覚え違いタイトル集
図書館の司書が、カウンターで利用者から問いかけられた問答集である。利用者はうろ覚えの記憶で本を探そうとするからこれが抱腹絶倒の面白さになっている。
そもそもは、館員同士の情報共有のために行っているものをウエブサイトで公開していて、本書はその覚え違いタイトル集を単行本化したものだが、問答の面白さばかりか、図書館利用の絶妙の案内ともなっていて楽しめる。
いくつか引いてみよう。
・『うんちデルマン』ってありますか。
『うんこダスマン』ですね。
「うんち」と「うんこ」、「でる」と「だす」、2カ所も覚え違いポイントが! 全部ひらがなやカタカナであっても見つけるのは案外難しいのが児童書です。
・村上春樹『とんでもなくクリスタル』はどこですか?
村上龍『限りなく透明に近いブルー』のことでしょうか。
ものすごく光り輝いていそうですね。村上春樹と村上龍の覚え違いは、意外と今でもよく発生します。そしてこの場合、『限りなく~』をご案内しましたが、実は田中康夫の『なんとなくクリスタル』をお探しだった可能性も?
・『国士舘殺人事件』ってあります?
『黒死館殺人事件』ですね。
大学でいったい何が⁉ でも、「こくしかん」で変換するとこっちが出ますよね。正解のタイトルは推理小説における「日本三大希書」に数えられる作品です。本書を含め、小栗虫太郎は書庫に保有してある本が今でも借りられる、長く愛され続けている作家です。
いろんな問い合わせがあるものだが、まるで謎かけのような相談にもきちんと対応している図書館司書はすばらしい。本書でも書かれているが、レファレンスの充実は図書館サービスの基本なのであろう。
問答集ばかりではなく、本書で参考になったのは検索の要領だ。
・「てにをは」が間違っていると図書館の検索では弾かれてしまうので危なかったです。ご自身で検索する際も、不安なときは助詞を抜いてキーワードで検索することをおすすめします。
・「ぼく」を漢字変換してしまうと検索では見つからなくなります。図書館で検索する際は全文ひらがなにするのがコツです。
私も週に一度くらいの頻度で図書館を利用しているが、司書の方々はとても親切だ。私が利用している図書館は町の中にある市立の図書館で、県立の図書館とは比べものにならないほどの規模だが、蔵書数が約50万冊。近隣の市立図書館とも連携しているし、蔵書数ということでは100万を超すのではないか。歩いて行ける範囲に図書館があるというのは、とてもありがたいし大切なことだ。
(講談社刊)