ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

戸田泰生画『陽春』

 

f:id:shashosha70:20210917120315j:plain

(写真1 100号の大作<陽春>)

第50回純展出品作

 毎年開催されてきた公募展「純展」も昨年はコロナの影響で開催が見送られ、今年は2年ぶりの開催となった。会場は上野公園の東京都美術館。
 純展は毎年秋に開催されていて、関東地方からの出品が大半だが、今回は160人ほどの出品で、コロナの影響か前回に比べ3割ほど少なかった。また、今回は50回記念ということでトルコなど海外からも30数人の出品があった。
 戸田さんの<陽春>は、会場に入って最初の作品で、しかも、100号の大作であり会場に入ってすぐに目立った。戸田さんは、この純展でかつて最高賞を受賞したことがあり、そういうことで敬意を持って迎えられているのであろう。
 作品は、画面手前に黄色い菜の花と、奥に薄紅色の桜の花が咲いていていかにも春を感じさせる。白壁瓦屋根の家が建ち並びコンストラクトがはっきりし奥行きに広がりがある。
 私はこの10数年来戸田さんの絵を見てきているのだが、戸田さんの特徴は画題が多彩であること。
 今回のように風景があったり、都会の人々が交差する情景が描かれていたりとにかく変化が大きく、見ていて楽しい。沖縄の闘牛を臨場感たっぷりに描いた作品もあった。いずれもディテールがしっかりしているのが特徴。
 それで感心するのは、いずれの場合でも100号ほどの大作が多くて、画題の追求もさることながら戸田さんのエネルギーには驚かされる。また、このごろではアクリル画にも挑戦しているというからその創作意欲は素晴らしい。
 戸田さんとはかねて昵懇の間柄。同じ業界にいて駆け出しの頃から可愛がってもらってきた。
 戸田さんは85歳。高校大学時代から絵は好きだったようだが、会社勤めをしていた時代は絵筆を握ることはなかったが、70歳で社長を退任してから本格的に取り組み初め、それも美大を目指す若い学生が通う教室で基礎から学んだという。
 そういう下地があって、このごろはアトリエ三昧の日々のようだが、老後に熱中できる趣味があるというのもいいものだ。もっとも、戸田さんの絵は趣味の領域ではなくてすでに玄人のものだが。

f:id:shashosha70:20210917112456j:plain

(写真2 会場で戸田さんの作品を背景に戸田さん=左と)