ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

都電荒川線 つたい歩き①

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(写真1 美しいバラに囲まれた都電荒川線起点三ノ輪橋停留場)

三ノ輪橋から荒川車庫前へ

 つたい歩きとは、鉄道線路に沿ってひたすらつたい歩くこと。鉄道には乗らない。コロナ下のこと、鉄道旅もままならず、これは鉄道好きとしては窮余の一策。しかし、これはこれで楽しくて、これまでに新京成線(千葉県松戸駅-京成津田沼駅間全長26.5キロ)と流鉄(千葉県馬橋駅-流山駅間全長5.7キロ)の沿線をつたい歩きしてきた。
 3回目の今回は、都電荒川線。三ノ輪橋停留場-早稲田停留場間全長12.2キロ。初めての都内、それも路面電車のつたい歩きである。路面電車は、その名の通り街の中の路面を走る鉄道。同じレベルを歩くわけだし、そのつたい歩きはどのようなものになるものか。

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(写真2 都電荒川線入口。左の建物はかつての都電営業所跡らしい)

 梅雨入りはまだしてないもののどんよりとした曇り空の5月17日起点の三ノ輪橋停留場から出発。停留場は地下鉄日比谷線三ノ輪駅が最寄り駅。改札を出て日光街道を北に向かい常磐線のガードをくぐると、都電荒川線入口の案内が出てくる。徒歩5分ほど。アーケードとなっている三ノ輪橋商店街の始まりであり、長いアーケード街には〝都電屋〟なる珍妙な看板も見える。
 都電三ノ輪橋停留場周辺はきれいに整備され、美しいバラの花がいっぱいに咲き乱れていてまことに美しい。公衆トイレもあり、ホーム脇には喫茶店があり、小さな神社もある。〝関東の駅百選〟に認定されている。
 9時56分、歩き出した。線路は専用軌道だが、幸い、両側には道路が沿っている。ほどなく荒川一中前。この間、わずか300メートル。普通鉄道とは違って、停留所間の距離は短くて、およそ500メートル間隔。路面電車ならではの距離だ。

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(写真3 線路沿いには途切れることなくバラの花)

 線路沿いには途切れることなくバラが植えられており、ちょうど見ごろで美しい。荒川線は、東京さくらトラムという愛称がついているが、このあたりに限れば〝バラトラム〟というにふさわしい景観だ。ところどころに都電沿線のバラという看板が立っていて、咲いているバラの種類がカラー写真で紹介されている。荒川区の事業らしく、荒川区ではバラによる緑化事業を推進していて、三ノ輪橋停留場から北区との境までの間に13,000株以上を植栽しているとのこと。
 やがて荒川区役所前。並行する明治通り沿いにはサンパール荒川(荒川区民会館)。大きなホールがあって、先月、孫のバレーの発表会があって訪れていたばかりだった。

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(写真4 荒川二丁目。右が下水処理場)

 次が荒川二丁目。右の線路沿いには下水処理場。広大な施設で、付近一帯は荒川自然公園として整備されている。また、左の道路沿いにはゆいの森あらかわ(荒川区立図書館)。荒川区は図書館が充実していることで知られるが、ここは中央図書館的存在か。図書館に一歩足を踏み入れてわかったが、この図書館は子ども向けの蔵書が充実しているほか、閲覧も子どもたちがしやすいように工夫されている。また、吉村昭記念文学館が入っているが、この日は、コロナ感染予防のため文学館は閉館中だった。何ともつまらぬことだ。

 荒川七丁目。右手線路沿いに大雄山泊船軒という珍しい名の禅宗のお寺があった。臨済宗らしく古刹のようだ。

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(写真5 京成のガードをくぐる都電)

 やがて町屋駅前。地下鉄千代田線と京成電鉄の町屋駅がある。千代田線は地下駅、京成は地上駅である。駅前は商店街となっており、ちょっと早いがここで昼食休憩。11時30分再開。
 沿線には佃煮屋などがあっていかにも下町の風情。町屋二丁目、東尾久三丁目と進むと、これは何とも珍しい三味線の専門店。製造、修理とある。このあたりで、脇道に入っていたりするうちに方向を見失ってしまった。通りかかった女子高生に尋ねると、同じ方向なので案内しますととても親切。しかし、方向さえわかればいいので案内は断ったが、すらりと背の高いセーラー-服の似合うかわいい女の子だった。

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(写真6・7 右に熊野前停留場と正面は日暮里・舎人ライナー熊野前駅<上>と尾久橋通りの交差点を渡る荒川線電車<下>)

 やがて熊野前。高架で走る都営の日暮里・舎人ライナーとクロスしている。また、電車は尾久橋通りを斜めに横断した。なお、このあたり、隅田川あるいは荒川にも近いはず。

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(写真8 尾久八幡神社の社)

 続いて宮ノ前。停留場の前には尾久八幡神社。その名の通りお宮さんの前にある停留場。尾久の名もここからついたか。警察署や消防署もあって尾久の中心のようだ。

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(写真9 縁石で区分された小台付近の併用軌道区間を走る電車)

 荒川線は、路面電車ながら専用軌道部分が長く、併用軌道部分はわずかに二カ所。その一つが熊野前-宮ノ前-小台間約700メートル。通称都電通りとも呼ばれるところだが、線路は縁石で一般道路と区分されており、自動車が入り込んでくる余分はない。線路の確保がきちんと守られている。

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(写真10 荒川遊園地前停留場そばにあるオブジェ)

 荒川遊園地前に至ると、停留場の右手に逆立ちしたオブジェがあった。プレートには本田貴侶作「聖なるもののリピドー空へ」(1982)とあり、髙村光太郎大賞優秀賞とある。

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(写真11 緑化された専用軌道敷き)

 再び専用軌道となり、ほぼ一直線に進み依然として線路の両側にはバラの花が咲いている。また、軌道敷きには芝生が植えられ緑化されている区間もある。

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(写真12 道幅1メートルにも満たないような小さな踏切)

 また途中には、道幅1メートルに満たないような小さな踏切もあって遮断機も下りていた。また、プラレールが走るレストランや南インド料理というどういう料理なのか見当もつかないようなレストランもあって沿線の表情は豊かだ。

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(写真13 都電荒川車庫。この日は出払っていて留置車両は少なかった)

 そうこうして荒川車庫前。都電の車庫である。本線から車庫に入る渡り線もあってなかなか風情がある。
 この停留場では、乗務員交代の様子も見られた。都電はワンマン運転なのである。なお、この車庫の一角には都電思いで広場があり、古い車両が静態展示されているのだが、この日はコロナの影響で閉鎖されていた。

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(写真14 乗務員交代の様子が見られる荒川車庫前停留場)

 都電荒川線は、荒川区、北区、豊島区、新宿区にまたがっているのだが、起点の三ノ輪橋からここ荒川車庫前までが荒川区内。起点から4.6キロ。荒川区は、東京23区内で最も住みよい区との評判があるが、なるほど、つたい歩きをしただけでも実感できるような様子だった。