ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

鏑木清方展

(写真1 <築地明石町>=会場で販売されていた絵はがきから引用)

没後50年

 東京国立近代美術館で開かれていた。大変な人気ぶりで、日時指定制の入場だったのだが、それでも入場には長い列ができていた。
 清方は、近代日本画を代表し、しばしば上村松園と並び称せられる。このたびは没後50年ということで、100点を超す作品が集められ、大きな回顧展となっていた。
 代表作は<築地明石町>(1927)か。3年前に再発見された作品で、その折りも大きな反響を呼んでいたが、人気に衰えはないようで、<新富町>(1930)、<浜町河岸>(1930)と揃った三部作の前には大きな人だまりができていた。
 築地明石町はやはりけだし傑作であろう。明治の様子を思い描いたものなそうだが、若い女性がとにかく美しい。はやりの髪型にぞろりとした羽織。足下に咲くアサガオからすると夏のようでもあるが、それにしては羽織が厚手のようにも思えるし、アサガオも一部枯れかかっているところから見ると、はや初秋か。着物には細かく柄が描き込まれている。3年前に初めて見たときには気がつかなかったが、左手の薬指には指輪がはめられている。あるいは花柳界の女性かもしれない。
 清方の多くの絵に通じることだが、絵の成り立ちや背景がいくつもに読み取れ、見るほどに新しい発見がある。絵はとにかく緻密。市井を描きながらその一瞬の時代背景がわかって興趣が尽きない。
 ところで、清方は制作控帳に自己評価を記載していたものらしい。☆☆☆(会心の出来)、☆☆(やや会心の出来)、☆(まあまあ)とあり、会場の作品にも☆が紹介されているものがあって興味深かった。