ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

人間・髙山辰雄展

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(写真1 会場で配布されていたチラシから引用=中央の絵は代表作「少女」)
森羅万象への道
 世田谷美術館で開催されている。
 髙山辰雄(1912-2007)は、大分県出身だが終生世田谷を拠点とした日本画家で、会場には過去最大規模となる約120点もの作品が集められており、「森羅万象への道」の副題のもと髙山の画業の全体がわかる内容となっていた。
 展示作品は、1934年から2007年まで70年余にわたって画業の全域にまたがっていたから一括りにするのは難しいが、印象に残った作品を一つ二つ、それも一言二言で。
 「砂丘」(1936)は藝大の卒業制作で、初期の作品にはこういうメリハリもあったのかと感心させられた。セーラー服の女性がモダンで、豊かな色彩はまるで油彩画かと思わせられた。
 「少女」(1979)は鋭い目が不気味さを感じさせる。全般にこの時期の作品は描かれる人物がひょろっと背の高いのが特徴で、幻想的であり、深遠な人間の内面が感じられた。
 初めて自画像を描いたという最晩年の「自写像二〇〇六」(2006)は、ステッキを手に立っているのだが、もはや輪郭もぼわっとし表情も定かではなくて、来し方を振り返っているのか、その心象は容易にはつかめなかった。

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(写真2 「夕」(1981)=会場で販売されていた絵はがきから引用)