ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

ああ辺戸岬灯台!

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(写真1 生い茂った樹木のなかにひっそりとたたずむ辺戸岬灯台)

岬と離れた場所にひっそりと

 辺戸岬に辺戸岬灯台はない。もちろん、大きくは辺戸岬のうちなのだが、岬の突端付近には見当たらなく、後ろを振り向いて後背地を探しても見当たらないのである。沖縄本島最北端を目指してきた者ならば、誰しも突端にある大きな石碑〝祖国復帰闘争碑〟周辺から海上遠く鹿児島県の与論島を望むであろうが、辺戸岬灯台についてはその存在にすら気にかけることはない。
 灯台は、帰途、国道58号線を那覇に向かっていくと2キロほど離れたところ右側、つまり、那覇から直接灯台を目指せば、辺戸岬の手前にひっそりとある。ただし、国道からは数百メートル入り込んでいるし、生い茂った樹木に覆われていて灯台には気がつかない。
 というよりも、探してもなかなか見当たらない。私はこれまでに3度辺戸岬を訪れそのつど辺戸岬灯台を探したが、初めて訪れた2007年にこそ灯台に行き着けたものの、その後は2度も探しきれなかった。国道から海岸に向かう道は数本あって、雑草に轍の跡がかろうじてあるだけで、なかなか灯台に行き着く道を探しきれない。冬枯れの季節ならばと2016年にはわざわざ11月に豪雨の中を目指したがたどり着けなかった。
 こうなると、もとより辺戸岬そのものは魅力的な岬なのだが、何としてでも灯台にたどり着きたいと願うようになり、辺戸岬灯台踏破こそが目的となったほどだった。
 辺戸岬を目指した4度目のこのたび。カーナビが役に立たないことはこれまでの経験でわかっていた。それで、緯度経度をあらかじめ調べ、GPSを用意した。このことに関してはこのごろのスマートフォンは優秀だ。
 それに、辺戸岬にあった観光案内所で中年の男性職員に灯台の場所を尋ねたところ、「辺戸岬灯台は藪の中にあり、なかなか危険だし、おすすめできません」とのこと。しかし、灯台が目的なのだと強く粘ったところ、砂利を敷いた道があるからそこを入っていくと良いとのこと。

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(写真2 車が駐車できる程度にわずかに開けた場所から灯台が上部をのぞかせていた)

 教えられた通り、なるほど砂利道がある。これまではなかったはず。GPSも機能している。そのまま進んでいくと、背の高い藪と生い茂った樹木に覆われてはいたが、かまわず突き進んでいくと藪がわずかに開け、車が2台駐車されているし、何やら観測施設のような建物が2棟もある。これも以前はなかったもの。
 ここに車を停め、周囲を見渡すと、何と、ここからは灯台の先っぽが見えるではないか。
 思わず藪の中を漕ぐように突き進んでくとほどなく灯台が藪の中にたたずんでいる。おすすめできませんとは言われたものの、この程度の藪漕ぎは灯台ファンたる者覚悟のこと。

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(写真3 簡単な塔屋の上に乗った灯塔)

 14年ぶりの辺戸岬灯台である。ひょろ長い灯塔。台の上にのっており地上から10メートルほどか。はしごが付いている。灯室は小さく、灯器はLEDであろう。

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(写真4 灯塔上部)

 近寄って見たくとも、鉄製の屏が敷地を囲み門扉は施錠されている。門扉の脇に辺戸岬灯台の表示。

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(写真5 門扉のそばには紛れもなく確かに辺戸岬灯台の表示)

 また、屏を伝っていくと、塔屋に初点銘版らしきものを目撃できた。デジタル画像を拡大したところ、やはり初点銘版で、辺戸岬灯台 初点昭和36年7月とあった。

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(写真6 塔屋の壁面に簡単な初点銘版=写真はデジタル画像をトリミングしてある)

 灯台の周囲は生い茂った樹木に覆われていてまったく視界は開けない。だから、この灯台が東シナ海を照らしていることは地図でわかってはいても、実際に海を見ることはできなかったし、どの程度の高みにあるものか見当もつかない。
 ちなみに、辺戸岬は東シナ海と太平洋を分かつような位置にあるのだが、この辺戸岬灯台は、東シナ海に面しており、沖縄から奄美諸島に向かう航路上の必要性からこの位置に設置されたものであろう。ただ、この灯台が辺戸岬に建てられたものであれば、岬と灯台がセットになって、辺戸岬の魅力がもう少し増したのではないかと勝手な思いを持ったのだった。
 何はともあれ辺戸岬灯台は確認できた。その姿は初めて訪れたときとまったく変わっていなかった。車を駐車した場所に観測施設のようなものがあったが、この施設に出入りするために国道から砂利道を整備したものであろう。これによって辺戸岬灯台踏破は随分と容易になった。(2021年8月4日訪問)

<辺戸岬灯台メモ>(灯台表、海保HP等から引用)
航路標識番号/6983
位置/北緯26度52分0秒 東経128度14分8秒
名称/辺戸岬灯台
所在地/沖縄県国頭郡国頭村
塗色・構造/白塔形
光源/LED
灯質/単閃白光 毎6秒に1閃光
光達距離/12海里
塔高/11メートル
灯高/71メートル
初点灯/1961年(昭和36年)7月
管轄/第十一管区中城海上保安部