ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『死刑にいたる病』

(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用)

阿部サダヲ好演

 主人公榛村を演じた阿部サダヲなくしてこの映画の成功はなかったと言えるほどの絶妙の配役だった。
 24人の若い男女を殺した連続殺人事件の犯人榛村は、このうち9件で立件され、死刑判決が下されていた。
 折から、雅也のもとに一通の手紙が届く。服役中の榛村からのもので、立件された9件の事件のうち、最後の事件は自分が犯したものではなく、真犯人を捜して欲しいというものだった。雅也は三流大学の学生で、中学生の頃、榛村が営んでいたパン屋に毎日のように出入りしていて面識があった。
 あらすじはこれだけ。しかし、この太い幹から、枝葉が次々と伸びていって息も切らせぬ運び。
 榛村の犯行は、被害者の爪を剥がすという凄惨なもので、直視に絶えないほどのものだが、犯行後は死体を焼き骨を埋めるという手口から犯行が明るみに出ることがなかった。
 こういう犯行は、秩序型連続殺人というのだそうだが、榛村は次第に犯行に慣れて慎重さに欠けるようになり、目撃者が現れるなどして犯行が明るみに出た。
 榛村は、おだやかな口調で物腰も柔らか。しかし、目は笑ってはいなく相手の心の奥を除くような不気味さがある。この役を演じて阿部サダヲにはリアリティがあった。
 一方、雅也を演じたのは、岡田健史。三流大学ということで親の期待にもこたえられず、親族が集まった法事の席にも呼ばれないような存在。
 鬱屈した生活を送っていたのだが、榛村の頼みを聞いて真犯人を捜し歩くうちに、雅也に心境の変化が現れる。非常に微妙な変化だったのだが、雅也はうなだれているだけではなく、強くなってきたのだった。このことは榛村も指摘していて、この変化が面白くて賛同できるのだった。
 物語は進むにつれて二転三転し、驚愕のラストシーンへと続く。
 監督白石和彌。