魅惑の踏切ワールド
全国の踏切のユニークな写真が載っている。
珍景あり、絶景あり、花畑の踏切、都会の踏切、不思議な踏切もある。よくぞここまで踏切を集めたものだと感心した。全国各地130ほどもの踏切が紹介されていてすべてカラー写真である。このごろでは踏切ファンも多いのであろうか。
しかし、踏切といえば、石田千さんの『踏切みやげ』が傑作だった。踏切紀行とでも言える味わい深い内容で、2008年の上梓だったから踏切ものの先駆だったか。
おっと、脱線してしまった。線路ではないから脱線ということもないであろうが、とにかく写真がいいし面白くてにやにやしながら読んだ。
私は筋金入りの鉄道ファンだが、しかし、もっぱら鉄道は乗って楽しむばかり。だから踏切には目もくれなかった。そもそも乗ってばかりては踏切になど目のくれようもないのである。ただし、列車が近づくとカンカンと鳴る踏切の警報音は乗っている者にとっても独特の情緒を感じる。
おっと、またまた脱線してしまった。それにしても踏切がこれほど面白いとは。副題にある通り踏切ワールドである。
・フル規格の新幹線が通過する唯一の踏切
・10を超える遮断機がひしめく踏切
・山手線に唯一現存する踏切
・三つの異なるゲージを渡る踏切
・「敷板なし」踏切
・7本もの線路を渡る踏切
・電車が踏切で電車待ち
様々な踏切があるものだ。列挙したこれらの踏切がどこかがわかればかなりの鉄道ファンだ。
もう1回脱線させてもらうと、鉄道ファンの中には〝音派〟もいる。構内放送、車内放送といった放送のみならず、発車ベルの音や列車の走行音、甚だしきに至ってはブレーキ音も拾ってる。カメラのみならず、マイクをポールに付けて集音しているのがこの派閥。この人たちにとっては放送音を聞いただけで何駅かがわかるというからそれもすごい。
そうすると、踏切の警報音を聴いただけでどの鉄道会社の踏切かがわかるのだろうか。
テレビのミステリードラマなどで、背景音が重要になってくるものがあるが、この音派にかかれば、近鉄沿線だ、京急沿線だなどと判別できると大きな手がかりになるのではないか。
(創元社刊)