(写真1 開催案内のチラシ。写真左:三木香代、右:森知英)
連弾と2台ピアノの演奏
カワイ表参道のコンサートサロンで開かれた。お二人はいずれも脂ののりきった実力派。
演奏は、すべて連弾と2台ピアノばかりで、まさしくピアノデュオだった。
初めに、ベートーヴェン「4手のためのピアノソナタ ニ長調 作品6」。演奏が始まってすぐに驚いた。ダダダダーンとある。まるで〝運命〟ではないか。ベートーヴェンは、たくさんのピアノソナタを書き、それを下地にして交響曲を作ったことはよく知られているが、このモチーフが運命へと生かされたものであろうか。このソナタは運命の10年ほど前に作曲されたらしいから十分に考えられる。当然演奏は力強い。
次に布施威の〝森と生き物〟とあり、「入り口」「小さな花」などと小品が続く。全部で7編。ストーリーが感じられた。演奏は連弾ならではのようで、まるでステレオのようにも思われた。適当な言葉が見つからないが。休憩時間に作曲した布施さんと少しだけだがお話しする機会があって、伺うと、「森の四季を描いた」ということだったから、私の感想もあながち的外ればかりでもなかったのだろう。
続いてシューベルトの「ロンド イ長調 D951作品107」と「アレグロ 人生の嵐 イ短調 D947作品144」の2曲。豊かな厚みが感じられた。1曲目と2曲目でピアニストの位置が変わった。1曲目では森さんが高音側のプリモで、三木さんが低音側のセコンドだったが、2曲目では入れ替わっていた。もちろん、私などのようなレベルの低い聴き手にはその変化はわからなかったが。
ここまでが連弾で、休憩を挟んで次が2台ピアノ。2台のピアノが向き合うように置かれている。左に森、右に三木の配置だった。
演奏は、ブラームスの「ワルツ 作品39(ブラームス編曲2台ピアノ版)」と「ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 作品56b」。
私でも聞いたことがある耳慣れた曲だった。1台のピアノによる演奏のようにも聞こえるし、まるで格闘技のようにも思われる激しさも感じられた。
コンサートに足を運ぶ機会の少ない私にしてみれば日頃聞くことのまれな一流のプロのピアニストによる連弾と2台ピアノとあってとても貴重な機会で、そして何よりも素晴らしい演奏で楽しめた。
なお、蛇足を一つ。プログラムに使用ピアと調律師の名前が記されていて、いかにもカワイの主催によるものだなと感じ入ったことだった。
ただし、コロナ下でのコンサートとあって、花束の贈呈や演奏者との挨拶もできなくて、どこか堅苦しいものだった。