ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『ライトハウス』

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(写真1 映画館に掲示されていたチラシから引用)

人間の極限を描く

 ライトハウスとは灯台のこと。
 舞台は、18世紀か、ニューイングランドの孤島の灯台。この孤島に二人の灯台守が渡ってくる。一人は初老の灯台守トーマス・ウェイクで、もう一人が灯台守の経験のない青年のイーフレイム・ウィンズロー。期限は4週間の契約で、報酬は千ドルと悪くない。
 ウェイクは灯台長のような役割で、ウィンズローをことごとくこき使う。水槽を洗い、壁を磨き、石炭を運ぶ。過酷な労働で、ウィンズローをいじめ抜く。ウェイクは灯りを守る役割に徹していて、灯室には鍵をかけておりウィンズローも入らせない。
 ある日、仕事の邪魔するカモメを追い払うが、ウェイクはカモメは不吉だからかまうなと警告するが、ウィンズローとカモメとの仲は悪くなる一方で、ついには殺してしまう。
 日が経つにつれウィンズローの気はすさんでいき、ウェイクとのあいだは険悪となっていく。
 ついには衝突もするが、明日には任期を終えて帰れるという前夜酒を飲んで迎えの視察船を見逃してしまう。
 嵐が続き、船が接岸できる様子にはない。ウェイクによれば、7カ月も帰れなかった事例もあるという。
 浜で人魚を見つける。人魚の誘いにつられて人魚を抱いてしまう。狂気が迫ってきている。
 ウィンズローの過去が露わになり、ウェイクの嘘も明らかとなっていき、やがて凄惨な争いとなる。
 孤島での生活。いつ来るとも知れない支援。二人の関係は険悪となり、人間の極限が描かれていて、終始息が詰まる。聖書の言葉が重要な意味を持っているのだが、私には残念ながらわからなかった。
 舞台となった灯台のこと。白色円塔形のレンガ造。どっしりとした存在感がある。デザインは欧米によくある伝統が感じられた。外壁を白く塗色している場面があったが、このような業務も灯台守自身が行ったものであろう。レンズは高さが2メートル以上もある大型のフレネル式だった。つまり、大型灯台ということになる。夜間、灯台の灯りが暗闇をさいて光っていた。
 画面は四角い。モノクロ。この映像がこの映画を第一級のものとしていた。鳴り止まない霧笛。人間を極限に追い詰めていく素晴らしい映画言語だった。
 また、ウェイクを演じたウィレム・デフォー、ウィンズローのロバート・パティンソン、出演者はこの二人だけなのだが、この二人の名優による鬼気迫る演技は特筆ものだったし、この演技がなければこの映画の緊張感は得られなかったであろう。
 ロバート・エガ~ス監督。2019年アメリカ映画。