ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

初夏の錦川清流線

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(写真1 どこまでも右窓に錦川が続く錦川清流線。路線名に恥じない素晴らしい景観)
旧岩日線の錦川鉄道
 錦川鉄道錦川清流線は、岩徳線の川西駅と錦町駅を結ぶ第三セクター鉄道路線。全線32.7キロ、駅数は13。なお、すべての列車が岩国駅発着である。旧岩日線を転換した路線で、当初は岩国駅と山口線の日原駅との間を結ぶ計画だったためにこの路線名が残った。
 5月25日8時29分、岩国駅0番線からの発車。JR駅1番線の端を一部切り取ったようなホームで、JR線から改札もなく乗り込めた。それもそのはず、ここはまだJR駅なのである。
 2両が連結されていたが、1両は回送のようで、残る1両のみの使用。ディーゼルのワンマン運転。
 岩国を出てすぐ右にそれ岩徳線に入った。岩徳線は徳山と結ぶ短絡線の位置にあるが、山側を通るため線形が悪いせいか、山陽本線は大きく迂回するルートながら海側の路線を取っている。
 岩国を出てすぐに西岩国。かつてはここが岩国駅だった時代もあった。次いで川西となり、ここまでがJR線。すべての列車は岩国駅発着だが、錦川清流線は供用ではなく方乗り入れの形となっており、運賃はJR線のものが適用される。
 錦川清流線に入って最初の駅が清流新岩国駅。山陽新幹線新岩国駅と近接している。私はかつてここで新幹線に乗り換えたことがあるが、二つの駅は徒歩で数分離れており、しかも、新岩国は新幹線駅にありながら駅前は閑散としていた。錦川清流線と新幹線のダイヤはリンクしていないし、おそらくこの駅で乗り換えた者は滅多にいなかったのではないか。
 列車は錦川の右岸を走っている。線名その通りに清流である。川底が車窓からでもはっきり見える。緑が美しく、乗っていて清々しくなる。幸いこの日は昨日までの雨も上がってさわやかになってきていたし。
 なかなかサービスのいい鉄道で、ところどころで車内放送で観光案内もしてくれる。北河内と椋野(むくの)間では左窓に滝があり、やや速度を落としてくれた。5段の滝で、清流の滝と名付けられているという。
 また、北河内では列車交換のため3分ほど停車していた。単線ながらこれが唯一の列車交換で、それほど運転本数が少ないということにもなる。
 どこまで行っても錦川は右窓にあり、広い川幅なのだが深さはさほどないようで、清流に対岸の景色が映っている。私は、川は鉄道の友だちという言葉をよく遣っていて、全国には素晴らしい川の景観を車窓に見せてくれる路線は少なくないが、これほど終始川と寄り添って走っている路線も少ない。

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(写真2 錦川鉄道の終着駅錦町駅)
 それが、ついに川を渡ったと思ったら、終点錦町だった。9時38分の到着。片面1線のホームがあるだけだったが、ホームには岩日線時代の鉄道信号機が残っていた。
 なかなか落ち着いた終着駅で、きれいな駅舎となっており、町の情報拠点の役割も担っているようだった。
 ところで、岩日線は錦町よりもう少し先まで工事が進んでいたのだが、ついに開業することがなかった。ところが、面白いことにこの未完に終わった路盤を利用し、「とことこトレイン」なるゴムタイヤの遊覧車を走らせているらしい。この日は平日のため運行されていなかったが、なかなかユニークな事業を行っているものだと感心した。それも運行距離が6キロもあるというから素晴らしい。
 9時55分発で折り返したが、もう少しぶらぶらしたい気にさせる終着駅だった。ただ、次の列車は12時31分発までないのであきらめた。
 なお、2両で来た列車は、やはり1両は回送車だったらしく、折り返した列車は1両になっていた。

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(写真3 錦町駅ホーム。左が岩日線時代の信号機)