ABABA’s ノート

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内田康夫財団事務局『須美ちゃんは名探偵!?』

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浅見光彦シリーズ番外

 須美ちゃんは、浅見光彦シリーズ常連の登場人物。浅見家のお手伝いさんであり、浅見光彦を「坊っちゃま」と呼んでいる。
 浅見光彦シリーズは、内田康夫の人気シリーズで、生涯に執筆したシリーズは100編を数え、累計発行部数は1億部を超すといわれる。
 浅見家は、長男の警察庁刑事局長浅見陽一郎を主人に、奥様の和子夫人、智美、雅人の子どもたち、大奥様の雪江未亡人、そして次男の居候光彦の面々。須美ちゃんこと吉田須美子は、新潟の高校を出てすぐに浅見家に来て、住み込みで働いて9年になる。
 浅見家のあるのは北区西ヶ原。物語はここが舞台。須美ちゃんの行動は日常範囲の中だからいつもの商店街が中心。いつもの浅見光彦シリーズなら名探偵光彦が活躍するのだが、ここでは須美ちゃんがご近所の謎を鮮やかに解いてくれる。短編4話が収録されており、いずれも心温まる物語ばかりだし、須美ちゃんファンには快哉を叫ぶところだ。
 第一話花を買う男は、4話連作のプロローグみたいな物語で、商店街にある行きつけの生花店花春。女性店主育代は夫を亡くし一人で切り盛りしている。この店に毎日のように花束を買いに来る紳士は、「百人一首の謎を読み解く」という生涯学習講座で一緒になった元帝大教授日下部。日下部の買う花束は毎日組み合わせが変わっており、これが百人一首とかけてあって、須美ちゃんが解いた謎解きが育代と日下部の大団円となっている。
 ここに収録されている物語は、浅見光彦ファンクラブの会報「浅見ジャーナル」に掲載されたもの。内田康夫自身は公認はしているものの、著者ではないようだ。
 実は、私も浅見光彦シリーズのファンで、100冊を超すシリーズの全作を読んでいるからなかなか熱心な読者。深い謎解きがあるわけではなく、読み続けていると内田の物語の運び方がわかって犯人ばかりか結末までもがわかるようなこともたびたびだったが、各地を題材にした旅情が旅好きにはよくって好んで読んできた。
 本作もたわいもないような物語だが、これほど肩の凝らないミステリーも珍しいというほどで、ほっこりとした温かさを感じたのだった。
(光文社文庫)