあいにくの雨で、雨風が強く、晴れ男も勝てないほどの台風並みの低気圧だった。

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(参考1 鹿折唐桑駅前に打ち上げられた貨物船=2011年)

 気仙沼を出るとすぐに海岸沿いとなった。鹿折唐桑はきれいに整備されていた。震災直後には、この駅前に数百トンもの大型貨物船が打ち上げられていたものだった。駅前は海岸から500メートルも離れているというのに。
 鹿折唐桑を出るといったん山間部へと入りやがて陸前高田。大きな市街で、ほぼ壊滅する被害に見舞われたが、復興工事は随分と進んでいた。

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(参考2 かさ上げのための土を運ぶ壮大なコンベアが活躍した)

  ここの復興工事は極めて特徴的で、広大な旧市街地で軒並み土地のかさ上げを行った。このため、町外れの山を一つ切り崩し、かさ上げのための土を壮大に張り巡られたベルトコンベアで数キロにも渡って運んだ。
 新しい市街地の中心では、かさ上げは14メートルにも及んだということで、町の中心に立つと、ここがかさ上げされた場所だとは気がつかない。それほど広大なのである。

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(写真3 BRTの陸前高田駅)

 中心には、BRTの陸前高田駅や商店が次々と建ってきていた。また、周辺には文化会館なども建設され、次第に都市の骨格が姿を見せ始めていた。市役所も3月中には完成するということである。
 かさ上げされた土地の縁に立つと、かつての地面は谷底のようにも見えて、かさ上げされた土地の高さが実感できるようだった。

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(写真4 遺構となっているかつての商業ビルはかさ上げされた土地とちょうど同じ高さだった)

そこには鉄骨のビルが1棟だけ残っていて、その高さはちょうどかさあげの高さと並んで見えた。このビルは、個人の所有になる商店のようで、どうやら所有者は遺構として残すつもりなのだろう。

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(写真5 東日本大震災津波伝承館の展示の様子)

 また、海岸は津波復興祈念公園として整備されていて、〝奇跡の一本松〟がその象徴のようになっていたし、東日本大震災津波伝承館が完成していて、多くの参観者が訪れていた。

 陸前高田は、海に面して扇状地のように開けてところで、それだけに津波被害は広大なものとなった。市街地は壊滅した。この復興にあたって、街全体の土地をかさ上げしようとしたので随分と時間がかかった。津波被害に遭った沿岸の町々ではどこもかさ上げを行ったが、ここほど大規模になったところはない。
 しかし、土地のかさ上げが一定程度済むと、町の整備は一気に進んだ。道路やインフラの建設と区画整理がほぼ終了した様子で、駅や病院、学校などが建設され、新しい町が見えてきた。

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(参考3 奇跡の一本松=2011年)