(写真1 演奏会を終えてロビーに出てきた森知英さん)
森知英さんの演奏
リストの「ピアノ・ソナタ ロ短調」を聴く機会があった。ピアノ曲の難曲中の難曲として知られ、滅多に演奏される機会が少ないほど。私もその存在は知ってはいたが生の演奏を聴いたのは初めてだった。
クラシック音楽に造詣の深い友人の話によると、特に女性ピアニストでこの曲を演奏会で曲目に選ぶ人は少ないのだとか。ラフマニノフのピアノコンチェルト第2番と双璧かもしれない。
演奏は森知英さん。1989年第8回ベートーヴェン国際ピアノコンクール(ウィーンで4年に一度開催)第4席入賞や1995年第13回ショパン国際ピアノコンクール(ポーランドで5年に一度開催)デュプロマなどと輝かしい実績を誇る。
いやはやそれにしてもすさまじいまでの演奏だった。一般的にピアノソナタは3楽章程度で作曲されるがこの曲は30分間を単1楽章での構成で楽章としての切れ目がない。
とにかく激しい。まるで格闘技だ。森さんの演奏は力強さに弛みはなく緊張が続く。時折挟まれるやさしいメロディーに涙ぐむほどだった。
とにかく熱演で感動だった。ピアノソナタでこの曲この演奏はなかなか体験できないのではないか。私はここ数年森さんのリサイタルをほぼ欠かさず聴いてきているが、この日の演奏ほど高揚感はなかった。森さんとしてもピアニストとしての一つの達成感が得られたのではなかったか。