ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

Osaka Metro全線に乗る!②

全国全鉄道全路線全二周への旅

f:id:shashosha70:20211027175015j:plain

(写真1 Osaka Metro1日乗車券=10月13日と14日の2日分)

市営から民営化に転換

 Osaka Metro8路線。1日目は午後からのスタートだったので乗ったのは4路線のみ。残る半分の4路線に乗る。しかし、1日目で長い路線である御堂筋線と谷町線を終わらせておいたので2日目は楽なはず。
 四つ橋線(西梅田-住之江公園11.8キロ) 2日目は四つ橋線からスタート。起点の西梅田駅は梅田の地下街にあり、御堂筋線梅田駅、谷町線東梅田駅とは同じ地下街で結ばれており、地下鉄としても乗換駅の扱い。阪神の大阪梅田駅に近い。

f:id:shashosha70:20211027175053j:plain

(写真2 住之江公園駅地上出入口)

 西梅田8時20分発。通勤のピークを過ぎているからか電車は空いている。肥後橋、本町、なんばと続き、御堂筋線のバイパスの路線配置だ。大国町で御堂筋線と同じホームに相対した。北加賀屋というまるで居酒屋か旅館のような名前の駅を過ぎると終点住之江公園到着。8時40分。駅のそばには競艇場があった。連絡通路で結ばれている。

f:id:shashosha70:20211027175201j:plain

(写真3 住之江公園で発車を待つニュートラム)

 南港ポートタウン線(コスモスクエア-住之江公園7.9キロ) 愛称ニュートラム。AGT路線(案内軌条式鉄道)であり、地下鉄路線ではないが、同じ大阪市高速電気軌道の経営で1日乗車券の適用範囲でもあり、地下鉄路線との連絡も良くそのまま乗り継いだ。無人運転。
 住之江公園8時52分発。高架路線だからとても見晴らしがいい。沿海部の工場地帯という様相で、遠く南港大橋の赤い橋脚が見えた。南港大橋は、わが国の橋梁の歴史上技術的に重要な鋼橋だった。

f:id:shashosha70:20211027175246j:plain

(写真4 たびたび反対方向の列車とのすれ違い)

 たびたび反対方向の列車とすれ違う。運行ダイヤが緊密なのであろう。中ふ頭の手前では右窓にインテックス大阪が見えた。大きな国際展示場で、この会場で国際的な展示会を開催したことがあり、たびたび利用した。

f:id:shashosha70:20211027175331j:plain

(写真5 コスモスクエア駅1番線停車中の中央線列車)

 中央線(コスモスクエア-長田17.9キロ) そうこうしてコスモスクエア到着。9時10分。 エスカレータで地下に降りればそのまま地下鉄中央線。9時17分の発車。学研奈良登美ヶ丘行きとなっており、長田からそのまま近鉄けいはんな線に直通運転されている。

f:id:shashosha70:20211027175440j:plain

(写真6 標準軌の車両でやや広い)

 車両も近鉄のもので標準軌だから車内はやや広い。ちなみにOsaka Metroはすべて軌間1435ミリの標準軌で、御堂筋線はじめ5路線が第三軌条方式となっている。
 コスモスクエアを出ると大阪港、朝潮橋、弁天町、九条間と続く。この区間が地上区間で、実に4駅間もが地上を走っており、弁天町では接続するJR環状線の駅のさらに上に地下鉄駅があるという、ある種珍妙な構造となっている。なお、JRの高架下には交通科学博物館があったが、現在は閉鎖され京都鉄道博物館に継承された。
 中央線は、大阪中心部を東西に横断する路線で、このため阿波座=千日前線、本町=四つ橋線・御堂筋線、堺筋本町=堺筋線、谷町四丁目=谷町線、森ノ宮=長堀鶴見緑地線、緑橋=今里筋線と次々と交差しており、すべての路線と乗り換えが出来る。

f:id:shashosha70:20211027175526j:plain

(写真7 長田駅地上出入口)

 そうこうして長田着。9時46分。地上は国道308号線長田東交差点となっていた。9時59分発で折り返し、森ノ宮まで戻った。

f:id:shashosha70:20211027175627j:plain

(写真8 門真南駅地上出入口)

 長堀鶴見緑地線(大正-門真南15.0キロ) ここで長堀鶴見緑地線に乗り換え。環状線・片町線の京橋を経て門真南へ。門真市所在。駅前には大きなドームがあった。ラクタブドームといい、多目的アリーナらしい。

f:id:shashosha70:20211027175907j:plain

(写真9 大正行き列車)

 10時50分発に乗車。列車は鉄輪式リニアモーター方式である。門真南はOsaka Metroで最も東に位置し、発車すると京橋まで南西へ向かい、その後、森ノ宮、玉造などと南下し、再び西へと進み心斎橋などを経て大正へと至る。11時21分到着。地上に出るとJR環状線の大正駅。

f:id:shashosha70:20211027180004j:plain

(写真10 大正駅地上出入口。この後ろ側がJRの大正駅)

 堺筋線(天神橋筋六丁目-天下茶屋8.1キロ) すぐに折り返し長堀橋を経てまずは天下茶屋へ。

f:id:shashosha70:20211027180050j:plain

(写真11 堺筋線・南海本線の天下茶屋駅)

f:id:shashosha70:20211027180307j:plain

(写真12 天下茶屋駅の発車表示。阪急の高槻市、北千里などと表示されている)

 天下茶屋は南海本線と共用駅。堺筋線は御堂筋線の東側を走る路線で、12時28分の発車。北浜などを経由して天神橋筋六丁目へと至り、阪急の千里線、京都本線へと直通している。路線の全長が8.1キロとOsaka Metro中最も短い路線。10駅しかない。

f:id:shashosha70:20211027180349j:plain

(写真13 天神橋筋の交差点)

f:id:shashosha70:20211027180437j:plain

(写真14 天神橋筋商店街)

 天神橋筋六丁目は天神橋筋の交差点にある。通称〝天六〟。12時45分着。天神橋筋商店街は、長さが一直線に2.6キロもあり、日本一長い商店街と言われる。
 2日間に渡ったがこれでOsaka Metro8路線を完乗。
 1日目が4路線5時間20分、2日目は4路線+ニュートラムで4時間25分、合計すると9時間45分だった。乗換回数は22回で、1日目は長い路線が多かったので5時間を越えた。当初計画では10時間07分と読んでいたから、24分の短縮となった。2日間に渡る乗り継ぎでこれは驚異的精度ではないか。
 商店街でゆったりと昼食を取ったことはいうまでもない。
 なお、Osaka Metroに乗車して気がついたこと。
 ・特に御堂筋線だが、着駅が近づくと車内をガタガタと歩く人が目立つ。乗車した駅と降車したい駅とでは車両の位置が変わるからであろう。しかし、これは乗車駅で降車駅の車両号車をあらかじめ選んでおけばいいこと。混んだ車内でも移動している人がいることには驚く。
 ・駅構内のトイレの場所はわかりやすい。イラストが大きく掲示してある。しかし、ここで「ようおこし」と言うのは果たして大阪弁なのだろうか。関西弁については不案内だが、どうも京都弁に近いニュアンスのように思えるが。

f:id:shashosha70:20211027180652j:plain

(写真15 地下鉄構内のトイレ案内)  

(2021年10月14日) 

 

Osaka Metro全線に乗る!①

全国全鉄道全路線全二周への旅

f:id:shashosha70:20211027102105j:plain

(写真1 Osaka Metro地下鉄路線図=同社ホームページから引用)

8路線129.9キロ

 地下鉄全線を乗りつぶす旅も名古屋、京都と片付けていよいよ大阪へ。宿泊地の名古屋から早朝京都に移動し、午前中には京都を終わらせすぐに大阪に来た。
 大阪の地下鉄は、2018年に公営企業である大阪市交通局による大阪市営から民営化し、大阪市高速電気軌道の運行によるOsaka Metroへと転換された。東京が公団から東京メトロへと民営化されたことに倣ったものであろう。なお、正式の愛称名をローマ字でOsaka Metroとしたのは国際化を念頭に置いたもので、大阪メトロは公式のものではないそうである。
 Osaka Metroは、8路線129.9キロ、駅数100。大きな地下鉄路線網である。大雑把にはJR大阪環状線の内側に集中している。なお、経営母体である大阪市高速電気軌道には地下鉄路線ではないが、AGT路線であるニュートラムも含まれる。
 8路線もあると、どの経路で乗るかなかなか難しいところもあるが、特に距離の長い御堂筋線と谷町線をどう組み込むか。
 御堂筋線(江坂-なかもず24.5キロ) まずは御堂筋線から。路線番号が1号線というように1933年の開業と大阪で最初の路線。新大阪、梅田、なんば、天王寺などと大阪の都心を南北に貫いている。10両編成で、Osaka Metroはもちろん、関西の私鉄で最も長大編成。

f:id:shashosha70:20211027102216j:plain

(写真2 江坂駅地上階段)

f:id:shashosha70:20211027102310j:plain

(写真3 江坂駅ホーム。左1番線がなかもず行き、右2番線は千里中央行き列車)

 梅田からいったん起点の江坂まで移動し、江坂12時59分発なかもず行きに乗車。江坂は地上駅で、1面2線のホーム。御堂筋線としては起点駅だが、大半の列車は北大阪急行線に直通し千里中央へと向かう。吹田市所在。
 江坂を出ると東三国を経て新大阪。東海道本線、新幹線と接続しているほか、おおさか東線の起点でもある。
 新大阪からは西中島南方を出ると淀川を渡り、中津の手前で地下に入り、やがて梅田。大阪の中心であり、JRの駅名としては大阪で、東海道線や環状線など在来線がひしめき合っている。阪急、阪神の拠点であり、駅前には大地下街が広がり、地下鉄も御堂筋線のほか、東梅田で谷町線、西梅田で四つ橋線が地下通路を介してまるで同一駅のように展開している。大阪きっての大繁華街である。

f:id:shashosha70:20211027102437j:plain

(写真4 開放感のある吹き抜けの御堂筋線梅田駅構内)

 御堂筋線の梅田駅はとても風情がある。ホームは2層に相当する吹き抜けで開放感高級感が感じられる。地下鉄の駅でこの空間はとても貴重だ。
 梅田を出ると、淀屋橋、本町とビジネス街を抜け、淀屋橋で京阪、本町で中央線、四つ橋線と接続し、心斎橋で長堀鶴見緑地線と接続しなんばへと至る。

f:id:shashosha70:20211027102538j:plain

(写真5 なんば駅御堂筋線ホーム。左が梅田方面、右が天王寺方面)

 なんばはもとよりミナミの中心であり、地下鉄の千日前線、四つ橋線をはじめ南海、近鉄、阪神なんば線と接続している。このほか、大国町で四つ橋線、動物園前で堺筋線、天王寺で谷町線やJR線とそれぞれ接続をしており、御堂筋線は関西の大手私鉄すべてと接続していることになる。

f:id:shashosha70:20211027102703j:plain

(写真6 なかもず駅地上の様子)

 やがて長居を経て終点なかもず。13時43分着。地上に出ると、駅前はロータリーになっていて、ロータリーを囲んで南海や泉北高速線駅が並んでいる。なお、御堂筋線のひらがなのなかもずは旅客案内上の通称なそうで、南海線や泉北線は漢字で中百舌鳥。御堂筋線も正式には漢字で中百舌鳥らしい。堺市所在だから、御堂筋線は起終点ともに大阪市外ということになる。
 カフェで30分ほど休憩したのち折り返し天王寺で谷町線に乗り換え。なお、よく知られたことだが、天王寺に天王寺というお寺はなく、寺の名は四天王寺。訛って天王寺となったものであろう。聖徳太子建立の寺である。

f:id:shashosha70:20211027102750j:plain

(写真7 ベンチが多数置いてある谷町線天王寺駅ホーム)

 谷町線(大日-八尾南28.3キロ) 御堂筋線から谷町線に乗り換えようとしたところ、地下通路をなんと10分も要した。同じ駅だと思うとちょっと疲れる。そのせいか、谷町線のホームにはベンチがたくさん置いてあった。
 天王寺14時50分発。6両編成。天王寺を出るとすぐに阿倍野。あべのハルカスは目の前。やがて喜連瓜破。難読駅である。きれうりわりと読む。初めて来たときには見当もつかなかった。

f:id:shashosha70:20211027102838j:plain

(写真8 八尾南駅に隣接する車両基地)

 そうこうして八尾南。15時10分着。八尾市所在。地上駅で、車両基地が見えた。

f:id:shashosha70:20211027102934j:plain

(写真9 高架をモノレールが走る谷町線大日駅)

 すぐに15時17分発で折り返した。天王寺からは谷町筋を北上し天満橋、東梅田から天神橋筋六丁目、太子橋今市を経て大日。16時10分着。大阪の地下鉄で最長路線である。この路線も起終点ともに大阪市外である。大阪モノレールと接続しており、地上に出てみると、高架を走るモノレールが見える。

f:id:shashosha70:20211027103017j:plain

(写真10 今里筋線起点井高野駅地上外観)

 今里筋線(井高野-今里11.9キロ) 御堂筋線、谷町線と営業距離の長い路線を片付けたのでだいぶ時間がおしてきた。すぐに折り返し太子橋今市で今里筋線に乗り換え。いったん起点の井高野まで戻り、16時45分発に乗車。

f:id:shashosha70:20211027103059j:plain

(写真11 今里駅入口と駅前に停車中のいまざとライナー)

 全長11.9キロの短い路線で、Osaka Metroでは大阪の東部を走る。そうこうして17時08分終点今里。千日前線に接続しており、地上に出てみたら、BRT路線であるいまざとライナーのバスが発車を待っていた。いまざとライナーはそもそも今里筋線の延伸として計画された区間を代替で走るBRT路線。

f:id:shashosha70:20211027103143j:plain

(写真12 そろそろ暮れかかってきた千日前線南巽駅地上出入口外観)

 千日前線(野田阪神-南巽13.1キロ) 南巽に着いたらだいぶ薄暗くなってきた。しかし、大阪の南東に位置するここからスタート地点である北の梅田まで戻るにはこのまま千日前線に乗るのがベスト。日頃、鉄道は陽のあるうちに乗ることを信条としているが、どうせ地下鉄路線だし、まあ、ここは大目に見よう。それに、千日前線は全線が地下ばかりで、実はこういう路線は地下鉄とはいえ意外にも数少ないのである。
 南巽17時35分発。環状線、近鉄大阪線の鶴橋から日本橋(にっぽんばし)、なんばなどを経て野田阪神18時03分到着。地上に出てみたらさすがに暗くなっていた。駅前には阪神の野田駅。この電車で梅田に戻った。

f:id:shashosha70:20211027103252j:plain

(写真13 暮れてしまった野田阪神駅地上外観)

 1日目はここまで。4路線に乗った。当初計画通りで、残るは翌日へ。(2021年10月13日)

京都市営地下鉄全線に乗る!

全国全鉄道全路線全二周への旅

f:id:shashosha70:20211022153940p:plain

(写真1 京都市営地下鉄路線図=ウィキペディアから引用)

2路線31.2キロ

 京都に地下鉄は南北に走る烏丸線と東西に伸びる東西線の2路線31.2キロ。駅数は31駅。今年は1981年の開業からちょうど40周年。

f:id:shashosha70:20211022154050j:plain

(写真2 烏丸線京都駅ホームの様子)

  京都から乗った。京都駅はJRのやや東寄りの地下。まずは烏丸線の竹田へいったん移動。

f:id:shashosha70:20211022154136j:plain

(写真3 竹田駅地上出入口)

f:id:shashosha70:20211022154218j:plain

(写真4 連絡橋から見た車庫の方角。左奥)

 烏丸線(国際会館-竹田13.7キロ) 竹田は地上駅で、近鉄との共同使用駅であり、列車も近鉄京都線と相互直通運転されている。連絡橋上から車庫が見えた。京セラの本社が近いらしい。
  竹田8時40分発車。国際会館行き。十条、九条などと進み京都を経て五条、四条と続く。とすれば、京都駅は八条あたりか。烏丸御池で東西線と直角に交わっている。丸太町、今出川と続き烏丸通の地下を一直線に北に向かっている。北大路を過ぎて右に進路を変えやがて国際会館。9時09分着。

f:id:shashosha70:20211022154321j:plain

(写真5 国際会館付近の緑豊かな美しい風景)

 国立京都国際会館と直結している。宝ヶ池がありプリンスホテルもある。ここで開かれた国際会議に出席したことがあるが、とても落ち着いた環境だった。
 いくつもの重要な国際会議がここで開かれてきているが、その一つが1997年に開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議いわゆるCOP3。この会議で採択された「京都議定書」は地球温暖化防止のための重要な道標となった。

f:id:shashosha70:20211022154407j:plain

(写真6 通路に展示されている〝KYOTO地球環境の殿堂〟のパネル)

 改札口から国際会館へと続く通路の途中には、〝KYOTO地球環境の殿堂〟というパネルが展示してあって、世界で地球環境の保全に多大な貢献のあった人々が顕彰されていた。2010年に創設されたもので、この第1回の殿堂入りを果たしたのが、このたびノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏と紹介されていて、真鍋先生の功績を改めて知ったようなことだった。

f:id:shashosha70:20211022154504j:plain

(写真7 大原女の像)

 また、国際会館駅の改札口脇には、〝大原女の像〟というブロンズ像が展示してあった。大原女(おはらめ)は京都の風物詩。ふっくらとした女性が薪の束を頭に載せて街を歩いている様子。
 国際会館からはそのまま折り返し烏丸御池で東西線に乗り換え。東西線のホームへは国際会館からは烏丸線の最後方で乗り換えるようになっていて、どうやらホーム同士は二層になってはいないようだ。連絡通路にはカフェなどがあったりして駅ナカの様子だった。

f:id:shashosha70:20211022154653j:plain

(写真8 太秦天神川駅地上付近の様子)

f:id:shashosha70:20211022154733j:plain

(写真9 嵐電天神川駅。右後方が東西線の太秦天神川駅)

 東西線(六地蔵-太秦天神川17.5キロ) 太秦天神川。駅前にはバスのロータリーがあり、目の前には嵐電の天神川駅。

f:id:shashosha70:20211022154813j:plain

(写真10 フルスクリーンのホームドア)

 東西線は、ホームドアが天井まで届くようになっていて、フルスクリーンと呼ばれるらしい。安全性が高いし、地下鉄特有の強い風も防いでくれるからありがたい。
 太秦天神川10時15分発車。二条でJR山陰本線と交差し接続できる。烏丸御池から東山、蹴上と東へ進み、途中から南に折れて御陵(みささぎ)、山科と続く。御陵で京阪京津線と接続し、直通運転が行われている。山科ではJR東海道線と交差し乗り換えできる。

f:id:shashosha70:20211022154957j:plain

(写真11 東西線六地蔵駅地上出入口)

 さらに南進を続け醍醐などを経て六地蔵、10時48分着。六地蔵はJR奈良線六地蔵駅に隣接しており、帰途はこの奈良線を利用して京都に戻った。なお、京阪にも六地蔵という駅があるのだが、これは地下鉄とはやや離れている。かつて乗り換えたことがあるが、乗換駅と言うにはふさわしくないように思われた。
 これで京都の地下鉄全線が完了。京都を8時13分に出て、竹田、国際会館、烏丸御池、太秦天神川と回り六地蔵10時48分到着だったから、2路線31.2キロは乗換回数5回で、所要2時間35分となり、当初計画では2時間53分と踏んでいたから18分の短縮と誤差の少ない極めて精度の高い乗車となった。昼食休憩していなかったので時間に余裕があった。
 京都の地下鉄に乗って気がついたことは、地下鉄だから車窓に楽しみはないものの、駅名は京都の歴史を感じさせるもので面白かった。(2021年10月13日)

f:id:shashosha70:20211022155320j:plain

(写真12 京都市交通局発行の地下鉄一日券。800円)

名古屋市営地下鉄全線に乗る!②

全国全鉄道全路線全二周への旅

f:id:shashosha70:20211021191836j:plain

(写真9 名古屋市交通局発行の「地下鉄全線24時間券」)

ユニークな〝24時間券〟の設定

 環状線である名城線を乗り終えて残るは鶴舞線と東山線。

f:id:shashosha70:20211021191934j:plain

(写真10 八事駅鶴舞線ホーム)

 鶴舞線(上小田井-赤池20.4キロ) 名城線の八事で鶴舞線に乗り換え。13時36分発。名古屋の東方郊外へ向かう路線で、そうこうして終点赤池着。13時45分着。地下鉄としてはここまでだが、そのまま名鉄豊田線に直通運転されている。

f:id:shashosha70:20211021192018j:plain

(写真11 鶴舞線赤池駅前の様子)

 赤池駅前は郊外の住宅地の様相で、名古屋市をはずれ、日進市所在。近くには名門名古屋ゴルフ倶楽部がある。いわゆる和合コースとして知られ、何度かプレーをしたことがあるが、大変難しかったと記憶している。

f:id:shashosha70:20211021192056j:plain

(写真12 鶴舞線起点上小田井駅)

 

f:id:shashosha70:20211021192201j:plain

(写真13 上小田井駅ホーム。左が鶴舞線、右が名鉄名古屋、豊橋方面)

 上小田井行きに折り返し。14時23分発。途中、上前津、伏見、丸の内と都心を抜け庄内川を渡るとやがて上小田井。15時00分着。そのまま名鉄犬山線に直通運転されている。地上駅。これで鶴舞線も片付いた。

 東山線(高畑-藤が丘20.6キロ) ここもすぐに折り返し伏見で東山線に乗り換え。路線番号が1号線というように名古屋市営地下鉄で最も古い路線。1957年11月15日開業。名古屋の東西を横断する路線で、名古屋市営地下鉄中最も営業収益が高くドル箱路線である。特に名古屋-今池間の混雑が激しく、並行する桜通線はこの混雑緩和のためのバイパス線ではないかと思われるほど。
 伏見15時25分発、10両編成。他の路線が6両4両だったから、東山線の乗客数の多さがうかがい知れる。
 なお、東山線は軌間1435ミリの標準軌である。しかし、第三軌条方式を採用しており、車両断面はやや小ぶりとなっているようだ。他に名城線、名港線が同様である。この3線は開業年が古い。
 これに対し、その後出来た鶴舞線、桜通線、上飯田線は軌間1067ミリの狭軌である。これは鶴舞線においては両端で名鉄と、また、上飯田線も名鉄と相互直通運転を行っており、名鉄の軌間に合わせたものとなっている。

f:id:shashosha70:20211021192348j:plain

(写真14 東山線藤が丘駅改札口)

f:id:shashosha70:20211021192425j:plain

(写真15 左が藤が丘駅前リニモ乗り口。右奥は東山線)

 伏見を出ると栄、千種、今池、本山などと東へ東へと走っていく。一社を出て地上に出た。上社からは3駅続けて地上を走った。そうこうして終点藤が丘15時50分着。郊外ながら大変開けた様子で、リニモと接続している。
 ところで、乗車してしばらくしてから気がついた。乗った車両が女性専用車両だったのである。特にアナウンスはなかったようだし、隣の女性も特に注意してくれなかった。もっとも、こちらはすでに枯れた老人だから気にもしなかったのかも知れない。途中で気がついて隣の車両に移動した。この東山線の女性専用車両の設定は終日というもので、朝夕の混雑時間帯を女性専用とする路線は少なくないが、終日というのは珍しくはないか。
 藤が丘から折り返し、16時08分発。名古屋を経て高畑へ。高畑は名古屋市街の西に位置し、途中、八田でJR関西本線と近鉄名古屋線にクロスした。16時50分到着。これで名古屋市営地下鉄全線乗車完了。名古屋は何度も訪れていて、とぎれとぎれにはあちこちを乗ってはいるのだが、全線を乗り切るというのはこれが二度目だった。

f:id:shashosha70:20211021192511j:plain

(写真16 東山線高畑駅地上出入口)

f:id:shashosha70:20211021192549j:plain

(写真17 高畑駅前地上交差点にあるオブジェ。文化勲章受章者北村西望「無限」)

 ところで、このたびの名古屋市営地下鉄全線踏破にあたっては、乗車順序を慎重に検討した。それで、東京の地下鉄などでの経験をもとに、ブロックごとに近い路線を組んでいくのではなく、一つの路線は乗り通してしまうというやり方を選んだ。行ったり来たりして一見無駄な時間が多いようにも思われるが、結果的にはこの方が効率的なのだった。なお、起終点では必ず改札を通り地上に出てみた。せめて、起終点だけでも地上の風景を見てみたいものだった。
 それで、順路をあらかじめ設定しておいた。一番いけないのは行き当たりばったりすることなのだ。
 この結果、路線数6、営業距離93.3キロ、駅数87駅の名古屋市営地下鉄全線を完乗するには、乗換回数が15回となり、乗車時間は乗換時間も含めて437分=7時間17分と計算した。
 結果的には、要した時間は、9時20分に中村区役所出発し、高畑に到着した16時50分は、7時間30分となった。誤差わずかに13分はものすごい精度ではないか。わずかな狂いは、上飯田で昼食を取ったにもかかわらず、赤池でも長い休憩を取ったことだった。まあ、許容範囲だが。
 名古屋市営地下鉄のまとめ
・名古屋で地下鉄は発達している。どの路線もまんべんなく乗客がいる。平日の日中でもほどよく混んでいる。
・運転本数が多く、待つというストレスを感じることがない。市民の足として機能している。
・名鉄とじょうずに相互直通運転を行っている。
・車両はピカピカの新車ばかりではないが、清掃が行き届き磨き込まれ清潔だ。
・路線によってはワンマン運転を行っているなど合理化が施されている。
・終点ではバスターミナルとなっているところが藤が丘や赤池などあって、同じ市営交通の連携が図られており、電車とバスのトランジットが機能していた。
・トイレが改札口の近くにないところがほとんどだった。改札外というのもあった。
・エスカレータには下りがない駅が大半だった。エレーベータも地上まで届いていなかった。
・名古屋市営地下鉄の一日乗車券は「24時間券」というユニークなもの。最初の改札を通った時刻から24時間が有効なのだ。日にちをまたいでもいいわけで、使い勝手がいい。760円。(2021年10月12日)

f:id:shashosha70:20211021192635j:plain

(参考 名古屋市営地下鉄路線図)

名古屋市営地下鉄全線に乗る!①

全国全鉄道全路線全二周への旅

f:id:shashosha70:20211020165840j:plain

(写真1 名古屋市営地下鉄路線図=名古屋市交通局ホームページから引用)

6路線93.3キロ

 名古屋はさすがに大都会だ。地下鉄が6路線もあるし、特に都心部においては各路線が緊密にクロスしている。環状線もあり、全国の地下鉄路線網で環状線があるのは名古屋だけである。
 この名古屋の地下鉄網を1日で一気に乗りつぶそうと思うが、果たして乗り切れるか。

f:id:shashosha70:20211020165936j:plain

(写真2 桜通線の起点中村区役所駅地上外観)

 桜通線(中村区役所-徳重19.1キロ) まず名古屋から一駅だけ乗って桜通線の起点中村区役所へ。名古屋駅はJR線初め名鉄や近鉄、あおなみ線に地下鉄各線が乗り入れる大ターミナル。
 ひとまず起点の中村区役所からスタート。9時22分。路線は東海道線を直角にくぐっているはず。名古屋の西側は河川が多く開けるのがちょっと遅かったのかも知れない。お城は東側にある。
 それにしても名古屋の東西南北はちょっとまごつく。東京から大阪に向かって来ると、名古屋駅は東西に東海道線が伸びているように思うが、実際には、名古屋駅は南北に線路が伸びているのである。
 中村区役所を出ると桜通線は東に向かい名古屋駅を経て丸の内で鶴舞線、久屋大通で名城線と交差し、今池で東山線と交わりほぼ直角に右折し、南に進路を取る。御器所で再び鶴舞線とクロスし、新瑞橋で名城線と交わる。都心部では地下鉄路線が緊密に展開しているのが知れる。
 やがて野並。桜通線は路線番号が6号線となっているように路線網の中では後発で、1989年の開業。その後、ここ野並から2011年に現在の終点徳重まで延伸された。10時12分着。

f:id:shashosha70:20211020170021j:plain

(写真3 徳重駅地上外観)

 徳重駅は、緑区所在。地上に出るとバスプールがあり、ニュータウンの様相で、地図で見ると、鳴海カントリークラブが近いようだ。1番線が降車専用で、乗車は2番線から。

f:id:shashosha70:20211020170113j:plain

(写真4 新瑞橋名城線ホーム)

 名城線(環状線=金山-栄-大曽根-八事-新瑞橋-金山26.4キロ) 徳重からしばらくそのまま折り返し、新瑞橋で名城線に乗り換え。名城線は環状線で、左回り右回りと呼ばれている。1番線が左回りで、いわゆる内回り。本山方面行き。10時47分発車。
 八事で鶴舞線とクロスし、名古屋大学を経て本山で東山線、砂田橋でユトリートライン、大曽根でJR線、名鉄線と交差し続いて平安橋。

f:id:shashosha70:20211020170200j:plain

(写真5 上飯田線で直通する名鉄車両)

 上飯田線(上飯田-平安通0.8キロ) ここでいったん上飯田線に乗り換え。11時28分発。わずか2分一駅で上飯田着。0.8キロしかなく、地下鉄線としては日本で最も短い路線。すべての列車は名鉄小牧線に直通運転されており、乗った列車は犬山行きだった。4両編成で、どうやら名鉄の車両のようでクロスシートとロングシートの配置。地下鉄ではめったに見られない珍しい座席配置。
 11時30分到着。ここで昼食休憩をして折り返した。

f:id:shashosha70:20211020170243j:plain

(写真6 上飯田線上飯田駅地上外観)

 平安通から再び名城線に乗り継ぎ。途中、名城公園を通ったが、〝名古屋城へは市役所で下車〟との案内。なるほどこの案内は適切だ。知らなければ名城公園で降りてしまう。ついでに、県庁も最寄り駅はここのはず。やがて栄。名古屋きっての繁華街である。そのまま乗り通し金山。

f:id:shashosha70:20211020170335j:plain

(写真7 名港線名古屋港駅地上外観)

 名港線(金山-名古屋港6.0キロ) ここで名港線に乗り継ぎ。12時30分の発車。名城線からの直通列車だった。終点は名古屋港。12時43分着。すぐ近くに水族館があり、この日も大勢の幼稚園の子どもたちが見学に訪れていた。また、すぐそばには海上保安庁の庁舎があった。
 ここもすぐに折り返し金山で再び名城線に乗り継ぎ。新瑞橋に至って名城線は一周。

f:id:shashosha70:20211020170424j:plain

(写真8 名城線車内に掲示されている名城線路線図。進行方向が明示されていて便利)

(この項 明日10月24日に続く)

映画『モロッコ、彼女たちの朝』

f:id:shashosha70:20211005124711j:plain

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用)

モロッコ映画

 モロッコのカサブランカ。旧市街の路地を身重の若い女サミアが大きくなったお腹を抱えて歩いている。職を探しねぐらを求めて。
 どこの家も相手にしてくれない。イスラムの教えでは未婚の母はふしだらな女ということになり禁忌なのだ。だから実家にも帰れず、母には元気で暮らしていると偽りの電話を入れている。サミアは夜になっても途方に暮れて軒下で横になっている。
 通りの向かいで小さなパン屋を営んでいるアブラが見るに見かね思いあまってサミアを招き入れる。一晩だけの約束で。アブラは夫と死別し、小さな娘ワルダと細々と暮らしていた。パン屋に粉を配達に来る男の笑顔の誘いにも心を閉ざしたままだ。イスラム社会では夫の死を悲しむ権利もないし、未亡人であっても肩身が狭いようだ。
 サミアはパン作りが得意。サミア流のパンを作るとこれが人気。たちまち評判になって店がにぎわう。アブラもしばらくサミアを置いておくことにする。なお、ここでいうパンとは、日本のものとはまったく違っていて、モロッコ伝統のパンケーキのようなもののようだ。
 サミアが同居するようになってアブラに明らかな変化が訪れる。誰にも笑顔なんて見せたことがなかったのに化粧するようにまでなったのだ。
 アブラ、ワルダ、サミアに笑顔が見られるようになり、新たな絆が生まれる。
 やがてサミアが出産する。サミアは養子に出すつもりだ。名前すらつけようとしないし、おっぱいも飲ませようとしない。「私のせいでこの子は一生不幸を背負っていく」とかたくなだ。
 しかし、赤ちゃんを抱けばサミアにも母性本能が現れてくる。そして、サミアは、赤ちゃんを抱いて、ある朝、アブラたちにも別れを告げず一人去って行く。施設に行こうとするのか、一人で育てようと決意したのか、ラストシーンでははっきりとは示さなかったが、いつしかサミアは子どもの名をアダムと呼んでいたから、そのことが方向を暗示していたのではないか。なお、ここで呼ばれていたこのアダムが、この映画の原題である。
 日本で初めて公開されたモロッコ映画。監督は女性のマリヤム・トゥザニ。カサブランカの猥雑な魅力があり、イスラム独特の色彩が豊か。トゥザニはフェルメールが好きというが、その影響も感じられる。一つ一つのカットが絵になっているのである。
 とにかく静謐。音楽がない。しかし、カメラははなはだ雄弁である。
(2019年、モロッコ・フランス・ベルギー合作)

映画『護られなかった者たちへ』

f:id:shashosha70:20211007172415j:plain

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用)

大震災から10年の時空を越えて

 東日本大震災から10年。これも震災を描いた映画の一つだ。
 被災した登場人物が語る。「あの震災がすべてを変えた」と言い、「何で生き延びたのか」「生きて良かったのか」と自問する。
 重要なシーンが二つ。
 一つは、小学校の体育館に設けられた震災直後の避難所周辺の様子。(この場面、当時のニュース映像を流用したのかと思われるほどのリアリティだった。セットなのだが、瓦礫の山などがしっかりと復元されていた)。
 大勢の住民が避難している中で、ぽつんと一人うずくまっているのは、若い男利根泰久(佐藤健)。利根は働いていた水産加工会社が壊滅した。カンちゃんと呼ばれている小さな女の子もまたそういう一人。カンちゃんは母を亡くした。逃げるときに母がこれを着て行きなさいといった黄色いジャンパーを大事に身につけている。
 この二人を温かく見守ってくれているのはおばあさんの遠藤けい(倍賞美津子)。けいは独り身だったし、幸い家も流されずに済んだ。その家にけいは利根とカンちゃんを招いて一緒に暮らす。ラーメンを分け合って食べる様子はまるで家庭の団らんのようだ。
 けいは二人に〝笑顔〟〝笑顔〟と呼びかけ、笑顔なら誰かが手を差し伸べてくれると語り、いつも仏頂面でとがってばかりいた利根もいつしか笑顔を見せるようになっていた。
 二つ目のシーンは、生活保護を扱う社会福祉事務所。
 けいの暮らしは困窮していた。食べるものも満足にないような生活。それで、利根とカンちゃんは生活保護を受けたほうがいいと諭す。しかし、けいは、初め、ひとの世話を受けるのは嫌だといって敬遠していたのだが、二人の説得にあってやっと福祉事務所を訪れる。登場人物の名ではなく演じた役者の名前で記せば(映画を観ながらなのでメモが追いつかないので)、対応したのは永山瑛太、吉岡秀隆、緒形直人らだった。
 やがて、けいが自宅で死んでいた。餓死していたのだ。生活保護を受けていたはずなのになぜか、不審に思った利根とカンちゃんは福祉事務所を訪れ、理由を問いただす。すると、永山演ずる職員が、けいが自分で申請を取り下げたのだと説明する。緒形演ずる職員が「(被災者だからといって)何でもひとのせいにするな」と怒鳴る。利根は激高するが……。
 9年後。放火の罪で服役していた利根が出所してくる。
 折から、ロープでがんじがらめにして廃屋に放置し餓死させるという慄然とする殺人事件が発生する。被害者は、永山瑛太演じる福祉事務所の職員。続いて同じようなやり方で緒形直人演じるやはり福祉事務所の職員も餓死しているのが発見された。二つの事件は似たような手口から連続殺人事件と断定される。
 捜査に当たっているのは、宮城県警捜査一課の刑事笘篠誠一郎(阿部寛)。笘篠もまた津波で妻と息子を亡くしていたのだった。
 笘篠は、利根を犯人と見立て捜査を進めていた。笘篠の捜査の過程で、被災から9年を経た実情があぶり出され、生活保護の問題が浮き彫りにされていく。
 一方、利根は避難所で知り合った女の子カンちゃんがその後どうしているのか気になって探していく。
 利根とカンちゃんが再び交差したところで映画は衝撃のラストへと向かう。
 この映画で感心したのは二つのこと。
 一つは、登場人物たちの〝目〟の表現。異様なほどの輝きを持っていて、目が深奥を探り、意識化を如実に表現していた。これこそが映画言語であろう。
 もう一つは、利根が出所後勤めだした溶接工業所のリアリティ。利根は溶接士となって働いているのだが、トーチを持って行っている溶接の様子は、まるで実在の溶接士が行っているのかと思わせられた。専門的には半自動マグ溶接というのだが、なんでも、石巻市にある実在の鉄工所が実名で登場していたそうで、利根を演じる佐藤健はここで溶接の特訓を受けたということである。
 ディテールをとことん突き詰めた演出が映画の完成度を高め、社会性の高い映画に終始緊張感をもたらしたものであろう。
(2021年、瀬々敬久監督)