ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

東海・近畿・中国・四国・九州

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『旅する日曜美術館』

 NHK日曜美術館制作班編による全2巻の下巻。
 テレビで取り上げた番組を再構成しながら、新たに美術館を訪ねた美術館紀行を加えて構成しており、本巻では東海・近畿・中国・四国・九州の36館が紹介されている。
 この番組は好きで毎週欠かさず見てきたつもりだったが、中には見逃していた週もあったようで、改めて興味深く読んだ。
 注目したのは、滋賀県のMIHO MUSEUM。番組では伊藤若冲の<象と鯨図屏風>(1797年)と与謝蕪村の<銀地山水図屏風>(1782年)を取りあげている。
 とくに興味深かったのは美術館紀行の項。「ミホミュージアムへ出かけてみて、まず気がつくことは、この美術館が、ふつうならあり得ないような場所に建設されているということである」とし、「近くに観光地があって人が集まりそうだとか、郊外だが交通の便が比較的いいとか、文化的な施設が集まっていて立ち寄りやすいとか、およそ美術館を建てる時に考えそうな観点からは超絶している」としている。アクセス紹介にJR琵琶湖線石山駅からバス約50分とあってなるほど不便そうだ。
 しかし本書は言葉足らずで、だれがいつ建てたのかといった記述がない。調べてみたら、宗教法人の運営で、1997年の開館とのこと。私設の美術館で重文級のコレクションが多数あるようですごいものだ。
 この美術館にはかねて訪ねてみたいものだと念願していた。それはここにある重文の曜変天目茶碗が見たかったからだが、本書ではこれに関する記述はなかった。紙幅の都合があるからだろうが、残念だった。
 旅先では、時間が許せば美術館を訪ねることを楽しみしている。美術館にはそこでしか見られない作品があるからで、とくに地方では美術館に限らず書店や図書館などもそうで、こうして地元に縁のある作家や芸術家を見いだすこともある。
  これまでにも随分とたくさんの美術館を見学してきていて、本書で取りあげられた美術館も少なくない。しかし、まだまだ行ったことのない美術館も多くて、いずれ訪ねてみたいものだと思ったものだった。

 NHKには、10数年前にもなるか、かつて『NHK世界美術館紀行』というシリーズがあった。テレビで放送された番組を再編集したものだが、これからも、世界の、日本の美術館を積極的に紹介してほしいものだ。新しい美術館ができているし、コレクションも変化しているし、新鮮味が失われていることはないのではないか。
(NHK出版刊)