ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

チキウ岬灯台

シリーズ 灯台慕情

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(写真1 チキウ岬灯台。断崖絶壁ぎりぎりに立っている=1988年9月30日)

地球が丸く見える断崖絶壁

 チキウとは、アイヌ語で断崖の意味があるという。なるほど、100メートルを超す断崖が絶壁となっており、ここに立つと地球が丸く見えるところから〝地球岬〟の愛称で呼ばれ人気の景勝地となっている。
 太平洋を北上してきた船舶は、尻屋埼灯台を過ぎると津軽海峡と太平洋の境目あたりを突っ切り恵山岬灯台で北海道に渡って初めての灯りを目にすることとなり、そのまま北上を続けると正面がチキウ岬灯台である。

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(写真2 麓の海岸から見たチキウ岬=2011年8月31日)

 鯨の尾びれのようにも見える渡島半島が大きく腰をひねって懐の深い内浦湾(通称噴火湾とも)を抱き込むと、チキウ岬はその東端に位置する。小さな半島だが絵鞆半島が室蘭港を天然の良港にしている。この半島は内浦湾に小さく左腕を突き出しており、ほぼ直角に曲げた肘のあたりがチキウ岬である。

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(写真3 JR室蘭支線母恋駅)

 チキウ岬へは、室蘭支線の母恋(ぼこい)が最寄り駅である。ぼこいとは旅を何とセンチメンタルにしてくれる名前か。ここはホッキ貝の駅弁が人気だったが、現在はどうか。
 母恋駅からバス便がある。道南バス地球岬団地行き。また、坂道にはなるが歩いても40分ほどである。斜面を切り拓いたような住宅地を登り詰めると、いきなり展望が開ける。太平洋である。

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(写真4 展望台にある電話ボックス)

 展望台になっていて、地球をデザインした電話ボックスがある。灯台は眼下にある。灯台は絶壁ギリギリに建てられてある。なぜに、どのようにしてこれほどまでにギリギリに建てたものかと驚く。当然、非常に見晴らしがいい。断崖は100メートル余りの高さとなっており、遮るものは何もない。思わず両手を羽のよう広げて飛び込みたくなる誘惑に駆られる。私は、断崖絶壁の岬に立つと飛び込みたくなるのだが、これほど誘惑を押さえ込むのに苦労する岬もない。晴れていれば遠く恵山岬が見える。また、内浦湾を挟んで対岸には小さい灯台だから見つけにくいであろうが砂原灯台も見えるはずだ。
 灯台は白堊の八角形である。灯台はさほど大型とは思われなかったが、調べてわかったことは、第三等のフレネル式レンズを持ち、実効光度59万カンデラ、光達距離は24海里(約44キロ)もある。海上の船舶からは大変頼もしく見えたのではないか。

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(写真5 チキウ岬周辺は奇岩巨岩が連なっている)

 また、海上の船舶からということでは、チキウ岬灯台周辺は奇岩巨岩が立ちはだかるように見えるのではないか。トッカリショ、イタンキなどと実に魅力的な海岸線となっている。海食崖によるものと思われ、海抜が100メートルを超すような断崖絶壁が14キロも連なっている。

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(写真6 鉄の街室蘭)

 鉄の街室蘭。白鳥大橋が港を跨ぐ港側からいったん尾根を越せば荒々しい海岸線となってその変化が魅力のチキウ岬灯台である。

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(写真7 断崖ぎりぎりに建つチキウ岬灯台=2011年8月30日

 

<チキウ岬灯台メモ>(灯台表、現地の看板、ウィキペディア等から引用)
航路標識番号[国際標識番号]/0088[M6745]
位置/北緯42度18分08秒 東経141度00分04秒
名称/チキウ岬灯台
所在地/
塗色・構造/白色 八角形 無筋コンクリート造
レンズ/第3等大型
灯質/群閃白光 毎22秒を隔て8秒間に2閃光
実効光度/59万カンデラ
光達距離/24海里(約44キロ)
塔高/15メートル(地上 - 塔頂)
灯火標高/131メートル (平均海面 - 灯火)
初点灯/1920年(大正9年)4月1日(当時のまま現存)
管轄/海上保安庁第一管区海上保安本部室蘭海上保安部
備考/日本の灯台50選