ABABA’s ノート

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ベートーヴェン聴き比べ

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(写真1 聞き比べを行ったCD全集。手前がバレンボイム

第5を7人の指揮者で

 ここのところ毎日ひたすらベートーヴェンのシンフォニーだけをCDで聴いてきた。ベートーヴェンに交響曲は9曲。それを著名な指揮者ごとに聴き通してきた。
 選んだ指揮者は次の通り。
 アルトゥーロ・トスカニーニ。オーケストラはNBC交響楽団。CDは6枚組で、レーベルはソニーミュージック。
 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー。5枚組のCD全集となっており、レーベルはワーナークラシックス。オーケストラは大半がウィーン・フィルハーモニー管弦楽団だが、中には、第8番がストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団、第9番はバイロイト祝祭管弦楽団のものが含まれていた。
 ヘルベルト・フォン・カラヤン。演奏はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。レーベルはドイツグラモフォン。CDは6枚。
 ブルーノ・ワルター。コロンビア交響楽団の演奏で、7枚組のCDはレーベルがCBSレコードを継いだソニークラシカル。
 ダニエル・バレンボイム。オーケストラは、シュターツカペレ・ベルリン。CDは6枚組で、レーベルはワーナークラシックス。
 ニコラウス・アーノンクール。CD80枚というベートーヴェンのTHE COMPLETE WORKSのボックスに収録されているCD1からCD5までの5枚が交響曲。演奏は、ヨーロッパ室内管弦楽団。
 これらは、いずれも20世紀から現代を代表する著名な指揮者ばかりだし、オーケストラも世界的にも知られた錚々たるものばかり。
 ここまで毎日聴いてきて、どの演奏が良かったのか、大胆にも聴き比べてみた。ただし、9つの交響曲全部で比較すると、私の能力には余る。もとより私は、音楽に造詣があるわけでも、格別の音楽の耳を持っているわけでもないから、聴き比べるなどということはそもそも生意気千万なこと。
 しかも、これだけ一流の演奏家が揃うと、容易には違いには聴き取れない。それで、9曲の中から1曲に絞ってみた。初め、3番や6番などは難しくて候補から外していたし、5番や7番などはわかりやすくていいのだが、味わいにかけるようだった。
 しかし、何度も行ったり来たりした結果、最終的には5番に落ち着いた。これまでにも何度も聴いてきて聴き慣れているということがまずあった。
 改めて5番だけを何度も聴いてみた。何しろ〝運命〟として知られる名曲である。
 トスカニーニ。きっちりしていてさすがに重厚である。1952年ニューヨークにおけるNBCの演奏である。演奏時間は29分23秒だった。とても短い。
 フルトベングラー。1954年ウィーンフィルの演奏。雄大で堂々たる演奏だ。全般にゆったりしている。音楽用語で何というのか、フェルマータとでも呼んでいいものか、尾を引くような長さが感じられる。演奏時間は何と35分56秒だった。トスカニーニに比べると長さが際立っている。同じ30分程度の曲で5分ほども違うのだ。
 カラヤン。1976年ベルリンフィル。スタジオ録音のようだ。演奏時間は29分52秒。カラヤンらしさが際立っている。歯切れがいいし音が澄んでる。迫力があり、勇壮で激しい。専門家によれば、このときのこの演奏はカラヤンの傑作と数えられるということである。
 ワルター。1958年ロサンジェルスで録音されている。コロンビアの演奏で、おおらかでフェルマータを伸ばしている。演奏時間は32分52秒。
 バレンボイム。1999年ベルリンおけるシュターツカペレの演奏。緻密であり、ダイナミックな演奏だった。演奏時間は36分01秒と長い。
 アーノンクール。ややおとなしい印象を受けた。オーケストラのヨーロッパ室内管弦楽団とは素晴らしく息が合っていた。演奏時間は36分19秒と長かった。
 ここに至ってベームが入ってないことに気がついた。ベームはベートーヴェンを指揮してときにカラヤンと並び称される指揮者。それで、カール・ベームについてはCD全集がなかったので、第4番と第5番が収録されているCDの単品を揃えたのだった。1972年ウィーンフィルの演奏で、ディテールが丹念で、伸びやかでありいい余韻が感じられた。演奏時間は35分ちょうど。
 演奏時間だけで云々するのはいかがなものかと思うが、30分を切っているのはトスカニーニとカラヤンで、35分超がフルトヴェングラー、ベーム、バレンボイム、アーノンクールだった。
 それで、7人の指揮者による演奏を聴き終わって、どれが自分にとって良かったか、選んでみた。とても難しいことだったが、どちらにしても素人のやること、自分の好みだけで選び出すとバレンボイムということになった。