ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

角島灯台(山口県下関市)

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(写真1 すらりと背の高い角島灯台)

重要文化財指定現役灯台巡り③

 角島(つのしま)は、山口県北西部の島。現在は2000年に完成した角島大橋によって結ばれている。海域としては日本海のうち響灘の北のはずれということになる。角島とは、島の東西にある二つの岬が角のように見えるところから名づけられたらしい。角島灯台は、この二つの岬のうち西の夢崎にある。

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(写真2 角島灯台への最寄り駅滝部駅)

 角島灯台へは、山陰本線の滝部駅あるいは特牛駅からバス便がある。ただし、便数が非常に少なく、慎重に時刻表を検討する必要がある。

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(写真3 本土から角島に渡る角島大橋)

 滝部駅7時58分発。始発で、角島を巡回して戻ってくるルート。乗客1名。つまり自分だけということ。あらかじめ運転士に下車したい停留所名を知らせておいた。30分ほどすると角島大橋にかかった。見事なコバルトブルーの海に長い橋が架かっている。全長1,780メートルもある。さらに進むと、角島灯台公園前。運転士が声をかけてくれて、灯台への道順を教えてくれた。
 すぐに灯台が見えてきた。バス停から徒歩10分ほど。すっくと立ち実に美しい灯台だ。全国に姿のいい灯台は数多くあるが、これは五指に入るのではないか。感動する。

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(写真4 角島灯台の初点銘版。明治九年三月一日とある)

 しかも、145年前の完成当時のままの姿だというから驚く。初点灯が1876年(明治9年)である。
 ブラントンの設計で、このたび重文に指定された4基の灯台はすべてブラントンの設計によるものだ。ブラントンはイギリス人技師で、この角島灯台を設計した当時は34歳だったようだ。7年余の滞在中、26もの灯台を手がけていて、この角島灯台が最後の仕事だったという。その名の通り「日本の灯台の父」である。

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(写真5 海側から見上げた灯台)

 灯台は、高さ(地上-灯頂)が29.62メートル、灯火標高(平均海面-灯火)44.66メートルとなっており、大変背が高い。15メートル程度の台地に立っているので高い灯台にしたものであろうか。
 花崗岩による石造で、堂々として風格がある。上部に独特のデザインがあって、西洋の列柱に見えなくもない。
 半円だが、両腕を伸ばして測ってみたところ18尋(ひろ)ほどあった。尋とは両腕を伸ばした長さのこと。170センチある自分の身長から勘案すると約30メートルということになる。前日訪れた部埼灯台よりは断然太い。

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(写真6 巨大な第1等フレネルレンズがわずかに目撃できる)

 灯台は登ることができる参観灯台で、展望デッキに立つと、眼下に日本海が大きく広がる。快晴だからであろうか、日本海にしては波が静かで、碧い海が美しい。灯台の魅力が増す瞬間だ。階段の終わりあたりからレンズがちらっと見えた。日本に5基しかない第1等フレネルレンズである。また、クヅ瀬照射灯という設備が付属している。

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(写真7 クヅ瀬照射灯)

 灯台のほか、現在は記念室として使われている灯台守の旧退息所や倉庫なども重文に指定されている。

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(写真8 ブラントンの座像がある展示室)

 記念館には、ブラントンの座像があり、業績を讃えた展示が行われていた。展示室には第1等フレネルレンズの模型があって、高さが2メートルもあろうかという大きさで驚くほどだった。

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(写真9 重文に含まれている旧退息所。現在は記念館となっている)

 周辺は、角島灯台公園として整備されていて、自生しているというハマユウが美しい白い花をたくさん咲かせていた。

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(写真10 ハマユウが咲き誇る公園から遠望した灯台)

                        (2021年7月20日取材)

<角島灯台メモ>(灯台表、現地の看板、ウィキペディア等から引用)
航路標識番号[国際標識番号]/0715[M7397]
位置/北緯34度21分1秒 東経130度50分5秒
名称/角島灯台
所在地/山口県下関市豊北町角島
塗色・構造/無塗装塔形、石造(花崗岩)
レンズ/第1等大型フレネル式
灯質/単閃白光 毎5秒に1閃光
実効光度/閃光67万カンデラ
光達距離/閃光18.5海里(約34キロ)
明弧/352度-232度
塔高/29.62メートル
灯火標高/44.66メートル
初点灯/1876年(明治9年)3月1日
管轄/第七管区海上保安本部門司海上保安部