ABABA’s ノート

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<ミサ・ソレムニス>

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(写真1 <ミサ・ソレムニス>のCDとベートーヴェンTHE COMPLETE WORKSのボックス)

ベートーヴェンの荘厳ミサ曲

 ベートーヴェンの荘厳ミサ曲である。ソレムニスとは荘厳の意。
 ベートーヴェンが作曲した全曲をワーナーのTHE COMPLETE WORKSで毎日聴いてきた。CD80枚のボックスセットになっていて全357曲。これを約100日かけて聴き通した結果、〝どれが良かったか?どれが印象に残ったか?〟という難問を大胆にも自分に問いかけてみたら、これが大好きな交響曲第7番でもあまたのピアノソナタでもなく、何とミサ・ソレムニス(oP.123)となった。ドイツ語はわからないし、日頃、歌曲の類いは積極的には好まないのだが、この曲は印象に残った。自分でも意外だった。音楽に対する格別の造詣があるわけでもないのにちょっと乱暴なことだとは思ったが、どうせ好きか嫌いか程度のレベル、これなら許されるだろうと思った。
 荘厳ソレムニスとは、特別な機会の典礼のためのミサ曲を指すようで、モーツアルトやブルックナーにも作品があるようだが、ベートーヴェンのものが断然有名。特にベートーヴェンの作品は、ただ歌詞に見合った曲をつけたような旧来型のミサ曲ではなく、ミサの言葉の外面的な意味よりも豊かな内容を含む交響曲的なミサ曲であると専門家に評されている。
 ベートーヴェンにミサ曲は壮年期のものと2曲があるが、このミサ・ソレムニスは晩年のもの。1822-1824年の作曲といわれる。つまり、交響曲第九番「合唱付き」とほぼ同時期である。
 このTHE COMPLETE WORKのミサ・ソレムニスは、1966年の発行を2001年にリマスターしたもの。5楽章からなり、トータル79分余と長い。
 編成は、独唱(ソプラノ、アルト、テナー、バス)と混声四部合唱で、ソプラノがエリーサベト・セーデルストレム、コントラルトはマルガ・ヘフゲン、テノールヴァルデマール・クメント、バスマルッティ・タルヴェラ。コーラスはニュー・フィルハーモニア合唱団。演奏はオットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団といずれも錚々たるメンバー。
 この曲はミサ曲だが、教会で演奏されることは少なかったようで、主に演奏会で演奏されたということである。
 ミサ曲を聴くなどということは滅多になくほとんど初めてのことだったが、まるで壮麗な大聖堂あるいは礼拝堂で演奏されているかのような様子を彷彿とさせて素晴らしいものだった。ウィーンやサンクトペテルブルグなど欧米の教会で聴いたことはあるが、この曲こそ教会で聴いてみたいものだと思った。壮麗でそれこそソレムニスだった。
 歌詞はドイツ語だからよくわからないが、ミサ曲にしては大変力強く、大曲の印象だ。歌詞がわからなくてもきちんと聴いていたくなる魅力があった。第九の〝歓喜の歌〟とはまた違った明るい高揚が感じられた。なお、CDカバーの絵は、キャスパー・デイヴィッド・フリードリッヒの<冬景色>(1811)というらしい。
 わからないことを平気で書くのも生意気なことだが、これが私の持ち味と心得ている。