ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

霧多布岬は今日も霧

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(写真1 今日も霧が立ちこめた霧多布岬)
深い情感の岬
 道東の岬めぐり。納沙布岬からは花咲岬を訪ねた。ところが、いくら探しても灯台が見当たらない。カーナビにも出てこない。かつて一度訪れたことがあったのだが、情けないことに道順を忘れてしまったらしい。
 続いて落石岬へ。ここもかつて訪れたことがあったのだが、とても霧が深い。車が入っていけるのは途中までで、その先は約30分ほど歩かなければならない。そのことは知っていて覚悟の上だったのだが、道らしい道もないようなところを霧の中うろうろするのはいかがものか思い自重した。この岬は広い台地上になっていて、立派な灯台があるし、独特の景観が素晴らしいからとても残念だった。
 次に霧多布岬。その名の通り霧の深いことで知られるが、さてどうなるか。なお、ここまで花咲も落石も根室本線の沿線で、霧多布はやや離れてはいるものの浜中が最寄り駅である。
 このあたりは広大な霧多布湿原で、岬はその端っこにあたり、浜中湾に鋭く突き出ている。霧多布岬とは通称で、正式には湯沸岬といい、灯台名も湯沸岬灯台である。
 しかし、岬の付け根に当たる町名も霧多布だし、それに霧多布の方がロマンティックだ。また、実際、霧に包まれることが多くて、私はここは3度目だが、結局、すべて霧の中となった。
 岬の付け根から尾根伝いに急な坂道を登っていくと最高点に駐車場があった。やはり霧が深く、家族連れの親父が「きょうはあきまへんな」と関西弁で嘆いていた。しかも、この家族連れは岬の先の方へ行く気もないらしく、そのまま引き返していった。
 しかし、霧多布岬の魅力はここからなのである。しかも、何やら時折霧が晴れるではないか。これは、霧多布岬としてはまだ状況がいいと言わざるを得ないほどだ。
 岬全体が見渡せる少し離れた場所から展望するとわかるが、この岬は断崖絶壁が伸びて鋭く海に没している。断崖は50メートルも高さがあるのではないか。
 岬は、まるで恐竜の背中から頭に向かうように伸びていて突端に向けて遊歩道が続いている。

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(写真2 湯沸岬灯台が正式名称)
 途中、湯沸岬灯台があった。白い建物の上に赤い箱があり、その上に灯台の上部が乗っている構造だ。このあたりは雪も多いだろうから、視認性をよくするために赤い塗色を施したものであろうか。
 灯台を紹介する立て看板によると、灯台の位置は北緯43度4分38秒、東経145度10分4秒とあり、光り方単閃白光枚5秒に1閃光、光りの強さ820,000カンデラ、光りの届く距離19.0海里(約35キロメートル)とあった。また灯高は約12メートル、灯火標高が約49メートルとなっていた。
 なお、かつて訪れたときには霧笛の設備があったと記憶しているが、廃止撤去されたものらしい。

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(写真3 岩礁が沖へと伸びる霧多布岬の突端)
 灯台からさらに岬の先端に向けて細い道を下っていくと、時折、霧が流れて視界が開ける。やはり断崖絶壁となっており、突端は鋭く海に没し岩礁が伸びている。
 荒々しい風景で、岬好きの私としても深い情感を感じる素晴らしい岬だ。北海道に素晴らしい岬は多いが、ここ霧多布岬は間違いなくベスト5に入るであろう。
 また、灯台の周辺には断崖にへばりつくように花々が咲いていて、晴れていればいっそう美しい岬風景となったであろうと思われた。

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(写真4 断崖の急な斜面一面に咲く黄色い花。これはエゾキスゲであろうか)