ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

交通量多い明石海峡

日本海峡紀行

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(写真1 江崎灯台から見た明石海峡。多くの船舶が行き交い、対岸の明石ではビルが海際まで屹立しているのが見て取れる)

大阪湾と播磨灘をつなぐ

 紀伊水道、紀淡海峡、鳴門海峡と続いてきた淡路島に関わる四つの海峡巡りの四つ目。
 大阪湾と瀬戸内海の播磨灘を結ぶだけに海上交通量は多く、1日に1,400隻もの船舶が通過している。しかし、潮流が速く海難事故も多発している難所。
 大阪湾の西の入口にあたり、古来、舞子、明石などと風光明媚で、万葉以来数多くの歌や句に詠まれてきた。同時に、重要な海上交通路と併せ栄えてきた。
 交通路としての明石海峡は、兵庫県の明石市と淡路島の間に位置し、海峡幅は最狭部で約3.6キロとされ、潮流は時速7ノット(約13キロ)と速い。

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(写真2 明石海峡大橋を走る高速バス)

 明石海峡には明石海峡大橋が架かっていて一またぎしている。世界最長の吊り橋で、明石-淡路島間が全長3,911メートル。徳島から大鳴門橋-淡路島-明石海峡大橋を経て明石へと神戸淡路鳴門自動車道で一直線に結ばれている。徳島からは神戸、大阪、京都など関西各都市へ高速バスが頻繁に発着している。

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(写真3 高速道路上の高速舞子停留所)

 明石海峡大橋を渡り終えると最初の停留所が高速舞子。JRや山陽電鉄の舞子駅と直結していてとても便利。

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(写真4 淡路ジェノバライン明石港ターミナル)

 海峡は旅客船が運航されていて渡ることができる。明石からは明石駅から徒歩5分ほどの明石港から対岸の淡路島の岩屋港行きの淡路ジェノバラインが運行されている。高速双胴船である。

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(写真5 淡路ジェノバラインの双胴船)

 地元の人たちの足となる渡船で、気軽に行き来している様子がうかがえる。平日の日中だったからだろうが、若い人の姿は少なかった。通学している高校生の姿もあった。ほかに別料金だが自転車も乗せることができて、若者が淡路島島内ツールリングに出掛ける様子が多く見られた。この海峡を渡るにはこの渡船しかなく、かつてあったフェリーは今や廃止されている。

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(写真6 船上から見た明石海峡大橋。その世界最長の長さが実感できる)

 出航するとすぐに斜めに海峡を横切っていく。すぐに明石海峡大橋が見えてくる。世界最長の長大橋で、大橋が近づいてくるとその巨大さに圧倒される。それもそのはず、何しろ海峡を一またぎしているのだから。特に、海面上298.3メートルもある主塔の高さには感嘆する。なるほど、世界最大の鋼構造物である。

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(写真7 船上から見上げた大橋の補剛桁)

 やがて船は大橋の下をくぐって岩屋港へと入っていく。この間わずかに10数分。料金は530円。なお、大橋の下をくぐった際に見上げた補剛桁の巨大さには感動した。
 岩屋港の周辺は街になっているが、行きたいところは江崎灯台。4キロほど離れていて歩くと1時間ほど。タクシーがある。

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(写真8 江崎灯台の登り口にある小公園)

  灯台の登り口は小公園になっていて、高さ数メートルの灯台を模したモニュメントが立っていて、駐車場やトイレがある。

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(写真9 明石海峡大橋全景)

 ほぼ一直線の急な勾配の石の階段を登ること約10分で灯台。眼前に明石海峡が左右に広がっている。すぐ対岸には明石の街が迫っている。
 海峡に灯台は必ずというほどにあるものだが、なるほど、これほど対岸の近い距離は珍しい。明石側は、海際までマンションが屹立しているように見えるし、すぐ右横には明石海峡大橋が勇姿を伸ばしている。

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(写真10 江崎灯台全景)

 灯台はずんぐりしたつくり。半円形のように見えるが、実際は円形の灯塔に付属舎がついたもの。真っ白な大型灯台だ。塔高はさほど高くはないからレンズが間近に見える。日本における灯台の父ブラントンの設計で、同じような形のものは北九州の部埼灯台などもそうで、全国で時折見かける。
  灯台に貼り付けてあった初点銘板によれば、初点灯が明治四年(辛未)四月二十七日(旧暦)とあったが、これはいわゆる大坂条約で欧米列強と建設を約定した5基の洋式灯台のうちの一つで、御影石を使用した石造。最初の光源は石油ランプだったらしい。歴史的文化財的価値が高いところからAランクの保存灯台に指定されている。また、近代化産業遺産でもある。灯火は白色と赤色が交互に光る不動白赤互光という灯質。光達距離は白光18.5海里(約34.3キロ)赤光16海里(約29.6キロ)というからこの海峡を照らすには十分な能力だ。

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(写真11 江崎灯台から見た明石海峡大橋)

 灯台が建っているのは海抜40メートルほどの高台。眼下を通る船舶がよく見える。1日に1,400隻も通過するというほどに交通量が多い。この狭い海峡を通過する際には独自のルールがあるようで、全長50メートル以上の船舶は右側通行と定められているという。

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(写真12 船上からかすかに江崎灯台と丘の上に大阪マーチスが見えた)

 帰途、船上から岩屋側を振り返ると、江崎灯台と、丘の上に大阪湾海上交通センター(通称大阪マーチス)が見えた。

 この明石海峡のいいところは、海峡の町に風情があること。岩屋のフェリーターミナルの食堂で食べた穴子の天ぷらはうまかった。およそこのてのフェリーターミナルの食堂にうまいものは少ないのだが、ここの穴子の天ぷらそばは格別だった。焼き穴子なそうで、20センチもある穴子は身も引き締まっていてうまかった。
 一方、明石はタイやタコで知られるが、ここのタコ焼きは明石焼きというのだそうだが、卵でくるんだタコ焼きをスープに付けて食べるというもので、これは初めてのことで面食らった。

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(写真13 船上から見た明石海峡の夕暮れ。初めて訪れた2019年7月27日)