ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

東京の地下鉄全線に乗る①

全鉄道全路線全二周への旅

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(写真1 北綾瀬駅に掲示されていた東京の地下鉄路線図

東京メトロ9路線/都営4路線

 東京に地下鉄は、東京メトロ(旧営団地下鉄)の9路線と都営地下鉄4路線の合わせて13路線がある。皇居外周の都心部で重なり合うように集中しているのが特徴で、大手町駅など何と五つの路線が乗り入れている。一部の路線はわずかだが千葉県と埼玉県にもまたがっている。また、各路線は、放射状に郊外へ延びる私鉄各線と積極的に相互直通運転を行っているのが大きな特徴で、銀座線、丸ノ内線、大江戸線を除き実に10の路線に及ぶ。なお、ここでは、りんかい線のように路線の大半が地下トンネルとなっているものでも、地下鉄のカテゴリーに属していない路線は地下鉄に含めなかった。
 これら13路線を合計した総営業距離数は304キロで、駅数は286に達する。営業距離数では世界第7位だが、路線数と駅数では世界第4位に相当する。
 それでは、東京の地下鉄に乗ってみよう。もちろん、これまでもすべての路線で一再ならず乗っているのだが、改めて全線に乗ることとした。家を出るとき、家内に東京の地下鉄全線に乗りに行ってくると話したら、「地下ばっかり走っている鉄道のどこが面白いの」と揶揄するような顔をされた。しかも、気象情報をにらみながら慎重に晴れの日を待っていたら、「地下鉄でも雨は気になるのか」と不思議そうな顔。
 さて、地下鉄全線に乗るとして、どのようなルートを組むべきか、これがなかなか難しい。一つのルートを起終点で乗り切るか、大きな接続駅で乗り換えてみるか、様々な方法が考えられたが、結局、一本の路線を乗り通すという方式を原則に組み立てた。ただ、折り返しは少ないようには工夫はした。スタートも、荻窪、本八幡などと選択肢はいくつもあるが、できるだけ戻りたくないということを考慮にまずは北綾瀬とした。(○数字は乗車順)

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(写真2 北綾瀬駅1面1線のホーム)

①千代田線(本線綾瀬-代々木上原間21.9キロ+支線綾瀬-北綾瀬間2.1キロ、駅数20駅、ラインカラーはグリーン、路線記号はC) 常磐線の綾瀬を起点とする路線だが、ほかに綾瀬から一駅だけ伸びて北綾瀬への支線がある。
 なお、北綾瀬駅からさらに数百メートル線路が延びていて綾瀬検車区があり、車両基地となっている。この車両基地への引き込み線が旅客線として利用されている。
 北綾瀬駅は、片側1面1線のホーム。2019年にホームが10両編成対応に延長され本線への直通運転が開始された。それまでは3両編成の支線内往復運転のみだった。この日乗った列車も10両編成の小田急線直通成城学園前行きだった。
 千代田線は、綾瀬-代々木上原間で、綾瀬方では常磐緩急線に乗り入れており、それも大半の列車が常磐緩急線に乗り入れていて、乗り入れ区間も含めて千代田線と呼ばれることが多い。綾瀬あるいは北綾瀬止まりは少ないくらいだ。また、代々木上原方では小田急線へ乗り入れている。
 北綾瀬を出ると綾瀬を経て北千住からは地下に入った。北千住駅は、日比谷線、JR常磐線各線、東武線各線、つくばエクスプレス線と接続する大きな駅で、乗降客数では全国10指に入る。久しぶりに朝の通勤時間帯に電車に乗ったが、通勤風景は整然としていた。この駅は駅そのもの建物の大きさの割に乗降客が多くていつでも大混雑で有名だった。
 町屋、西日暮里、千駄木、根津、湯島、新御茶ノ水と続き、大手町からは二重橋前、日比谷、霞ヶ関、国会議事堂前と皇居の外周を時計回りに進み赤坂、乃木坂、表参道、明治神宮前、代々木公園を経て終点代々木上原に至る。この間、約50分。
 代々木公園を出ると地上に出ており、代々木上原は小田急線との接続駅で、乗ってきた列車はそのまま直通して成城学園前へと進む。2面4線のホームがあり、周辺は住宅地である。

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(写真3 千代田線の終点代々木上原駅外観)

②副都心線(和光市-渋谷間20.2キロ、16駅、ラインカラーはブラウン、路線記号F) 副都心線は、2008年の開業で、東京の地下鉄路線の中では最も新しい。渋谷、新宿、池袋と副都心三都を貫くのでこの名がついた。ちなみに、渋谷-池袋間は明治通りの地下を走っている。なお、昔はこの区間はトロリーバスが走っていたものだった。また、副都心線は東京の地下鉄の中で唯一千代田区内を通らない路線である。

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(写真4 渋谷駅副都心線に近い改札口。5・6番線和光市方面の表示が見える)

 さて、副都心線には渋谷から乗車した。渋谷駅は大ターミナルで、もとより東急の牙城だが、地下鉄だけでも副都心線のほか銀座線、半蔵門線が乗り入れている。
 東急の大胆だったのは、副都心線の開業に合わせ渋谷駅を大改造し、副都心線に直通する東横線、半蔵門線に直通する田園都市線はすべて地下に埋めて地下駅となし、各線はすべて渋谷が起終点駅なのだが、列車は大部分が通過扱いとなった。
 副都心線の発車は6番線から。東横線さらにみなとみらい線からの直通列車で、上下各線の行き先表示を見ていると、5番線に元町中華街行きがあり、6番線に和光市行きがあるといった様子で、ここが渋谷だということがわからなくなってくる。
 渋谷を出ると、明治神宮前、北参道、新宿三丁目、東新宿、西早稲田、雑司ヶ谷と続き池袋へ。新宿三丁目を新宿としなかったのは正しい。このごろでは同じ駅とは思われないほど離れた駅同士をひとくくりにすることがあって面食らう。なお、池袋は、いわゆる新線池袋と呼ばれた時代からの地下ホーム。
 池袋からは有楽町線と並走する。特に要町、千川、小竹向原までは複々線区間で、小竹向原で西武線が別れ、その先は有楽町線と線路を共用して氷川台、平和台、地下鉄赤塚、地下鉄成増を経て地上に出て終点和光市に至る。沿線は住宅地で、和光市からは東武東上線に直通運転されている。
 なお、副都心線は厳密には小竹向原-渋谷間11.9キロだが、和光市までを含めて副都心線と呼ばれることが多い。

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(写真5 和光市駅改札内。行き先表示に副都心線菊名、有楽町線新木場などの表示が見える)

③有楽町線(和光市-新木場間28.3キロ、駅数24駅、ラインカラーはゴールド、路線記号Y) 西北から南東へ都心を貫いている路線で、和光市駅だけが埼玉県である。和光市を出ると池袋までは副都心線と同じ線路同じ駅。駅ナンバリングも、例えば小竹向原駅は有楽町線がY06、副都心線はF06と併記されている)

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(写真6 新木場駅ホーム。行き先表示に和光市、小手指の表示が見える)

 池袋駅で有楽町線は3番線ホーム。池袋を出ると、副都心線は右に大きくカーブして離れていくのに対し、有楽町線は直進し東池袋、護国寺、江戸川橋を経て飯田橋で大きく右折し市ヶ谷、麹町、永田町、桜田門、有楽町と皇居の西側を迂回して銀座一丁目。新富町で隅田川をくぐったはずで、月島、豊洲、辰巳を経て終点新木場。地上駅で、改札を出ると、すぐ左にJR京葉線、その先にりんかい線の改札が並んでいる。

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(写真7 新木場駅改札口。有楽町12分、池袋31分などの表示が見える)

④都営大江戸線(都庁前-光が丘40.7キロ、38駅、ラインカラーマゼンタ、路線記号E、鉄輪式リニアモーター方式、軌間1,435ミリ) 6の字というか、例えは悪いが首つりのひものような形状となっており、完全な環状ではない。線区上、起点が都庁前で、時計回りに進み、ぐるっと回って都庁前までが環状部で、都庁前から先の光が丘までは放射部。路線距離では、東京の地下鉄で最長である。放射部も含めて全線地下を走っている。建設費抑制のためだろうが、トンネルはやや小ぶりで、断面積を見るとトンネルに合わせ車両限界から車両も馬蹄形をしている。せっかくの広いゲージが生かされていない。
 都庁前駅は2面4線のホーム。2番線からの発車、光が丘行き。新宿西口、東新宿、若松河田、牛込柳町、牛込神楽坂、飯田橋、春日、本郷三丁目、上野御徒町、新御徒町、蔵前、両国、森下、清澄白河、門前仲町と進む。路線は環状部ではあるが、東京の広がりに合わせて東西に長い菱形になっている。
 さらに月島、勝ちどき、築地市場、汐留と臨海部を進み、大門、赤羽橋、麻布十番、六本木、青山一丁目、国立競技場、代々木、新宿を経て都庁前に戻る。この間、大門では〝大門浜松町〟とアナウンスがあったが、これはいかがなものか。大門駅と浜松町駅は随分と離れている。ひとくくりの駅として案内するには無理がある。
 立っている人は少ないが、それなりに乗降客が途切れず続いている。環状に走る路線だから、放射状に伸びる各線とはしばしば交差し、乗換駅が続く。カーブが多いせいだろうが、ギィギィと音が大きく車内アナウンスが聞き取りにくいほどだ。
 列車はさらに進んで、路線中の放射部を西新宿五丁目、中野坂上、東中野、中井、落合南長崎、新江古田、練馬、豊島園、練馬春日町から終点光が丘。放射部も12.1キロもあって結構長い。光が丘はとても大きな団地のようだった。
 なお、環状部は一周に約1時間、放射部をも含めた全線では約1時間半の所要だった。

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(写真8 光が丘駅外観)

⑤都営浅草線(西馬込-押上18.3キロ、駅数20、ラインカラーローズ、路線記号E、軌間は1435ミリの標準軌) 1960年の開業で、都営地下鉄の中では最も古く、銀座線、丸ノ内線に次ぐ。
 起点の西馬込の先に線路が延びていて、馬込車両検車場がある。

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(写真9 第二京浜に面した西馬込駅入り口)

 西馬込駅は第二京浜(国道1号線)の地下に位置する。2面2線の相対式ホームがあり、ホームに降りる前に次の列車の発車が1番線か2番線か確認する必要がある。
 西馬込を出ると、馬込、中延、戸越、五反田、高輪と進み泉岳寺。ここには2面4線のホームがあるが、このうち真ん中の1線は引き上げ線となっており、折り返し列車が発着する。西馬込-泉岳寺間のみに運転される線内折り返し列車が多く、まるで西馬込支線の様相だ。
 これは京浜急行線への接続駅となっているからで、逆に、西馬込-押上間を結ぶ全線折り返し列車は少ない。
 泉岳寺を出ると、三田、大門、新橋、東銀座、宝町、日本橋、人形町、東日本橋、浅草橋、蔵前、浅草、本所吾妻橋を経て終点押上に至る。
 都心の東側を南部から墨東地域へと南北に結んでいる路線で、泉岳寺方では京急線と直通運転を行い、遠く三崎口まで伸びているほか、羽田空港へ直通する列車も多い。また、押上方では京成電鉄と相互乗り入れを行い、京成本線のほか成田スカイアクセス線も経由して成田空港を結んでおり、空港アクセスの機能も果たしている。成田空港と羽田空港を直接結ぶ列車の運行も行われている。
 軌間が標準軌と広いから運行はとてもスマートで、長距離を走ることを考慮したのか、座席もクッションがとてもよかった。

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(写真10 西馬込駅で発車を待つ都営浅草線電車)

 この日は、8時17分に北綾瀬を出発し、15時38分に押上に到着したから、およそ7時間半の乗車となった。まだ外は暗くなってはいなかったが、一日目はここまで。(2020年10月28日取材)