(写真1 代表作の<蝋燭>=福岡県立美術館蔵。会場で販売されていた絵はがきから引用)
生誕130年記念
高島野十郎は福岡県久留米市出身。1890年生まれ。異色の経歴の持ち主で、東大農学部を卒業しながら画家の道を志した。しかも、絵は独学。
出品物を見て驚いた。おおむね制作年代順になっているようだが、1点目<絡子をかけた自画像>(1920)がすごい。あまりに鋭い眼光におののくほどだ。30歳のときの作品だが、絡子とは禅宗の僧侶が用いる前掛けのようなものだろうが、どういう理由でこのような衣装を選んだものか判然としないが、そんなことよりも風貌の厳しさ、描写の緻密さが際立っている。私はいつでも自画像に関心が高いのだが、これほど見ている者を凝視した自画像も少ない。
りんごや月、蝋燭が生涯にわたるモチーフだったようで、たくさんの連作が残されている。
<蝋燭>は6点が出品されていたが、モチーフばかりか構図もほとんど似ている。ただ、子細に見ると、蝋燭の炎の長さなどが微妙に違うようだ。揺らぐ炎に何を託したものか。仏教に強い関心を持っていたというから、灯明の意味を持っていたものかも知れず、安寧を願っていたものかも知れない。
これまでこの画家のことは知らなかった。没後130年記念ということで全国5会場を巡回しているようだ。私は、高島が最晩年に住んでいたという千葉県柏市の会場で見た。
自画像の絵はがきが欲しいと思ったが、残念ながら会場では販売されていなかった。