ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

東京の地下鉄全線に乗る③

全鉄道全路線全二周への旅

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(写真1 赤羽岩淵駅に掲示されてあった南北線案内図。停車駅が一目でわかる。乗り換え路線名も書いてあり、永田町など当線も含めれば実に5路線が乗り入れている)

ついに三日がかりで13路線完乗!

 出がけに家内から「まだ残っているの?大変だわね」と揶揄とも激励ともわかりかねるような言葉をかけられて東京の地下鉄全線に乗りに出かけた。何しろ三日連続だから言いたいことがわからないでもない。
 一日目が千代田線、副都心線、有楽町線、都営大江戸線、都営浅草線と5路線に乗り、二日目には半蔵門線、銀座線、都営新宿線、丸ノ内線、東西線とやはり5路線を片付けており、三日目の本日は残る3路線に乗る。
⑪南北線(目黒-赤羽岩淵、21.3キロ、19駅、ラインカラーエメラルド、路線記号N) 東京の地下鉄では数少ない東京を南北に貫く路線。

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(写真2 環八に面した赤羽岩淵駅出口外観)

 南北線には赤羽岩淵から乗った。さらに北部にある浦和美園が起点の埼玉高速鉄道(通称埼玉スタジアム線)からの直通列車が多い。また、目黒で東急目黒線と直通運転されており、乗った列車も目黒線日吉行きだった。
 赤羽岩淵は、東京都内。駅前は環八で、JR赤羽駅まで430メートルとの案内があった。ホームドアは車両の高さまであり、大方の胸の高さのものとは違う。これなら乗り出すことも乗り越えることもできない徹底した安全柵ということになる。
 赤羽岩淵を出ると、志茂、王子神谷と続き赤羽。JR京浜東北線との接続駅である。同じ南北に走る路線であり、競合が心配になるが、そもそも東京は東西への放射状に伸びる路線は多いが、南北路線は少ないから鉄道未達区間の解消には大きな意味がある。
 王子を出ると西ヶ原、駒込、本駒込、東大前、後楽園を経て飯田橋から市ヶ谷、四ッ谷と皇居を左回りに迂回して永田町、溜池山王と回り込み、やがて南下して六本木一丁目、麻布十番、白金高輪、白金台、終点目黒へと至る。

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(写真3 目黒通りに面した目黒駅地上外観)

 目黒は、都営三田線、東急目黒線との共同使用駅であり、地下駅。1面2線の島式ホームがあり、列車は目黒線に直通する1番線に到着した。目黒駅は高層ビルになっていて、駅前は目黒通り。ちなみに、目黒駅は目黒区ではなく品川区にある。もっとも、品川駅は品川区ではなく港区だが。
⑫都営三田線(目黒-西高島平、26.5キロ、27駅、ラインカラーブルー、路線記号I)

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(写真4 目黒駅ホーム。左2番線が南北線赤羽岩淵、都営三田線西高島平方面で、右1番線は目黒線への直通)

 南北線で目黒に着いて同じ駅同じホームから都営三田線への乗り換えだからこれはスムーズ。
 目黒駅は、東京メトロ南北線、都営三田線に東急目黒線3社の共同使用駅だが、ホームは1面2線の1本だけ。南北線も三田線も原則目黒線と直通運転を行っており、すべて2番線に入ってくる。
 目黒を出ると白金台、白金高輪と続くが、ここまでは線路および駅ともに南北線と共用区間。白金高輪を過ぎると南北線が左に離れていった。
 三田線も、南北線同様東京を南北に貫く路線。南北線は平成になっての1991年の開業だが、三田線は断然古く1968年の開通。また、当初、三田線は三田駅が起点だったのでこの路線名称となっており、三田から目黒へと延伸されたのは10年前だった。
 さて、白金高輪の次が都営浅草線と接する三田で、芝公園、御成門、内幸町、日比谷、大手町、神保町、水道橋、春日、白山、千石、巣鴨、西巣鴨と続く。このあたりは白山通りの地下である。
 続いて新板橋、板橋区役所前、板橋本町、本蓮沼、志村坂上と進み、志村三丁目から地上に出て蓮根、西台、高島平、新高島平を経て西高島平へと至った。高島平と名のつく駅が3駅続くが、いかにも安易な駅の命名で、高島平そのものは巨大団地があるものの、あるいは付近に適当な地名が見あたらなかったのかもしれない。

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(写真5 西高島平駅ホーム)

  実は、この日は、初め目黒で昼食にしようとしていたのだが、大変混み合っていたので敬遠し、西高島平に変更していたのだった。ところが、ここは駅前に食堂はおろか売店も見当たらないようなところで、工場とトラックターミナルが目立つようなところだった。つまり、駅名にするような由来のものが見当たらなかったということを実感したのだった。初めて降り立ったわけでもないのにこれはうかつだった。
 ともあれ、これで三田線も終了。残るは日比谷線のみとなった。しかし、三田線が日比谷線とクロスするのは日比谷まで戻らなくてはならない。これはいかにも単調で、それで三田線は新板橋で降り、徒歩で埼京線の板橋で乗り換えることにした。新板橋、板橋間は徒歩で10分ほど。随分と久しぶりに板橋駅を利用することになったが、思い起こせば、ここは赤羽線と呼ばれていた時代だからだいぶ古い。もっとも、所属する線路名称は現在でも赤羽線なのだが。
 板橋からはそれこそ埼京線で一直線に恵比寿に行き、一駅戻った。

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(写真6 山手通りに面した中目黒駅改札口。3番線日比谷線銀座、北千住方面のほか4番線に東横線、副都心線、1番線東横線などの行き先表示が見える)

⑬日比谷線(北千住-中目黒、20.3キロ、22駅、ラインカラーはシルバー、路線記号H) 日比谷線は終点側の中目黒からスタート。中目黒は東急東横線との共同使用駅で、地上駅。山手通りに面している。島式2面4線のホームがあり、内側2・3番線を日比谷線が使用している。かつては、日比谷線から東横線に乗り入れていたが、現在は東急側への直通はなくなって、すべての日比谷線列車はここ中目黒止まりとなった。
 中目黒を出るとすぐに地下に入り、恵比寿。山手線との接続駅。広尾、六本木、神谷町と続き虎ノ門ヒルズ。今年2020年6月に開業したばかり。
 霞ヶ関、日比谷、銀座、東銀座、築地、八丁堀、茅場町、人形町、小伝馬町、秋葉原、仲御徒町、上野、入谷、三ノ輪と進み、南千住で地上に出て北千住に至る。北千住からは東武線へ直通する列車が多数発車している。

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(写真7 北千住駅東武線各線、日比谷線改札口)

 つまり、北千住は、常磐線と小田急線に直通する千代田線、東武線と東急田園都市線に乗り入れている半蔵門線、そして東武線に延びるこの日比谷線がクロスしており、東京の地下鉄にとっては重要な拠点駅と言える。ほかに、JRやつくばエクスプレスも北千住で接続しており、大ターミナルだ。(2020年10月30日取材)
    ◆  ◆  ◆
  これで、三日かかったが東京の地下鉄全線を乗り終えた。

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(写真8 東京の地下鉄の車内風景)

 東京メトロ(東京地下鉄=旧営団地下鉄)は9路線195.1キロであり、都営地下鉄が4路線109.0キロで、合計13路線304.1キロである。近年、上海、北京、広州と中国で地下鉄路線が急激に拡大されて世界的事情は変わったが、かつてはロンドン、ニューヨークと並んで東京が世界三大地下鉄網だった。ロンドンの交通博物館には、東京の地下鉄路線図が大きく掲示されている。
 東京の地下鉄の特徴はいくつかあるが、最大の特徴は、近郊に伸びる他社線との相互乗り入れによる直通運転を行っていることだろう。営業距離数は上海や北京、広州より少ないが、この直通区間を1本の運転と考えれば、東京の営業距離数は断然増える。相互に乗り入れで直通運転を行っている路線は、全13路線中実に10路線に及ぶ。銀座線、丸ノ内線、都営大江戸線だけが相互乗り入れを行っていないが、この3路線は軌間(ゲージ)や給電方式などが独特で、他社線と直通かできないという事情があるのである。
 また、もう一つの特徴は、路線が網の目のように都心に集中していることだろう。大手町や永田町などは実に5つもの路線が重なり合うように駅を構えている。これには大深度開発など技術的進歩も大きく寄与したものであろう。また、渋滞のひどい東京の地下にトンネルを掘るということでは、シールドマシンなどの技術的発達もあったに違いない。駅数そのものが多いということもあるが、皇居を迂回して路線が築かれたという事情も大きい。皇居の地下を鉄道が走ることをはばかったものかもしれない。もっとも、皇居の中に利用者はいないわけで、駅を設ける意味がないという判断も下されたのであろう。
 その分、皇居の周辺は官庁街や大ビジネス街が広がっており、皇居の周りをぐるぐると取り囲むように路線は発達した。何しろ、千代田区内を走らない地下鉄路線は13路線の中で副都心線のわずかに1線のみなのである。
 都心部を走るからでもあるが、東京の地下鉄は駅数が多く、駅間距離も短い。大方の駅で乗り換えができるから利便性も高い。乗り換えを容易にするということでは、エスカレータやエレエータの普及も効果があった。
 実際に乗っていて気がつくことは、駅がきれいだ、もちろんエスカレータやエレベータの設置も進んでいるし、トイレもきちんとしている。
 東京の地下鉄は乗りにくいという評判を聞くことがあるが、このごろではずいぶんと改善されたのではないか。ホームドアの設置が進んでいるし、路線別のカラーリングや駅のナンバリングなども徹底されてきた。
 それにしても地下鉄に乗って何が楽しいのかと問われるが、実際、車窓に風景はないわけだから一番の楽しみはないが、次々と停車する駅の名前が楽しい。特に都心部においては江戸時代以来の地名が駅名に採用されているから実に興味深い。これは駅数が少ないJR路線では味わえないことで、昔の都電ほどではないにしても、捕物帖の世界が彷彿とされたりして面白い。
 三日間にわたったこのたびの記事では、全路線で全駅名を記した。駅名を羅列して何が面白いものかと思われたが、駅名をなぞっていくだけで地上の風景が広がってくるようだった。

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(写真9 一日乗車券)
 なお、このたびの旅では、「東京メトロ 都営地下鉄一日乗車券」(900円)を利用した。
<東京の地下鉄面白メモ>(日本地下鉄協会資料、ウキペディア等から引用)
・1日あたり路線別輸送人員(平成30年度)=①東西線1,467千人 ②丸ノ内線1,377千人 ③千代田線1,301千人 なお、都営では大江戸線977千人
・営業路線距離=①大江戸線40.7キロ ②東西線30.8キロ ③有楽町線28.3キロ
・駅別乗降人員(東京メトロ2019年度1日平均)=①池袋567,703 ②大手町365,972 ③北千住292,035
・駅間距離最短=丸ノ内線新宿-新宿三丁目0.3キロ
・駅間距離最長=千代田線町屋-北千住2.6キロ
・最深部駅=大江戸線六本木マイナス42.3メートル