ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

御坊の紀州鉄道

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(写真1 御坊駅0番線ホームに到着した紀州鉄道列車)

日本一短い鉄道

 紀州鉄道の鉄道路線は、御坊駅から西御坊駅に至るわずか2.7キロの区間で、営業距離で日本一短い鉄道会社である。千葉県に2.2キロの芝山鉄道があるが、同鉄道は全列車が京成電鉄との相互直通運転を行っており、純粋には紀州鉄道が日本一短いと紀州鉄道側は謳っている。
 ともかく乗車してみよう。JR紀勢本線の御坊駅1番線に切り込む形で0番線ホームがあり、これが紀州鉄道。中間改札もなくすべて車内精算。まるで、JRから分離した第三セクター鉄道のような趣き。
 1両のディーゼル車。ワンマン運転。土曜の夕方だったが乗客は2名。16時27分の発車。
  御坊を出るとすぐに学問という面白い名の駅。続いて紀伊御坊、市役所前とあって、終点西御坊着16時35分。この間わずか8分。

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(写真2 紀州鉄道終着駅西御坊)

 西御坊がある種すごい駅。まるで民家に突っ込んだ様子で停車した。1両分のホームしかなく、今にも崩れ落ちそうな古色蒼然とした駅舎。全国の鉄道すべての終着駅で下車したことのある私だが、何度訪れてもこれは傑作だ。
 もちろん駅前広場などなく、すぐ目の前が道路。まるで路面電車の停留所のようでもあるがれっきとした鉄道線である。
 その目の前の通りが商店街になっている。私はこの日は御坊に泊まったのだが、肝心の駅前に飲食店はなくて、夕食はどうしたものかと案じていた。電車の運転手に聞くと、実際、御坊の駅前には飲食店は少なくて、紀伊御坊や市役所前の方が多少はあるという話。ただし、宿泊するホテルが御坊駅前だがと話を続けると、御坊の駅前少し引っ込んだところにも居酒屋があるとのこと。
 それで、安心したわけでもないが、結局、折り返し電車でも途中下車することなく御坊まで引き返した。日本一短い鉄道路線だが、その鉄道に乗る旅もまたまことに短いものだった。
 それにしても、この鉄道は儲かっているのだろうかと不思議になる。実際、営業係数は日本の鉄道会社のなかで最も悪いのだそうで、輸送人員も1日あたり200人程度らしい。
 そうなると、どうやってやっているのだろうかということになるが、この会社は不動産部門やホテル部門の収益が大きく、鉄道事業はほんのわずかのものらしい。
 そもそも、鉄道会社の信用が欲しくて、ある不動産屋がこの会社を買収したらしいから、鉄道事業の採算など初めから度外視していたものなのだろうか。
 ただ、この会社のホームページを開くと、なかなか豊富な内容で魅力的。鉄道事業のページもファンが少なくないらしいし、フォトコンテストなどと言うことまでやっている。ホテル事業では、なるほど、熱海や那須塩原、箱根強羅、片瀬江ノ島、諏訪湖、伊豆、軽井沢などにホテルを経営している。
 鉄道路線が生き延びていくことは大賛成だし、鉄道に乗るのに、いちいち事業形態を気にして乗っているわけではないのだから、安全に運行さえしてくれればそれはありがたい。

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(写真3 こちらはJR御坊駅。紀州鉄道に乗るからと言ったら、改札を通してくれた)