ABABA’s ノート

旅と鉄道、岬と灯台、読書ときどき映画あるいは美術に関するブログです。

大野萌子『言いかえ図鑑』

 

f:id:shashosha70:20210504092532j:plain 

よけいなひと言を好かれるセリフに変える

 売れているらしい。2020年8月の初版からわずか半年ほどで17刷も数えているからすごい。帯には10万部突破とある。
 それほどに、言葉遣いで悩んでいる人、失敗した経験のある人が多いということだろうが、本書は「言い方」で損をしないための本とあって、挨拶・社交辞令、お願いごと・頼みごと、断り方などと15の章に141のシーンを設けて言いかえの実例を示している。
 いくつか拾ってみよう。

 ×よけいなひと言「つまらないものですが」→◎好かれるひと言「気持ちばかりですが」
(相手にしてみれば、つまらないものは持ってこないでという気持ちがあるので、ネガティブな言葉は使わないこと)=しかし、これはへりくつではないか。日本社会の慣習語だし、そこまでかたくなに言い換える必要もないのではないか。
 ×よけいなひと言「若いのにしっかりしているね」→◎好かれるひと言「しっかりしているね」
(たとえほめ言葉でも年齢に関する発言は差別になる)
 ×よけいなひと言「要領がいいね」→◎好かれるひと言「仕事が早いね」
(巧みに立ち回って人に取り入るのが上手いといったネガティブな意味もある)
 といった具合だが、それにしても言葉遣いは難しい。
 ただ、本書を読んだ感想としては、おおかたが常識の範囲だし、ごく当たり前のことばかり。その当たり前のことができない人が多いということだろうが、きちんとした社会人ならば気にせずに話していることのように思えたし、そこまで気を遣う必要があるのかという疑問もわいた。
 実用書の類いは日頃手に取ることがないのだが、本書については「横柄で乱暴な言葉遣いが多いあなたにこそ読んでほしい本だ」といって家内から手渡されたが、およそ参考にならなかった。もっとも、こういう言い方をすること自体に問題があるのだろうが。

 なお、本書書名に〝図鑑〟とあるは妥当だろうか。各章のはじめに漫画が載っているだけで、図や写真はまったくない。書名は内容を反映して正確につけてほしいものだ。各シーンが図面で解説してあると誤解してしまう。まず言い替えの必要なのはこの書名だ。 
(サンマーク出版刊)