(写真1 自身の作品を前に戸田泰生さん)
第51回純展出品作品
上野公園の東京都美術館で開かれていた公募展純展。これまでは毎年秋に開催されてきたが、今年は春の開催となった。大変大きな展覧会だが、今年はコロナの影響か例年よりも少なくて、それでも140点を超す出品があった。
私のお目当ては戸田泰生さんの作品。今年は「山麓」と題する100号の大作を出品されていた。
数多くの作品が並ぶ展示室で、戸田さんの作品は異彩を放っていた。断然輝いていたのである。これまでの戸田さんの画風ともまったく違う新しさが感じられた。雪景色で白い平地の奥に緑の山の斜面。斜面は千枚田あるいは段々畑であろうか。白と緑のコントラストがいいし、なかなか味わい深い。里山のようでもあるし、見慣れない風景でもある。
画家本人の戸田さんに伺うと、本作はアクリル画なそうで、初めての試みだということ。油彩とは違って水彩のような筆運びが面白いといい、ただ、油彩のような厚みには欠けるかも知れないとのことだった。
また、里山のようでもあるが、見慣れない風景だと話を向けると、実はこれは中国の風景なのだということだった。なるほど、これは合点がいった。
戸田さんとはかねて昵懇の間柄。かつて同じ業界にいたこともあって駆け出しの頃からかわいがってもらってきた。
古希で退職後本格的に絵に取り組んできた戸田さんで、私は十数年来戸田さんの画業を間近で見てきたが、85を過ぎて新しいモチーフに取り組み、新しい画法に挑戦する意欲には感服するばかりだ。
(写真2 戸田泰生画「山麓」)