(写真1 紅葉が美しい実相院の庭)
岩倉実相院門跡を訪ねて
信楽で全鉄道全線全二周を達成した翌日は、京都をぶらついた。
ちょうど紅葉の季節だが、あまり混んでいるところも嫌だし、あちこち何カ所も歩く気もなかったので、一カ所ということで少々遠くてもいいと思い初めてのところを探した。
それで見つけたのは、岩倉の実相院。門跡寺院で、20年ほども前になるか、管宗次著『京都岩倉実相院日記』(講談社選書メチエ)を読んで、いつの日か実相院を訪ねてみたいものだと思っていた。本書は、実相院の坊官である下級貴族が綴った幕末の世相だが、無類の面白さの巻末の結びに、「もし実相院を訪れるなら、……紅葉のころが特にすばらしく」と筆者によって記されてあった。
洛北岩倉にあり、地下鉄烏丸線の終点国際会館からバス便があるとのこと。国際会館には10月下旬に来たばかりだったが、そのときには紅葉を見る余裕もなかったし、まさか一ヶ月後に実相院を訪ねるなどとは夢想だにしていなかった。
時刻を調べもしないで来たのだが、バス停に30分も並んでいたら、乗客の列が長く伸びていた。京都バスで終点実相院下車すぐ。
あいにくの雨だったが、それなりに訪れる人は多くて、まさかこんなに人気の寺院とは思っていなかった。門跡だからであろうか。
ひっそりとした寺院で、少なくとも参観できる場所はさして広くもない。しかし、それだけにお寺の佇まいが身近に感じられて好ましい。
(写真2 庭に面して大きなガラス窓。この日は寒かったからストーブがありがたかった)
紅葉は庭に面して佇んでいると味わいが増してくるようだった。ただ、雨が降っているせいか鮮やかさにはややかけるようだった。それでも、帰途には雨も上がっていて、玄関を出ると燃えるような紅葉だった。これが実相院なのだと感じた。
(写真3 雨上がりの紅葉には光が差してキラキラと輝いていた)
床もみじといって、庭の景色が室内の磨かれた床に映る様子は、なるほど評判通りの美しさだった。ただし、写真撮影は許されなかった。
(写真4 実相院の門)
なお、帰途は、三条にあるイノダコーヒーに寄った。すぐ近くには本店もあるのだが、この支店の佇まいが良くていつでもこちらにしている。京都に来たときには時間の許す限り寄っていていつしか馴染みである。
円形のカウンター席が好きで、この席ならコーヒーを淹れている様子が間近に見られる。とくに、しゃもじでお湯を注いでいる様子はちょっと感心する。
この店のメニューのトップはあらかじめ砂糖とミルクを注いだブレンドコーヒーだが、私はブラックが好みなので、コロンビア産のブレンドコーヒーにしている。ただ、出てきたコーヒーはとてもぬるくて、思わずそのようにつぶやいたら、聞こえたのか、すぐに熱いものと差し替えてくれた。何事に寄らず熱いものが好きで、特に風呂とラーメンとコーヒーは熱いに限る。
(写真5 イノダコーヒーの円形カウンター席。中央でしゃもじを手にコーヒーを淹れている様子)