(写真1 CD全集のパッケージ外装)
ベートーヴェンを熟知
トスカニーニ、フルトヴェングラー、カラヤン、ワルターと続いてきたベートーヴェンの交響曲。いずれも巨匠揃い。特にベートーヴェンを振らせて名だたる評価の持ち主ばかり。そして5人目はバレンボイムの登場である。
ダニエル・バレンボイム(1942~)は、アルゼンチン出身のユダヤ人。指揮者であり、偉大なピアニストとしても知られる。何しろベートーヴェンのピアノソナタ全32曲の録音を5セットも残しているというほどで、これは世界唯一。
指揮者としても巨匠の誉れが高く、世界の名だたるオーケストラを指揮してきた。コンチェルトとでは、自らピアノを弾き、オーケストラを指揮するいわゆる〝弾き振り〟でも人気が高い。私もこの弾き振りのコンサートを一度だけだが経験があって、独特の緊張感を味わったものだった。バレンボイムはかつて弾き振りについて、ピアノを弾けるなら誰でもオーケストラを指揮できるというものではないと語っていた。
さて、バレンボイムのベートーヴェン交響曲全集である。CD6枚組のセットになっている。レーベルはワーナークラシックス。
セットの構成は次の通り。
CD1:第1番、第2番
CD2:第3番〝英雄〟
CD3:第4番、第5番
CD4:第6番〝田園〟
CD5:第7番、第8番
CD6:第9番〝合唱付き〟
オーケストラは、シュターツカペレ・ベルリン。ベルリン国立歌劇場オーケストラであり、音楽監督は〝シュターツカペルマイスター〟と呼ばれ、現在はバレンボイムがその任に当たっているようだ。また、CD6の第9番の合唱もベルリン国立歌劇場合唱団。
全9曲を聴き終わって、丁寧できっちりとした演奏だなというのが第一印象。ずぶの素人が生意気なことだが。特に第3番が良かったように感じた。なお、専門家によれば、このときの第9番のバレンボイムの指揮は、オーケストラのみならず、コーラスの指揮ぶりも際立っていたとのこと。第9番では、オーケストラの指揮者とは別に、合唱の指揮者も立てることも少なくないが、両方をこなして一流はバレンボイムだったとのこと。