ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

デイヴィッド・ロス『世界の美しい灯台』

224基の写真集

 灯台の魅力とは、灯台そのものが美しい造型を持つなど興味深い特徴を有していることや、灯台のある場所が独特の景観の中にあり美しい風景となっていることなどであろうか。また、灯台の放つ光そのものにも大きな魅力があろう。
 本書は写真集だが、灯台そのものは必ずしも足場のいいところは稀なもので、そういうことで取材そのものが容易ではなかったはずだが、困難な条件を克服しながら美しい写真の撮影に成功し、灯台の魅力が集められている。
 灯台は、季節や時刻によって刻々と表情を変えるもので、シャッターチャンスは幾重にも広がる。
 掲載されている灯台は、灯台ファンとしてはいずれも垂涎ものばかりで枚挙にいとまがないのだが、自分なりにいくつか強引に絞ってピックアップしてみよう。
 美しい灯塔ということでは、レ・パキ灯台(スイス・ジュネーブ)は、高さ17メートルの鋳鉄造八角形の灯台で、ライトアップされた姿は華麗だ。1896年の設置で、現役というのも素晴らしい。
 素晴らしい景観ということでは、ストロンボリッキオ灯台(イタリア・エオリア諸島)がすごい。古代に噴火した火山の残骸の上に立っており、すさまじい景観だ。
 ロケーションが面白いということでは、バーハビーチ灯台(ブラジル・バイーア州)は、背後にビル群が迫り、灯台は突端の要塞に囲まれている。
 ブランダリス灯台(オランダ・フリースランド州)も異色だ。湾に臨んでいるとはいえ、町の真ん中に高さ52.5メートルもの灯台がにょきっと建っている。まるで教会の塔のようだ。1321年建造というからすごい。
 ユニークなのは、ニードル灯台(イングランド・ワイト島)で、円形の灯塔の頂部は平らになっており、ヘリポートとして使われているという。
 いかにも美しい風景ということでは、ブレッセイ灯台(スコットランド・シェットランド諸島)か。白堊の灯台と付属施設がみどりの大地に広がっていて、晴れていればまるで一幅の絵画だ。
 灯質ということでは、緑と赤の等明暗光を4秒間隔で発するヴァーネミュンデ西防波堤灯台(ドイツ)が秀逸だ。
 掲載されているのは、北米アメリカやヨーロッパ諸国が多いが、御神崎灯台(沖縄県・石垣島)、神威岬灯台(北海道)、能取岬灯台(北海道)などと日本の灯台もいくつか載っている。
  神威岬や能取岬は私も行ったことがあるし、石垣島も訪ねたことはあるのだが、御神崎灯台というのは知らなかった。なお、神威岬灯台の写真は、岬の突端側から写したもののようだが、これでは竜が首をくねらしたような神威岬の不気味な景観は現せない。
 B5判という大きな判型だから写真にも迫力があって、何度もページをくくってみたくなる写真集だった。
(原書房刊)