ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

戸田泰生画『往来』

(写真1 戸田泰生画『往来』)

第88回旺玄展出品作

 戸田さんの公募展への出品が続いている。10日ほど前に純展に『山麓』を出品していたばかりだったが、このたびは旺玄展へ出品していた。その2枚の絵の画風がまったく異なることにまずは新鮮に驚くとともに、創作意欲の旺盛さにも感嘆した。
 旺玄展は元々春の公募展だが、従来秋に開催してきた純展が春に移動してきたのでこのように続いてしまったものらしい。コロナの影響は様々なところへ波及しているようだ。
 知人の戸田泰生さんが出品しているというので駆けつけたのだが、旺玄展への出品作品は『往来』。大都会の街角を描いたものだ。登場人物は明らかに外国人のようだが、街路は銀座のようでもある。大変斬新な絵で、洒落ている。中央の女性の背景に、背中合わせの女性らしき頭部が薄く浮かび上がっているのも面白い。
 油彩画だが、デジタル時代の画法とも言えそうだ。ある種モンタージュ手法のようにも思えて、的外れだろうが、時代背景も色彩もまったく違うが、松本竣介を彷彿とさせた。
 旺玄展は、大正13年の創設で今回が88回目の開催。歴史のある大変大きな展覧会で、今回は会場が26ブロックにも及び、出品者数291、展示数405に上った。
 一方、これより先立って開催された純展には戸田さんは『山麓』と題する作品を出品していた。里山を描いたアクリル画で、旺玄展の『往来』とは同じ画家が描いた絵とは思われないほどの違いが感じられた。常に新しさを探究する戸田さんらしいといえる。
 純展も旺玄展も会場は上野公園の東京都美術館。公募展のメッカみたいなところで、この日も9つもの公募展が並行して開催されていた。東京都美術館が配布していた公募展カレンダーによると、5月だけでも37もの公募展が開催されるようだ。
 純展も旺玄展も洋画、日本画を中心にした展覧会だが、してみると、日本にはいかに多くの画家がいるものか、そのことにこそ驚いた。なお、公募展は、一般的には、出品すると、事前に審査があり、入選作品だけが展示される。

(写真2 旺玄展会場の様子)