ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

函館湾を守る葛登支岬灯台

日本海峡紀行

(写真1 大型灯台の葛登支岬灯台全景)

独特のレンズと灯質

 青森から函館を目指し海路を行くと北上を続け陸奥湾を抜け津軽海峡を渡って見えてくるのが葛登支岬(かっとしみさき)灯台である。函館湾の入口に位置し、ここで進路を右にとると函館港に入る。
 1885年(明治18年)初点灯という北海道では4番目に古い灯台だが、大変珍しい灯台で、日本初の明暗光の灯台だし、レンズもフランスのバルビエ・アンド・フェネストレ社製の第三等弧状不動十二面フレネルレンズでこれは日本唯一。

(写真2 灯台上部)

 ただ、これだけ由緒があり、津軽海峡に面し函館湾を睨む重要な位置づけをになっている灯台ながら、知名度は今ひとつ低くて、およそ観光客が訪れることなど稀。
 交通ははなはだ不便で、鉄道なら道南いさりび鉄道の渡島当別駅から徒歩約30分。バスはもっと不便で、函館駅から日中わずかに1本。

 

(写真3 函館バスの「灯台入口」バス停)

 私はこの灯台を訪れるのは二度目で、初めてのときは渡島当別から歩いたのだが、数十キロものリュックを背負っていたこともあって、帰途はすっかりばててしまったのだった。
 このたびは、函館駅からバスで向かった。函館バス13時41分発。日中1本しかないバスだが、函館湾をぐるっと回り込むように進み、幸い、灯台直下の国道228号線沿いにバス停がある。14時45分着。函館駅を出るときには10人ほどいた乗客もぽつりぽつりと降りていき、途中からはただ一人。あらかじめ運転士には「灯台入口」と下車する停留所名を告げておいたら、えっ、と軽く驚いた様子。1時間も走ってほぼ定刻の到着。

(写真4 灯台への坂道)

 灯台からはすぐに登り口。緩い坂道になっていて、歩くこと10数分で灯台。灯高が約16メートルもある大型の灯台だ。施錠された屏が回らされていて灯塔に触ることはできない。全国の灯台を巡っていていつも不満に思うことだが、灯台の敷地は開放して欲しい。

(写真5 海保が設置した灯台紹介の看板)

 日中なので光り方はわからないが、登り口にあった函館海上保安部が設置した案内板によると、この灯台は、不動レンズを回転させて明暗光を作り出している珍しいもので、全国でもここだけとのこと。見上げると、十二面フレネルレンズが美しい様子を示していた。

(写真6 眼前に広がる函館山。真っ白い船体はフェリー)

 海上に目を転ずれば、30メートルほどの高台にあるから見晴らしはよく、眼前に函館山が横たわっている。白い船体のフェリーが函館港に向けて進んでいる。
 帰途は、いつもなら歩くとことろだが、この日は寄りたいところがあったのでタクシーを呼んだ。あらかじめタクシー会社は調べておいた。

(写真7 トラピスト修道院の美しい杉並木。奥に修道院の建物)

 訪ねたのはトラピスト修道院。タクシーで約10分のところ。丘の斜面を切り拓いたようなところだった。斜面に沿って修道院に至るまっすぐな杉並木がとても美しい。
 ここはカトリックの修道院で、男子の修道院であり女人禁制。広大な敷地があって、牧場なども経営しているようだ。

(写真8 トラピスト修道院のソフトクリーム)

 敷地入口付近に売店があって、バターやクッキー、ジャムなどが販売されていて、これらは北海道を代表する土産品として人気があるのだという。名物のソフトクリームをいただいたが、なるほど、濃厚な味はうまいものだった。
 帰途は、渡島当別駅から道南いさりび鉄道で函館に戻った。

(写真9 道南いさりび鉄道渡島当別駅。郵便局と共用の駅舎)

(2022年10月12日)


<葛登支岬灯台メモ>(「灯台表」等から引用)
 航路標識番号0012(国際番号M6702)
 名称/葛登支岬灯台
 所在地/北海道北斗市葛登支岬
 位置/北緯41度4432秒 東経140度35分58秒
 塗色・構造/白色塔形
 レンズ/第3等大型フレネル式
 灯質/明暗白光 明毎6秒 暗4秒
 実効光度/4万9千カンデラ
 光達距離/17.5海里
 塔高/15.8メートル
 灯火標高/45.9メートル
 初点灯/1885年12月15日
 管轄/第一管区海上保安本部函館海上保安部