ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

空也上人と六波羅蜜寺展

(写真1 空也上人立像=会場で販売されていた絵はがきから引用)

東京国立博物館で特別展

 空也上人立像(重要文化財)は、なかなかユニークな仏像だった。鎌倉中期、運慶の四男康勝の作とされ、遊行中の姿をリアリティたっぷりに表現されている。像高は120センチくらいか、腰をややかがめ、鉦を首から提げ、衣服は粗末で、わらじを履き、苦行の様子だ。鹿の角がついた杖を持っている。南無阿弥陀仏を説いて回ったという空也上人の生き様がよく表されている。特に面白いのは、口から1本の針金が吐き出され、針金には6体の小さな仏像がぶら下がっていて、一体一体が南・無・阿・弥・陀・仏の6文字を表しているという。
 空也は、平安時代中期の僧。飢餓と疫病に苦しむ京の町をひたすら南無阿弥陀仏と唱えて歩いたという。民衆からの支持も高かったようだが、驚くのは、この上人像が空也の死後250年も経ってから造られたということで、それにしては写実的だし、空也の人と活動を表して最高傑作ではないか。
 会場には、重文薬師如来座像や運慶作重文地蔵菩薩立像、重文伝平清盛座像など、10点の重文を含め魅力的な彫像が展示されていた。しかも、これらの仏像はすべて六波羅蜜寺蔵のもの。
 六波羅蜜寺は、京都のお寺。空也上人の開祖。本尊は国宝十一面観音菩薩立像。してみると、このお寺はなんと数多くの優れた仏像を有していることか。