ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

清水浩史『楽園図鑑』

日本の絶景無人島

 楽園は、島にこそあるのではないか。とりわけ日本にあまた存在する無人島は、楽園そのものではないか。
 こうして、著者は37の島に渡っている。そこはどういう島だったのか。果たして楽園だったのか。これらの島々は、人口0人はもとより、公共交通機関などのアクセスがないところばかり。しかも、大潮の干潮時にしか現れない砂浜などというものもある。この島々について、著者はご丁寧にも★5つに段階づけて楽園度を示している。
 一つ拾ってみよう。
 百合ヶ浜(鹿児島県大島郡与論町)楽園度:★★★★★、面積:-(約0.7㎢)、周囲:-(約5.0㎞)人口:0人、アクセス:あり(与論島の海岸から渡船が随時運航)=与論島東部大金久海岸の約1.6キロ沖に浮かぶ。春から夏にかけて中潮から大潮の干潮時だけ姿を現す真っ白な砂浜。
 紹介されている島々は楽園ばかりだから当然だろうが、行ってみたくなるし、真っ白い砂浜の写真など見ると思わずうなってしまう。写真はすべて著者自身というのも素晴らしい。
 また、文章も紀行文として魅力あるし、よほどの読書家と見えて文中に引用されている書物も深淵に思えてくる。
 著者は冒険家だし、ロマンティストであろう。これまでの著作『秘島図鑑』や『深夜航路』なども好んで読んできたが、旅に独創性があって、しかも実行力がある。旅好きとしてはうらやましくなるほどだ。
 ただ、楽園というからには、そこに住んでみないと〝楽園度〟は実感できないのではないかと思ったりもした。
(河出書房新社刊)