ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

富山地方鉄道鉄道線

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(写真1 富山地方鉄道の起点電鉄富山駅)

全国第1位の中小私鉄

 富山地方鉄道(通称富山地鉄あるいは単に地鉄)は、富山県東部に路線網を有する中規模私鉄。鉄道線と市内電車の軌道線とがあり、総営業距離は107.2キロで、全国の中小私鉄で唯一100キロを超し第1位である。

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(写真2 鉄道線路線図=ポケット時刻表から引用)

 このうち鉄道線は、本線、立山線、不二越・上滝線の3路線がある。営業距離93.2キロ。なお、市内電車として運行され、軌道線と鉄道線が連続して運転されている富山港線はここでは鉄道線の路線網からは外した。
 本線は電鉄富山駅-宇奈月温泉駅間53.3キロ。この日は終点の宇奈月温泉から乗車した。宇奈月温泉には、東京からの北陸新幹線を黒部宇奈月温泉駅で下車し、クロスしている新黒部から向かった。少し戻ったことになる。新黒部は、新幹線の開業に合わせて開設された新駅。

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(写真3 勢いよく温泉が噴き出す宇奈月温泉駅前)

 宇奈月温泉駅は、宇奈月温泉の玄関口。駅前には温泉が勢いよく噴き出しており、とても情緒がある。手を差し込んでみたらちょっと熱かったが43度ほどか。黒部の電源開発に伴って開湯された温泉で、大きな温泉街がある。二度泊まったことがあるが、透明度の高いすべすべしたお湯だったという記憶がある。宇奈月温泉駅から徒歩数分のところに黒部峡谷鉄道の宇奈月駅があり、欅平までのトロッコ列車による山岳路線を楽しむことができる。この日も見ごろになった紅葉を求めて大勢の観光客が訪れていた。

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(写真4 宇奈月温泉で折り返す電鉄富山行き列車)

 宇奈月温泉駅は、1面2線のホーム。大半が折り返し運転の列車のようで、大部分は普通列車だが、特急や急行の設定もある。宇奈月温泉-電鉄富山間を普通なら約1時間30分のところ特急では約1時間15分だから随分と差が大きい。ただし、特急や急行は区間運転が大半だから全線乗り通すには本数が少ない。

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(写真5 北陸新幹線開業に合わせ接続駅として設けられた新黒部)

 宇奈月温泉を出ると右窓に黒部川を見ながら列車は進む。新黒部の一つ手前舌山で列車交換のため10分ほど停車していた。新黒部駅はすぐ先に見えている。車掌に話しかけたら歩いても5分ほどのところだという。新幹線への乗り継ぎを急ぐなら歩く人もいるかもしれない。
 その新黒部の次の長屋では、清酒銀盤の工場が見えた。富山で人気の清酒である。この先、電鉄黒部、電鉄石田、電鉄魚津などと電鉄の名がついた駅名が続いた。富山地鉄とあいの風とやま鉄道線が並行しているのである。この間、新魚津、滑川ではあいの風とやま鉄道線との乗換駅となっていた。西加積-中加積間で新幹線の高架をくぐった。

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(写真6 スイッチバック駅上市に接近する列車)

 上市はスイッチバック駅。登坂区間ならともかく平地でスイッチバック駅は珍しくはないが数は少ない。もっとも、秋田の大曲は新幹線駅なのにスイッチバックとなっているが。事情を知らないと驚愕する。

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(写真7 寺田駅構内。正面の建物は旧駅舎で、現在の駅舎は右手前奥にある)

 上市を出るとやがて寺田。本線と立山線との接続駅で、このため駅の構造がちょっと変わっている。ホームがY字形になっていて3面4線がある。駅舎側の片側1面1線の4番線が立山方面で、反対側の片側1面1線の2番線は宇奈月温泉方面で、間にある島式1面2線のうち1番線は宇奈月温泉から、2番線が立山からのそれぞれ電鉄富山方面である。
 この日は、宇奈月温泉から来て立山方面に乗り換えた。寺田を出ると五百石などというおめでたい名前の駅があってやがて岩峅寺(いわくらじ)。この間、左窓に冠雪した立山が見え、沿線には田んぼがあり、干した柿の熟している様子が見えた。

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(写真8 岩峅寺から立山に向かう途中右窓眼下に見えた常願寺川)

 岩峅寺もY字形のホームとなっており、不二越・上滝線の接続駅。そのまま乗車しているとやがて終点立山。途中右窓に常願寺川が眼下に見える。数十メートルもの谷になっており、河岸段丘であろうか。ここは立山黒部アルペンルートの起点で、ルート上最初の乗り物である立山ケーブルカーに接続している。季節も良し、本来ならルートを使って長野側に抜けたいところだが、残念ながらこの日は計画なし。

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(写真9 立山黒部アルペンルートの起点でもある立山駅)

 立山からは岩峅寺まで戻り、不二越・上滝線に乗り換え。本線の稲荷町から岩峅寺の間を結ぶ路線で、線区上、不二越線は稲荷町-南富山、上滝線が南富山-岩峅寺となっているが、不二越線と上滝線は一体運行されており、しかも、すべての列車の発着は稲荷町の一つ先の電鉄富山。

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(写真10 岩峅寺不二越・上滝方面ホームに停車中の列車。奥に見えるのは立山線列車)

 岩峅寺でY字形ホームの端から不二越・上滝線に乗車。夕方が近づいてきたら下校中の高校生でいっぱいになった。途中、南富山は市内電車との接続駅。乗り換える人たちであろうか、多くの人が降りた。鉄道線と市内電車との間には簡単な改札がある。同じ平面での乗り換えだから便利。
 稲荷町もY字形のホーム。今日はこれで三つ目だ。東京に比べ当地はやや日が長い。それで、稲荷町から寺田まで行って折り返した。この区間がつぶれていなかった。終点電鉄富山に着いたら薄暗くなっていた。(2020年11月11日取材)

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(写真11 薄暗くなってきた電鉄富山。3面4線のホームがある)