ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

藪本晶子『絶滅危惧動作図鑑』

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見かけなくなった動作集

 うっかりすると〝絶滅危惧動物図鑑〟と早とちりしてしまうが、こちらは今は見られなくなった動作を集めたもの。
 井戸水をくむ、薪を割る、火をおこす、洗濯板で洗う、カツオ節を削る、チャンネルを回す、お風呂をかき混ぜる、切符を切る、うさぎ跳び、体温計を振る、そば屋の出前、ちり紙を揉む、小指で恋人を示す、メンコ遊び、スカートめくり、などとあって、これらはレベル5(やったことがない 日常生活で見たこともない動作)という絶滅が危惧される最上位のカテゴリーにくくられているもの。
 なるほどと思うものもあるし、そうかなと首をひねるものもある。
 絶滅の危惧度合いは低くなるが、テレビをたたく、打ち水、あやとり、自転車のライトをつける、そろばんで計算する、鉛筆をナイフで削る、ハタキではたく、牛乳瓶を開ける、缶切りで開ける、などとある。
 著者は27歳と若いからだろうが、和式トイレで用を足す、蛇口をひねる、マッチをする、通勤電車の押し屋、雑巾がけ、カメラのフィルムを巻く、ちりとりでゴミを集める、新聞を読む、地図を見ながら歩く、辞書を引く、布団を敷く、などが絶滅危惧動作に入っている。
 年配の者としてはまだまだ日常的動作に入っていておかしくないようなものもある。
 そもそも、20代でこの種のテーマは少々無理があるのではないか、そのように思えた。スマホが出てきたので新聞は読まなくなったというのは、若い世代のことで、人生10年やそこらの経験で社会事象全体をとらえるというのはいかがなものか。面白い着眼ではあったが。また、それぞれの言葉には動作を示すイラストが添えられているのだが、このイラストで動作を当てるのは難しかった。
(祥伝社刊)