ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

映画『CODAあいのうた』

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(写真1 映画館に掲示されていたポスターから引用)

心温まる家族の物語

 漁師の一家。父と母と兄はろうあ者で、妹のルビーだけが健聴者という家族。毎日船を出して漁を営んでいる。ユーモアの絶えない家族で、ルビーは、耳の聴こえない家族のための手話による〝通訳〟の役割をになっている。
 17歳になった高校生のルビーは、進級してコーラス部に入る。指導しているのは顧問の先生。先生はやがてルビーの才能に気づき、音楽大学への進学を勧める。
 折から、ろうあ者だけで操業する船の規制が行われることとなり、ルビーはただ一人の健聴者として船に乗ることを決意する。
 しかし、兄はルビーが家族の犠牲になることに反対し、初め、自分には理解することのできない歌の世界に進もうとする娘の進路に悩んでいた父親も理解を示すようになる。
 音楽がとてもいい。ルビーの歌もいい。清らかさと力強さが一緒になったような印象だ。
 終盤、ルビーが音大の実技試験を受けている場面。大きなホールで3人の審査員を前に歌った歌は<青春の光と影>だった。私でも知っているようなジョニ・ミッチェルの名曲で、映画のストーリーを後押しするような内容だった。一般者は入れない会場だったのだが、途中で、2階席にこっそりと家族が揃って入ってきた。
 家族が入ってきたことがわかると、ルビーは手話を交えて歌うのだった。〝あなたさえいればそれだけで……〟感動が最高潮に達した場面で、ここで涙を流さない人はいなかったに違いないと思わせられた。
 映画では、ほぼ全編にわたって手話で会話されているのだが、これが苦にならない。出演者がろうあ者だったということもあったのか、リアリティがあり、滑らかさがあった。
 なお、題名のCODAとは、ろうあ者の親を持つ子どもという意味なそうで、同時に、音楽用語では、楽曲において独立してつくられた終結部分をいうとある。
監督・脚本シアン・ヘダー。2021年アメリカ・フランス・カナダ合作。